次に追加する機能がユーザーを増やすという誤謬

 
数週間前、私はこのツイートを読み、激しく同意しながらうなずいていました。
 
 
■ツイート日本語訳
The Next Feature Fallacy: 次に追加する機能によって人々が突然あなたのプロダクトを使いたくなるという誤謬
 
プロダクトを作るのが好きな人にとって、何かが上手くいかない場合、単純に考えてもっとプロダクトを作りたくなるものです。これは、以前のエッセイ「モバイルアプリのスタートアップは1999年のように失敗している」で言及した、ローンチ - 失敗 - 再ローンチのサイクルに繋がります。しかし、これが上手くいくことはほとんどありません。メトリクスを見ればその理由は明らかです。
 

誤謬の裏にあるメトリクス

数字を見ていきましょう。この誤謬が真実である理由は、以下のシンプルな図で説明することができますが、これはテック業界で最も悲劇的なカーブと言えるかもしれません。
 
 
上の図は、最初にユーザーを惹きつけたのち、1ヶ月間ユーザーを維持するのが困難である場合の急激な下落を示しています。エドワード・タフトが提唱した、ナポレオン軍がロシアに侵攻した際の破壊状況を示す図を思い出すかもしれません。カーブの落ち込みが非常に速いのです。私はこれに関連する多くの実際のデータを見てきました。そして私を信じてください。上手くいっているケースはほとんどありません。
 
平均的な(順調ではない)数字を持つウェブアプリのメトリクスの例を挙げてみましょう。
 
  • 1,000人のユーザーがホームページを訪れ、プロダクトをチェックした
  • 20%が登録
  • 80%がオンボーディングを終える
  • 40%が登録の翌日に訪問
  • 20%が登録から1週間後に訪問
  • 10%が登録から30日後に訪問
  • 30日後、20人のユーザー(1,000人中!)がDAUとなる
これはかなり典型的な例で、急激に落ち込んでいるのがわかると思います。
 
もちろん、素晴らしいブランドを構築しているアプリや、高いCVRになるリファラル経由でトラフィックの大半を獲得しているアプリでは、これより良い数字を見ることもあります。また、メッセージングアプリのような特定のカテゴリのD1/D7/D30は、上記の数字よりも2~3倍高いことがよくあります。しかし、主だったところでは、誰もが自社の数字に少しがっかりしています。これらのメトリクスの平凡さについては、こちらで詳しく書いています。:コンシューマープロダクトのメトリクスがまったく当てにならない理由
 

たいていの機能はこのカーブを曲げ戻すことはない

これらのメトリクスはまったく当てになりません。そして、重要な部分をターゲットにしていない新機能を作るのは簡単なので、次に追加する機能がプロダクトのユーザーを増やすという誤謬が襲ってきます。上記のエンゲージメントカーブを曲げ戻すための機能を設計する際には、2つの過ちを犯しがちです。
 
  • その機能を使う人が少なすぎる とりわけ、非ユーザーや新規ユーザーではなく、エンゲージメントの高いユーザーやリテンションしたユーザーをターゲットにした機能の場合。
  • エンゲージメントが得られても、インパクトが小さすぎる とりわけ、重要な機能がオンボーディングプロセス外でオプションアクションのように表示されている場合。
 
このような間違いは、深いエンゲージメントをもたらす機能にフォーカスしようとする本能が働くことが多いために起こります。もちろん、強力なエンゲージメントベースは必要ですが、極端に言えば、あまり使われない機能ではカーブを曲げ戻すことはできないので、これは間違いということになります。「7日目の機能」は、必然的にオンボーディングに関連した体験よりも使われません。なぜなら、上記の悲劇的なカーブによると、7日目の時点では訪問者の4%未満しか見ていないからです。
 
同様に、プロダクトのオンボーディング体験は、そのプロダクトの正しい使い方(と設定の仕方)についての強い意見がなければ、弱々しいものになってしまいます。初期のTwitterでは、登録するとすぐに何もないフィードが表示され、テキストボックスに自分のステータスを入力するようになっていました。この場合、プロダクトを探索して何でもできるかもしれませんが、現在Twitterがやっているように「複数のアカウントをフォローしてみてください」というのと比べると、結局は弱いデザインということになります。
Twitterは主に読み物として使われるものであり、潜在的にはあまりツイートされないものだと理解することは深い洞察かつ強い意見であり、プロダクトに利益をもたらしました。
 
もう1つの考え方は、新しい機能がプロダクトへの深いエンゲージメントや投資*を前提としていないかどうかを考えることです。エンゲージメントの壁という概念を紹介しましょう。エンゲージメントの壁とは、プロダクトがユーザーにプロダクト利用への深い投資を求めるタイミングに存在するもので、「壁の向こう側」とは、ユーザーがプロダクトを購入し、エンゲージメントして初めて体験できる機能を意味します。これは例えば、写真を投稿する、新しいプロジェクトを作成する、ファイルをフォルダにドロップするなど、手間がかかり完了されにくいアクションが挙げられます。「壁のこちら側」とは、フィードを閲覧したり、写真を評価したり、リンクをクリックしたりするような、あまり投資しなくても価値を生み出す機能を意味します。エンゲージメントの壁の向こう側にある素晴らしい機能をたくさん作ったとしても、その恩恵を受けられるのはごく一部のユーザーに限られてしまいます。このような機能を大量に追加しても、カーブを曲げ戻すことはできません。
 
(*訳注:ここでいう投資とは、ユーザーに行動を起こしてもらうといった意味)
 

次に追加する機能をどう選定するか

カーブを曲げ戻すような機能を選ぶには、ユーザーのライフサイクルを深く理解する必要があります。
 
まず第一に重要なのは、できる限り多くの人に影響を与えるように、機能のリーチを最大化することです。経験則によれば、最も優れた機能の多くは非ユーザーやカジュアルユーザーにフォーカスしていますが、それは単に数が多いからです。悲劇的なカーブ直前での小さな増加は、残りの部分にもベネフィットを波及させます。つまり、ランディングページ、一連のオンボーディング、初期のプロダクト体験が重要であるということですが、通常は十分な注意が払われていません。
 
同様に、ユーザーがアクティブになるために何をすべきかを深く洞察し、最初の訪問を適切に設定することが重要です。ソーシャルネットワークでは、ユーザーに友達をフォロー / 追加してもらうことが重要です。なぜなら、それは後に彼らを呼び戻すループのきっかけになるからです。SaaSの測定アプリであれば、JSタグを適切なページに設置することが重要です。ブログサービスであれば、投資をさせるために名前やテーマを決め、最初の記事を書いてもらうことが重要かもしれません。オンボーディングプロセスを最小限に分離することで、最初のステップを高いコンバージョン率に保ちつつ、お客様の体験を成功に導くことができます。
 
プロダクトがまだ初期の段階で、ゲームチェンジャーとなる機能を探索したり作ったりしている場合、その機能が消費するリソースは膨大なものになります。企業が負うリスクは、その機能を構築するには高すぎるかもしれませんし、チームはその機能が期待される成長目標を達成できる確率を過大評価しているかもしれません。次の機能がカーブを曲げ戻す可能性は常にありますが、そのためには賢く、抜け目なく、情報に精通している必要があります。幸運を祈ります。
 
※この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。