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NFTと1,000人の真のファン

日付
2021/10/15
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
 
 
ケビン・ケリーは、2008年に発表した名エッセイ「1,000人の真のファン」の中で、インターネットがクリエイティブな活動の採算性を変えるだろうと予測していました。
 
クリエイターとして成功するのに、数百万ドルも、数百万人の顧客も、数百万人のクライアントも、数百万人のファンも必要ありません。職人、写真家、音楽家、デザイナー、作家、アニメーター、アプリメーカー、起業家、発明家として生計を立てるには、数千人の真のファンがいればいいのです。
 
真のファンとは、あなたが作ったものなら何でも買ってくれるファンのことです。彼らは、あなたが歌っているのを見るために200マイルも運転してくれたり、あなたが出版した本のハードカバー版やペーパーバック版、それにオーディブル版まで買ってくれたり、あなたの次のフィギュア作品をノールックで購入してくれたり、あなたの無料YouTubeチャンネルの「ベスト版」DVDにお金を払ってくれたり、月に一度開催するディナーパーティに来てくれたりします。
 
ケリーの見解は、インターネットとは究極の仲介人であり、21世紀にパトロン制度を実現させることができるというものでした。どんなにニッチなクリエイターでも、自分の本当のファンを見つけることができ、そのファンが金銭的な支援を直接してくれるというものです。
 
しかし、インターネットは遠回りをすることになりました。一極集中型のソーシャルプラットフォームが、クリエイターとファンを繋ぐ手段として主流になったのです。プラットフォームはその力を利用して、クリエイターとユーザーの間に広告やアルゴリズムによるレコメンデーションを挿入し、収益の大半を自分たちのものにするという、新たな仲介人となりました。
 
良い知らせもあります。インターネットがケリーのビジョンに戻りつつあることです。例えば、Substackのトップライターの多くは、サラリーマン時代よりもはるかに多くの収入を得ています。テイクレートの低さに加えて、熱狂的なファンがいることがこれを可能にしているのです。Substackでは、1,000人のニュースレター購読者が月額10ドルを支払うことで、ライターは年間10万ドル以上を手にすることができます。
 
クリプト、特にNFT(ノンファンジブル・トークン)は、クリエイターがファンと直接取引してお金を稼ぐというトレンドを加速させることができます。ソーシャルプラットフォームは今後もオーディエンスを増やすのに有効ではありますが(これらも分散型の優れた代替手段に置き換えられるべきでしょう)、クリエイターはお金を稼ぐ上で、NFTやクリプトエコノミーを含む他の方法にますます頼るようになるでしょう。
 
NFTとは、メディアの断片を一意に表すブロックチェーンベースの記録です。メディアは、アート、ビデオ、音楽、GIF、ゲーム、テキスト、ミーム、コードなど、デジタルなものなら何でも対象となります。
 
NFTには、メディアの歴史や起源に関する信頼性の高い文書が含まれており、プログラマーが思いつくほぼすべてのことを行うためのコードを添付しておくことができます(人気のある機能の1つは、二次流通によるロイヤリティを原作者が確実に受け取れるようにするコードです)。NFTは、ビットコインが世界中で何億人もの人々に所有され、何千億ドルもの価値を持つようになったのと同じ技術で保護されています。
 
NFTが最近注目されているのは、販売量が多いからです。過去30日間で、3億ドル以上のNFTの販売がありました。
 
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クリプトには好況と不況のサイクルを経てきた歴史があり、NFTにも浮き沈みがある可能性は大いにあります。
 
とはいえ、NFTがクリエイターにとって根本的に採算性が優れている理由は3つあります。
 
1つ目の理由は、すでに述べたように、超過利潤を得ようとする仲介者を排除できることです。ブロックチェーンのロジックでは、現実世界で本やスニーカーを買うのと同じように、一度NFTを購入すれば、それを完全にコントロールすることができます。NFTのプラットフォームやマーケットプレイスは存在しますし、今後も存在し続けるでしょうが、ブロックチェーンベースの所有権はクリエイターやユーザーに力を戻すため、請求できる金額には限りがあります。(なお、仲介手数料を下げることは、クリエイターの可処分所得に乗数効果をもたらします。例えば、現在の収益が10万ドルで固定費が8万ドルの場合、50%のテイクレートを排除できると、収益が20万ドルになり、可処分所得が2万ドルから12万ドルへと6倍になります。)
 
