シードスタートアップのチーム作り

公開日
2021/06/13
 
目次

シードファンディングと初期のチーム作り

 
スタートアップにとって最もエキサイティングなイベントの1つはシードファンディングの獲得であり、これは何でもない2人がリビングで考えたようなアイデアをもっと可能性を秘めたものに変えるものです。
 
個人的な経験や他の起業家との会話から学んだ、この段階に関連するいくつかのことをまとめてみたいと思いました。このブログは最初に50万ドルから100万ドルの資金調達をしたスタートアップを対象にしていますが、この場合はたいてい4〜6人程度を採用することになり、この初期メンバーは当然ながら非常に重要です。
 
私がこれまでに出くわしたことをいくつか簡単に紹介します。
 
  1. T字型人材を採用するか、スペシャリストを採用するか
  1. Doerの獲得を試みる
  1. 候補者を増やすことで、多くの問題を解決する
  1. スキルセットの豆知識ではなく、実際に行う仕事に関して面接する
  1. 地頭は1つの要素に過ぎない - 過大評価は禁物
 
もちろん他にもたくさんのトピックがありますが、これが良い出発点になるのでここから掘り下げてみましょう。
 

T字型人材を採用するか、スペシャリストを採用するか

スタートアップ村では、誰もがいくつもの役割を担わなければならないのが定説の1つです。バックエンドのプログラマーがピッチをする場合もあれば、フロントエンドの仕事をする場合もあるかもしれません。デザイナーがマーケティングコピーを書く場合もあれば、CEOがオフィスの掃除をしなければならないかもしれません。
 
同様に重要なこととして、もしあなたが「スタートアップとは根本的に顧客や市場について学ぶプロセスを経ていくものである」と考えるならば、距離の離れている様々なトピック間につながりを見出すことができる多才な人材が必要です。特定の種類の人材ではなく、ジェネラリストが必要ということです。
 
スタートアップのチームが最初に必要とする人材はT字型人材であると私は考えるようになりました。T字型人材とは、様々な分野を幅広く知っており、ある特定の分野においては深い知識を持っている人材を意味します。
 
スキルの幅が広いということは、チームの誰とでも何でも会話できるような共通のコンテクストを持っているということで、知識が深いということは、チームにとって必要不可欠な知識の源を持っているということです。
 
これをテストしたかったらシンプルに、候補者を面接する際により深堀った質問をしたり、彼らが伝えてくれたスキルセット以外の演習をしてもらえばいいのです。ほとんどのエンジニアの面接では、コーディングの質問のような専門的な質問はありますが、私が見てきたなかでは、プロダクト製作やUIデザインに関する面接が含まれていることはあまりありませんでした。同様に、候補者と話すときには、幅広い知識と同じくらい深い知識も重視したいものです。
 
1つの分野に特化しすぎているように見える人には気をつけましょう。それは、チームにとって重要な分野を担当することに興味がないことの表れかもしれませんし、あなたのスタートアップが方向性を変えざるを得ない場合には何もできないかもしれません。
 

Doerの獲得を試みる

エグゼキューションを重視する人を早期に採用することは非常に重要です。プロダクト開発プロセスですぐに価値を発揮できないようなシニアや「哲学者」を採用する余裕はあまりありません。シニアに関しては、私は直近でチームリーダーやディレクターなどの肩書きを持っていた人を採用したいとは考えていますが、それ以上は考えていません。
 
そうすることで、チームをリードする責任に慣れていながらも、すぐにインパクトを与えることができる現場に近い人材を採用することができます。
 
これが、コンサルティング業界や銀行業界から転職してきたばかりの人が現実的なパートナーではない理由です。具体的なプロダクトと顧客に100%集中しなければならないときに、彼らは戦略や財務に囚われすぎるのです。
 
また、エグゼキューション志向ではないタイプとしては哲学者タイプがあります。このタイプの人たちは面接が上手で、幅広い分野に精通していて、常に新しいテクノロジーを試していることが多いです。このような人材を初期のチームに加えることが厳しい点としては、チームで多くの仕事を成し遂げるために一生懸命に働くよりも、ブログを読んだり、知的好奇心を満たすことに興味を持っている可能性があるということです。
 

候補者を増やすことで、多くの問題を解決する

ほとんどのシードスタートアップにとって、最初の2~3人を確保することは問題にはなりません。気心の知れた人や、気軽にアクセスできる身近なグループの人がいるでしょうから。それよりはるかに難しいのは、あなたのネットワークを使ってしまったときです。以下のようなことにきっとぶつかります。
 
  • あなたが欲しい人材にはすでに職があり、興味がない
  • あなたは起業家なので、何かに参加するのではなく、何かを自分で始めたいと思っている起業家がたくさんいることを知っている
  • 興味はあっても、なかなか気が進まない人が多い
  • その他
 
