最もエンゲージメントの高い顧客を理解する方法
公開日
2021/02/21
著者
本日は、アンドリーセン・ホロウィッツで投資分析に使用している一般的なフレームワークの1つについてのエッセイです。それはパワーユーザーカーブです。私は投資チームのパートナーであるLi Jinと緊密に協力して、私たちのアイデアを集めて彼女が書いてくれたこのエッセイにまとめました。もっと多くの考えについて知りたければ、Twitterの@ljin18をフォローしてください。-アンドリュー

パワーユーザーの大切さ
パワーユーザーは最も成功している企業の原動力となっています。パワーユーザーとは、そうした企業のプロダクトをこよなく愛し、エンゲージメントが高く、ネットワークに多大な価値の貢献をしてくれるような人々です。Eコマースのマーケットプレイスにおいてはパワーセラー、ライドシェアのプラットフォームではパワーライダー、ソーシャルネットワークではインフルエンサーが該当します。
すべての企業はより多くのパワーユーザーを求めていますが、彼らを見つける(そして維持する)前に、彼らを測定しておく必要があります。DAU/MAU(デイリーアクティブユーザー(DAU)をマンスリーアクティブユーザー(MAUまたはマンスリーアクティブ)で割ったもの)は、エンゲージメントを測定するための一般的な指標である一方で、これには欠点もあります。
企業はユーザーのエンゲージメントを理解するために、よりリッチでニュアンスの効いた方法を必要としているため、ここでは「パワーユーザーカーブ」と呼んでいるものを紹介します。これは一般的に、アクティビティヒストグラムや「L30」(Facebookグロースチームの造語)とも呼ばれています。
これは、1ヶ月のうち1日から30日(または28日、31日)まですべての日で、1ヶ月にアクティブだった日数の合計によるユーザーのエンゲージメントをヒストグラム化したものです。通常はアプリのオープンやログインなどのトップレベルのアクティビティを反映していますが、プロダクトの測定に重要だと判断したアクションに合わせてカスタマイズすることができます。
パワーユーザーカーブには、DAU/MAUよりも多くの利点があります。
- 毎日リピートして使ってくれるような、ハードコアでエンゲージメントの高いセグメントがいるかどうかを示す
- ユーザーの多様性を示す:わずかにエンゲージしている人がいる一方で、他の人はパワーユーザーである。これと対照的なのがDAU/MAUで、これは1つの数値であるため、この多様性が曖昧になる
- コホートにマッピングすると、パワーユーザーカーブは、時間の経過とともにエンゲージメントが向上しているかどうかを教えてくれ、プロダクトのローンチやその他の機能変更のパフォーマンスを評価するのに役立つ
- パワーユーザーカーブは、アプリを開くというアクションだけでなく、他のさまざまなユーザーアクションにも見られる。これは、プロダクトにとって重要なコアアクティビティがファネルの奥深くにある場合には重要である
言い換えれば、DAU/MAUは1つの数字を教えてくれるだけなのに対し、パワーユーザーカーブは、起業家に、最も中毒になっているユーザーに対してのプロダクトのエンゲージメントを評価するための複数の分析手段を提供してくれます。- 1つのスナップショットで、時間経過ごとに、マネタイズとも関係している。これは便利です。では、どのように機能するのでしょうか?
パワーユーザーカーブは、物事がうまくいっているときに「笑顔」になる
パワーユーザーカーブの形は、左寄りになったり、笑顔のようになったりしますが、それぞれ意味合いは様々です。ここでは笑顔の形です。

上記のパワーユーザーカーブはソーシャルプロダクトのもので、毎日、またはほぼ毎日アプリを使用しているエンゲージメントの高いユーザーグループがあることを示す特徴的な笑顔の形になっています。頻繁なユーザーエンゲージメントがあるこのようなソーシャルプロダクトは、広告による収益化に適しています。頻繁にアプリに戻ってくるユーザーが十分な数いれば、そのインプレッションが広告ビジネスを支えてくれるのです。Facebookは、MAUの60%以上が毎日戻ってくるという、非常に右寄りの笑顔を見せていることを覚えておいてください。
重要なのは、時間の経過とともに、プラットフォームがパワーユーザーを維持し、成長させることができるかどうかです。成功しているパワーユーザーカーブは、理想的には時間の経過とともにユーザーが笑顔の右側へとシフトしていくべきです。
ネットワークの密度が高くなり、ネットワーク効果が強くなればなるほど、ユーザーが日常的に戻ってくる理由が増えると期待されます。
強力なマネタイズが必要な時はパワーユーザーカーブでわかる
別の事例として、笑っていないグラフを見てみましょう。