NFTがクリエイターの採算性を改善する2つ目の方法は、きめ細かな価格設定を可能にすることです。広告ベースのモデルでは、ファンの熱狂度に関係なく、ほぼ一律に収益が発生します。NFTでは、Substackと同様に、熱狂的なファンに対しては価格の高い特別なアイテムを提供することで、クリームスキミング(訳注:収益性の高いサービスや地域、顧客のみを選別して事業を行うこと)を行うことができます。しかし、NFTは、非クリプト製品よりもさらに進んでいて、価格帯を簡単に切り分けることができます。NBA Top Shotカードは、10万ドル以上のものから数ドルのものまであります。
 
あなたはビットコインが好きですか?それなら熱意に応じて、小数点以下8桁まで切り分けて好きなだけ買うことができます。ビットコインの粒度の細かさにより、クリエイターは需要曲線の下にある、より広い領域を捉えることができます。
 
緑の部分はキャプチャーできる売上を示している
緑の部分はキャプチャーできる売上を示している
 
NFTがクリエイターの採算性を改善する3つ目の重要なポイントは、ユーザーをオーナーにすることで、顧客獲得コストをゼロに近づけることです。テック企業のS-1(訳注:米国で新規上場する際に求められる開示書類のこと)を見ると、ユーザーや顧客の獲得に多額の費用がかかっており、通常はオンライン広告や営業スタッフを雇う費用に充てられています。クリプトはこれとは対照的で、マーケティング費用をほとんどかけずに時価総額が1兆ドルを超えるまでに成長しました。ビットコインやイーサリアムには、マーケティング予算はおろか、その背後にある組織すらありませんが、何千万人もの人々に利用され、所有され、愛されています。
 
これまでのNFTプロジェクトの中で最も収益を上げている「NBA Top Shot」は、マーケティング費用をほとんどかけずに、この1ヶ月で2億ドルのGMVを達成しました。NFTがこれほど効率的に成長できたのは、ユーザーがオーナーのように感じられ、身銭を切っている感覚があるからです。これは、コミュニティ、興奮、そしてオーナーシップに支えられた、真のP2P(Peer to Peer)マーケティングです。
 
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NFTはまだ歴史が浅く、今後も進化していくでしょう。マーケットプレイス、ソーシャルネットワーク、ショーケース、ゲーム、仮想世界など、デジタル体験がNFTを中心に構築されることで、NFTの有用性は高まるでしょう。
 
また、NFTと組み合わせた他の消費者向けのクリプト製品が登場する可能性もあります。Fortniteのような最新のビデオゲームの中には、V-Bucksのような流通性のあるトークンとNFT/スキンのようなバーチャル商品を組み合わせた高度な経済が存在しています。いつの日か、すべてのインターネットコミュニティにおいて、ユーザーが使用、所有、収集できるNFTやファンジブル・トークンを含む独自のマイクロ経済圏が存在しているかもしれません。
 
「1,000人の真のファン」というテーゼは、ユーザーとクリエイターがグローバルにつながり、仲介者の制約を受けず、アイデアや経済的な利益を共有するという、インターネットの本来の理想に基づいたものです。しかし、既存のソーシャルメディアプラットフォームは、クリエイターの流通と収益化を制限してしまうことで、このビジョンを脇に追いやってしまいました。そのため、既存のソーシャルメディアに対抗するには、ユーザーを奪うか、お金を奪うかの2つになります。クリプトとNFTは、お金を奪うための新しい方法を提供してくれます。それを実現していきましょう。
 
(画像クレジット:CryptoPunks - Larva Labs)
 
 

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Chris Dixon@cdixon
Andreessen Horowitz(a16z)のGPを務め、シードおよびグロースステージの投資家として活躍している。それ以前は、SiteAdvisorとHunchという2つのスタートアップを創業し、それぞれMcAfeeとeBayに売却した。
 
現在はa16zのクリプト・ブロックチェーン投資をリードしており、Crypto Startup Schoolなどで講演も行う。
 
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