ブロックチェーンは次世代のアプリストアだ

公開日
2021/12/17
2009年から2012年頃のモバイル黄金時代において野心的でリスクを求める創業者であれば、新しいモバイルアプリを作ったことでしょう。Uber、WhatsApp、Instagram、Venmo、Snapchatなど、多くのトップアプリが作られた時代です。
 
モバイルは、テクノロジー採用のS字カーブを上ってきました。優れたモバイルアプリはまだ作られるでしょうが、簡単にとれる果実はもう摘まれてしまっています。今後10年のコンピューティング領域のフロンティアは、Ethereum(イーサリアム)のようなプログラム可能なブロックチェーン上でアプリを構築することです。
 
ブロックチェーンは、物理的なコンピュータのネットワーク上で動作するバーチャルコンピュータです。ブロックチェーンは、これまでのコンピュータにはない新しい性質や機能を備えています。
 
 
表現力が高く、チューリング完全に近いプログラミング言語を備えている場合、ブロックチェーンはプログラム可能(プログラマブル)であると言います。プログラム可能なブロックチェーンとしては、イーサリアムがもっとも有名です。
 
プログラム可能なブロックチェーンが面白いのは、スマートフォンがアプリストアを通じてサードパーティに開発環境を開いたことで面白くなったのと同じ理由です。最高のアイデアは末端から生まれることが多いのです。
 
昨年の「DeFiの夏」には、クリプト / ブロックチェーンのキラーアプリの第一波がブレイクし、こうした現象が起こり始めました。Uniswap、Aave、Compound、Makerなどです。
 
DeFiは、包括的で、公平で、透明性があり、組み合わせ自由な金融サービスの構築が可能であることを示しています。ウォール街では、価値は中央の機関に向かって流れます。一方、DeFiでは、価値は外に向かって流れ、端にいる人々へと伝わります。
 
一般的なテクノロジーでは、周辺で雑用をこなす労働者が自動化される傾向にありますが、ブロックチェーンでは中央が自動化されます。
ブロックチェーンは、タクシー運転手を失業させるのではなく、Uberを失業させ、タクシー運転手が顧客と直接仕事をすることを可能にするのです。
 
- Vitalik Buterin(イーサリアム考案者、ヴィタリック・ブテリン)
 
今年はNFTとゲームがブロックチェーンアプリの次の波としてブレイクしました。
「NBA Top Shot」「CryptoPunks」「Axie Infinity」などです。このことは、世界最大のNFTマーケットプレイスOpenSeaのGMVが急激に伸びていることに反映されています。
 
 
人によっては、NFTは軽薄でおもちゃのように見えるかもしれません。しかし、NFTが重要なのは、既存のWeb2プラットフォームと比較して、クリエイターや開発者のエコノミクスを飛躍的に向上させることができるからです。
 
 
次に来るブロックチェーンのキラーアプリは何でしょうか?コンピューティング領域の未来を予測するのは難しいですが、いくつかの興味深い新興カテゴリーを挙げましょう。
 
DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、リソースを共有し、製品を作り、共通の目標に向かって協力し合う、インターネット上のグローバルな集団のことです。
 
ソーシャルトークンは、クリエイターがオンラインでお金を稼ぐための新しい手段です。ソーシャルトークンは、レントシーキング(訳注:自らにとって都合の良いルールを作って超過利潤を得ようとすること。Wikiはこちらを行う仲介者を排除し、ファンベースとともに成長するミニ経済圏が発展していくことを可能にします。
 
ブロックチェーンベースのソーシャルネットワークは、ユーザーや開発者に対して強いコミットメントをしているため、APIの仕様や採算性が変わるのではないかと心配することなく、強固な地盤の上に構築することができます。
 
暗号化された3Dワールドやメタバースでは、相互運用性(インターオペラビリティ)と真の所有権を担保しながら、人々は交流したり、お金を稼いだり、ミニワールドを作ったりすることができます。
 
これらはいくつかのアイデアにすぎません。私のような人間の未来予測力よりも、未来構築力に長けているのが起業家です。最高のアイデアは、まだ考えられていないか、あるいは今の私たちには奇妙に思えるものである可能性が高いでしょう。
 
クリプトの世界で働いている人は、外部の人から変な目で見られたり、自分のやっていることがバカげているとか、詐欺だと思われたりすることに慣れています。人々が取り組んでいる物事に名前がついていないことがよくありますが、それはあまりにも新しいからです。
 
これがS字カーブのスタート地点で働く感覚です。プログラム可能なブロックチェーンは、80年代のPC、90年代のインターネット、そしてここ10年のモバイルのように、コンピューティングのフロンティアなのです。
 
今日の私たちは、コンピュータ業界の名場面を振り返り、その場にいられたらなと妄想します。
 
 
ところがどっこい、あなたは今そんな場面に出くわしているんですよ!
 
2021年版の自作パソコンクラブは、DAOやDiscordサーバーでしょう。パターンは変わっていません。熱心な人たちがアイデアを共有する。物好きが夜や週末にハッキングする。これが古き良き時代の開拓者の生活です。
 
 
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
 
Chris Dixon@cdixon
Andreessen Horowitz(a16z)のGPを務め、シードおよびグロースステージの投資家として活躍している。現在はa16zのクリプト・ブロックチェーン投資推進においてリーダーシップを発揮しており、Crypto Startup Schoolなどで講演も行う。