プロのネットワーキングプロダクトが示すこのパワーユーザーカーブは、ソーシャルプロダクトのそれとはまったく異なるように見えます。月に1日だけの活動モードで左側に偏っており、その数日後には急速に減衰していきます。パワーユーザーは存在していません。しかし、この軽度なエンゲージメントは問題ありません。- すべてのプロダクトカテゴリが必ずしも超高DAU/MAUになるわけではないのと同じように、すべての企業が笑顔の形のパワーユーザーカーブを示す必要はありません。
エンゲージメントが低い場合に重要なのは、ユーザーがエンゲージメントしているときに、企業がユーザーから十分な価値を引き出す方法を持っているかどうかということです。Wealthfrontのような投資関連プロダクトやLinkedInのようなネットワークを考えてみると、日常的に積極的にチェックするユーザーは少ないでしょうが、日常的な利用に縛られないビジネスモデルを持っているので、それでいいのです。
そのため、そのような企業のCEOは次のことを考える必要があります。
ユーザーの利用頻度が低くても効果的にマネタイズできるような収益源を作る方法はあるか?あるいは、このプロダクトをより頻繁に使用しているユーザーは誰か、どうすればそうしたユーザーをもっと多く獲得できるか?プロダクトについて、(オンボーディング、コアエクスペリエンスなどの部分で)ユーザーの多くがプロダクトを「手に入れよう」となるための「アハモーメント」を経験しておらず、今この瞬間にプロダクトから価値を得られていないのではないか?(もしそうなら、そうなるにはどうすればいいか?)
SaaS/生産性ツールのように7日スパンで分析すべきプロダクトもあれば、30日スパンで分析すべきプロダクトもある
パワーユーザーカーブのもう1つの特徴は、7日間のユーザーエンゲージメントのヒストグラムで、一般的にはL7とも呼ばれています。7日間のパワーユーザーカーブは月次ではなく週次の活動を示しています。
たとえば、生産性や仕事に関連するプロダクトで、ユーザーエンゲージメントが自然と月曜から金曜までの週単位でのサイクルになっている場合などには、このバージョンをプロットすることは理にかなっているでしょう。
B2BのSaaSプロダクトでは、ワークウィーク(訳注:一般的に仕事が行われる月曜〜金曜のこと。営業週)での利用を促進したいと考えているため、このバージョンで数字を示すことが有用であることが多いです。

それは毎日使用するプロダクトとして設計されていないので、DAU/MAUはこのプロダクトの適切なメトリックではないことに注意してください。また、5日目までは実際にスマイルカーブがあることがわかりますが、6-7日目に使用しているユーザーの数は減っており、これはこのようなワークウィークプロダクトのパワーユーザーにとっては納得のいくものです。
したがって、このようなプロダクトを運営する企業のCEOは、次のようなことを理解したいと思うはずです:週に1日、2日だけ利用しているユーザーは誰なのか?組織内には、より多くの価値を得ている特定のチームや機能があるのか?そして、エンゲージメントの低いチームを取り込むための機能をどのようにして構築することができるか?あるいは、プロダクトが特定の部門に大きな価値をもたらしているのであれば、どうすれば彼らのニーズをよりよく理解し、彼らの日々のワークフローをサポートする方向で(そして新機能をアップセルできる方向で)継続的に構築することができるだろうか?
時間の経過とともにプロダクトがよりエンゲージメントを得ているかどうかは、時間の経過とともに現れるトレンドで分かる
異なるWAUまたはMAUコホートのパワーユーザーカーブをプロットすることも、非常にインサイトを得ることができます。時間の経過とともに、より高い頻度でのエンゲージメントへシフトしているのを見ることで、より多くのユーザーベースがパワーユーザーになっているかどうかを知ることができます。
ここに例を示します。