基準が下がってしまったり、組織に入れたくないものがあったり、すぐにいろいろと問題がある状態になりがちです。あるいは、その人材は悪くはないけれど素晴らしいわけではなく、どうしてもそのスキルは欲しいと思うような面接をする場合もあるでしょう。
 
入社資格十分な人にコンタクトし、自社に招き入れる再現性のあるモデルを見つけたなら、こうした手が震えるようなすべての問題を解決することができます。新しい職種の採用を始めるとき、誰が完璧な候補者なのかを見極めるのは難しいことがわかりました。自分が本当に欲しいもの、好きなものをきわめて具体的に分かるようになるには、10人は候補者を見なければなりません。
 
あなたに合った再現性のあるプロセスを見つけるのは難しいです。しかし、あなたの理想的な候補者がすでに関わっているコミュニティを見つけ、彼らのうちできるだけ多くの人と話しましょう。これは、Flashを扱う人材にとってのNewgroundsや、ブラウザユーザーにとってのFirefoxの拡張機能ディレクトリなどが考えられます。
 

スキルセットの豆知識ではなく、実際に行う仕事について面接する

私は以前にもこのトピックに関して思うことをいくつか書いたので、ここにリンクを貼っておきます。ここで言ったことをまとめると、たいていの面接プロセスは、実際に一緒に働くとどうなるのかをテストしていないのでまったく機能していないということです。
 
私が思う理想的な面接は、シンプルに面接して、2ヶ月間一緒に仕事し、問題なさそうかチェックリストで確認することです。しかし就職活動をしているほとんどの人はそこまでしてられないので、代わりに「実地面接(working interview)」を3日間行うことも合理的な代替案です。
 

地頭は1つの要素に過ぎない - 過大評価は禁物

私が知っている若くてエネルギッシュな起業家はみんな、自分たちと同じような人材を雇いたいと思っています。つまり、馬力が高いハードワーカーです。その結果、採用プロセス全体を賢さを中心に据え、パズルやクイズだらけにして、頭の回転が速い人には報酬を与えるようになります。私は、これが実際に人を雇うための最低基準としてはまったくもって駄目だということに気づきました。あなたが働いている分野での情熱、彼らがあなたのスタートアップにいる理由や目標などのようなものを評価することも同じくらい重要なのです。なぜこのような評価が必要なのかというと、スタートアップは本当に難しく、思っている以上に時間がかかることが多いからです。そのため、人のモチベーションを理解して、最初から相性の良い関係を築けるかどうかを見極めることが大切なのです。
 
評価に役立ついくつかのポイントがあります。
 
  • 彼らは自分の生活の中で仕事がどのようにフィットすると考えているか?スタイルは合っているか?(朝型 vs 夜型、時間など)
  • プロセスと即興性のレベル - 意思決定はどのように行われているか、物事はどれほどうまく仕様化され、定義されているかなど。
  • お互いの目標とモチベーション - お金 vs 目標達成 vs 学習 vs 他の人との関係
  • どの段階のスタートアップを彼らは好むか?シード、ミッド、レイター?それはなぜ?
  • 長期的な目標 - 素晴らしいライフスタイル企業を作るのか、それとももっと大きい企業を目指すのか?
 
私は、上記のような質問はスキルセットのテストと同じような役割を果たすべきだと考えています。これらは、スキルセットや知識の習得と同様に、長期的なコラボレーションやパフォーマンスに影響を与えるものです。
 
これらのソフトスキルの整合性を見極めることは、Kleiner Perkinsのジョン・ドーアのMissionaries versus Mercenariesという素晴らしいインタビューを思い起こさせます。理想的なのは、会社のミッションを本当に理解し、信じている人を見つけることです。もしチーム内に本当に賢い傭兵がいれば、物事がうまくいっているときにはうまくいくかもしれませんが、(いくつかあるに違いありませんが)もし何か上手くいかないことがあれば大きな問題が発生するでしょう。
 
余談ですが、これは多くの場合、メトリクス志向の人を雇用する際に問題となります。なぜなら、彼らの情熱や関心は、プロダクトによって生み出される価値よりも、どうすればメトリクスを上げることができるかを考えることにあるからです。これは、奇妙な企業ビジョンの問題につながる、きわめて売上指向の傭兵文化が醸成されてしまう可能性があります。理想的なシナリオは、あなたが市場に投入しようとしている特定のプロダクトに情熱を持っている人を見つけて、その人たちをメトリクス志向に訓練することだと思いますが、これは数字やデータ、アルゴリズムが好きな人を捕まえて特定のプロダクト領域を好きになるように訓練しようとするのとは対照的です。
 
※この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。