機能で勝負するな

公開日
2021/02/13
「究極のドライビングマシン」は、BMWを機能ではなくポジションで勝負させたクラシックなスローガンです。
 

物事をシンプルに保つのは難しい。特に非常に多くの機能を追加する場合は。

シンプルなプロダクトをマーケティングすることの美徳についての私の最近の投稿の中で、何人かの読者が本当に興味深い質問をしてくれました。 - ここではMark Hullによる特に興味深い質問を紹介します。
 
プロダクトをシンプルにしすぎて、追加的な特徴や機能が不足していることで競争力を失うことがないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
 
どのプロダクトチームもこの問いに悩んでいます。機能を追加すると自然にプロダクトの力が増すように思えますが、同時に複雑さも加わり、新しいユーザーにとっては使い始めるのが難しくなります。これはプロダクトの初期バージョンでよくある問題です。なぜならほとんどの場合、最初のバージョンはうまくいかず、問題を解決するための最も明白な方法は、クリックされるまで機能をただ追加し続けることだからです。しかし、今までにこれがうまくいった試しがありますか?
 
機能で競争してはいけません。コアとなるコンセプトがうまくいっていない場合、新しいものを追加するのではなく、プロダクトの説明を作り直しましょう。
 
市場で根本的に異なるポジションを取っているから競争力のあるプロダクトを作っていることを思い出してください。市場が複雑なエンタープライズ向けのツールで溢れているのであれば、個人向けのよりシンプルなプロダクトを作りましょう。市場がお洒落で高級なワインで構成されているのであれば、より安く、より若く、よりカジュアルなワインを作りましょう。長文のブログツールが市場に溢れているのであれば、140文字で簡単にコミュニケーションが取れるようなものを作ればいいのです。コンピュータがハイテクで安いのであれば、もっと人間的で高級感のあるものを作ればいいのです。これらのアイデアは機能の問題ではなく、市場における根本的なポジションの違いなのです。
 

BMWは究極のドライビングマシン

非常に混雑した市場で差別化された市場ポジショニングをしている、私のお気に入りの例は、BMWの「究極のドライビングマシン」というスローガンです。これは単なるマーケティング・メッセージではなく、BMWの車内に座ってエンジンをかけたときに、それが真実であるとわかります。次のようなことにも気づくことがあるでしょう。
 
  • センターコンソールは、ドライバーであるあなたに向けられている
  • 窓の操作パネルはスティックの横にあるのでいつもより右手が楽になる
  • ...そして明らかに目を見張るような運転体験
 
さらに、ディーラーに行くと、その体験全体が「究極のドライビングマシン」というメッセージを強め続けます。要するに、ポジショニングは運転体験と、それを支えるエンジニアリングにあるということです。
 
価格と機能を他と比較してみると、BMWがトップになることはあり得ないでしょう。高価ですし、メルセデスに期待しているような内装や優美さにはほとんどお金がかけられていません。しかし、人々は機能のためではなく、それがメルセデスとは根本的に異なる車だからこそ、BMWを買ってしまうのです。(少なくともそのように感じられています)
 
私はAppleもこのようになっていると常々感じてきました。彼らのプロダクトはより高価で、競合デバイスよりも性能が劣ることが多いのですが、彼らはUX全体にわたってよりまとまりのあるデザイン意図を持っているので、勝っているのです。繰り返しになりますが、ここでの考え方は、機能のチェックリストに基づいているというよりも、差別化されたポジショニングで勝負するということです。
 

機能でマーケットリーダーに勝つことなどできない

もう1つ覚えておくべき重要なことは、ほとんどの場合、市場を席巻しているプロダクトXがあるとしても、機能を追加してX+1の機能セット全体を作っても勝てる見込みはありそうにないということです。その理由は次の通りです。
 
  • まず第一に、完全な機能を備えたプロダクトをすぐに作らなければならず、市場のリーダーと同じようなプロダクトを作るにはそれだけで何年もかかるかもしれないので、それは気が狂っています。
  • 第二に、イノベーションのジレンマで説明されているように、市場のリーダーをコピーして機能を追加しているのであれば、それらの機能はすでに既存企業のロードマップに描かれているようなイノベーションを持続させるものである可能性が高いです。あなたが開発し終わったときには、彼らはそれを持っているか、さもなければあなたをコピーするだけのことです。
 
その代わりに、まったく異なるマーケットポジションを取ることで、市場リーダーのローエンドを攻撃するようなよりシンプルなプロダクトを持つことです。そうすれば、完全な機能を備えたプロダクトを作る必要はなく、全く異なるデザイン意図を持つことができ、それが破壊的なイノベーションにつながります。
 

プロダクトの初期バージョンを構築するスタートアップ企業のポイント

私は、プロダクトの最初のバージョンを構築するチームには、3つの重要なポイントがあると考えています。
 
1つ目:機能で競わないこと。競合他社とは異なるポジショニング(優れているのではなく、ただ異なるだけ)をするための面白い方法を見つけ、ユースケースに上手く対処できる小さな機能セットを構築しましょう。そうして、市場で先手を打てるようになれば、そこで何をすべきかがわかるようになります。もちろん、新機能が本質的に悪いという意味ではありません。新機能は良いものです。それは、あなたが決めた差別化を実行できている場合に関してのことですが。
 
2つ目:プロダクトが市場に馴染まない場合(よくあることですが)、問題を「解決」するために新機能を追加するという反応をしてはいけません。それがうまくいくことはほとんどありません。その代わりに、プロダクトの説明方法や、差別化された価値を最初の30秒でどのように提供するかを再考しましょう。体験のコアとなる部分を再構築し、差別化されたポジショニングが反映されている新機能のロードマップを構築しましょう。追加作業は避けましょう。
 
3つ目:プロダクトがマーケットポジショニングを反映していることを確認しましょう。これはあなたが知っているようなただのマーケティングではありません!あなたのプロダクトが「究極のドライビングマシン」と呼ばれていても、広告にそれを載せてその日のうちに終わらせてはいけません。代わりに、そのポジショニングをプロダクトのコアに持ち込むことで、プロダクトを使う人がすぐにわかるようにします。そうすることで、あなたのプロダクトは最初から根本的に差別化されるのです。
 
※この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:Don’t compete on features by Andrew Chen