8月から11月までのMAUコホートのパワーユーザーカーブは、ユーザーエンゲージメントのポジティブなシフトを示しています。より多くのセグメントが日常的にアクティブになっており、スマイルカーブが大きくなっています。
決定的なプロダクトリリースやマーケティング活動がいつカーブを曲げ始めたかを見たかったら、ラインが屈折し始めた時を確認しましょう。 この点が、エンゲージメントを高めるために倍賭けするポイントかもしれません。ネットワーク効果のあるプロダクトの場合、ネットワーク密度/流動性を達成すると、新しいコホートが徐々に向上していくことが期待できます。
継続ベースで、異なるコホートのパワーユーザーカーブを見ることでプロダクトの変更や新しいリリースの成功度を測定することができます。あるプロダクトがパワーユーザーのために多くの機能を開放した場合、パワーユーザーが徐々に増加していくのが確認できる場合があります。
パワーユーザーカーブは、アプリのオープンやログインだけでなく、コアアクティビティに基づくことができる
頻度ヒストグラムは、ただの訪問以上のアクション(誰かが現れたかどうか)をキーにすることができますが、より深いユーザーアクションにも対応することができます。たとえば、ビジネスがどのようにマネタイズしているかに密接に関係するコアアクティビティをプロットしたり、ユーザーがあなたのプロダクトから価値を得ているかどうかをよりよく表したりすることができます。これは、何を測定するのが本当に重要なのかを考えることになるので、重要です。

上のグラフは、あるコンテンツパブリッシングプラットフォームのもので、ユーザーが月あたりにコンテンツを投稿した総日数を示しています。多くのプロダクトに笑顔の形をしたコアアクティビティのパワーユーザーカーブがあるのは、多くの人が軽度の貢献をする傾向にある一方で、パワーユーザーであるユーザーはごく一部存在するからです。YoutubeのクリエイターやEbayの販売者の分布を考えてみてください。あるいはFacebookにあなたが投稿する頻度を考えてみてください。
このようなプラットフォームのCEOやプロダクトオーナーとして、誰もが成功するチャンスがあるようなプラットフォームを設計することが重要です。Facebookでは、ニュースフィードのアルゴリズムによって、その人や組織に強い親和性を感じている場合、他のコンテンツ(例えば、より多くのメディア企業のもの)が大量にあっても、その人や組織の投稿を見ることができるようになっています。OfferUpでは、私がめったに商品を売ることがないとしても、何かを出品した場合には彼らのアルゴリズムによって、関連する潜在的な買い手の画面に商品が現れるようにしてくれます。
なぜこれが重要なのか?
すべてが日常的に使用されるプロダクトではありませんが、それで問題ありません。
パワーユーザー分析によって、ユーザーがどのようにプロダクトにエンゲージしているかをよりよく理解し、そのデータを使ってより多くの情報に基づいた意思決定を行うことができます。それは、エンゲージメントのパターンに合った適切なビジネスモデルを選択したり、エンゲージメントの低いユーザー層のためにより良い再エンゲージメントループを設計したり、エンゲージメントの高いユーザー層がすでに価値を得ているユースケースに倍賭けすることを意味するかもしれません。
パワーユーザーカーブがDAU/MAUより美しい点は、ユーザーベース間の異質性を示し、異なるユーザーセグメントのニュアンスを反映していることです。(したがって、それぞれのセグメントを突き動かしているものも反映します)
また、様々なユーザーセグメント別にパワーユーザーカーブのバージョンを作成することも、とりわけインサイトを得ることができます。たとえば、ローカルネットワーク効果を持つビジネス(UberやThumbtackなど)の場合、マーケット別のパワーユーザーカーブを表示することで、どの地域で高密度で強力なネットワーク効果が生まれているかを明らかにすることができます。
パワーユーザーカーブは、たとえ全体的なDAU/MAUが低い場合でも、プロダクトが非常に熱心なコアグループのユーザーの間で琴線に触れているかどうかを教えてくれます。また、アプリのオープンやログインだけを反映する必要はなく、ユーザーが特定のプロダクトから特定の価値を得ていることに密接に関係するアクションに焦点を当て、そのアクションのパワーユーザーカーブをプロットすることができます。
ファウンダーにとって重要なのは、完璧なエンゲージメントを測定するための銀の弾丸は存在しないということを知ることです。それよりも、自分たちのビジネスに適した一連おメトリクスを見つけることが目標なのです。ソーシャルアプリとワークコラボレーションアプリのパワーユーザーカーブを比較しても意味がありませんが、自社のパワーユーザーカーブを時間の経過とともに見たり、プロダクトカテゴリーのベンチマークを見つけることで、何がうまくいっているのか、そして何がうまくいっていないのかを知ることができるのです。
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:The Power User Curve: The best way to understand your most engaged users by Andrew Chen