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なぜビットコインに惹かれるのか

日付
2021/10/11
ライター
この記事は2013年12月31日に執筆されたものであり、原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
 
Chris Dixon@cdixon
Andreessen Horowitz(a16z)のGPを務め、シードおよびグロースステージの投資家として活躍している。それ以前は、SiteAdvisorとHunchという2つのスタートアップを創業し、それぞれMcAfeeとeBayに売却した。
 
現在はa16zのクリプト・ブロックチェーン投資をリードしており、Crypto Startup Schoolなどで講演も行う。
 
ビットコインを支持する人は皆、リバタリアン的な政治意図を持っているはずだと思っている人を時折見かけます。私の場合、そんな意図はまったく持ち合わせていません。私は生涯民主党員で、過去2回の選挙ではオバマ氏を支持しました。連邦準備制度は重要な役割を果たしていると思いますし、インフレを経済の最大の関心事にすべきだと考える人たちには賛成できません。
 
初期のビットコイン推進者の多くがリバタリアンであったことは事実です。しかし、コンピュータ産業におけるほとんどすべての重要な動きには、初期の支持者がイデオロギー的な動機を持っていたことも事実です。
 
最初のパーソナルコンピュータの開発者は、60年代のカウンターカルチャー運動と密接に関係していました。オープンソースソフトウェアは、「すべてのソフトウェアは無料で提供されるべきだ」と考える人々によって作られました。ブログやウィキペディアのような共同作業システムの初期の提唱者たちは、情報の生産と発信を民主化しようとしていました。
 
これは偶然ではありません。商業展開を見据えた人々が参加するまでには何年もかかることが多かったため、広範囲にわたるテクノロジーの動きは、初期の段階においては経済的動機を持たない参加者に依存してきたのです。
 
政治的な理由ではないなら、なぜ私はビットコインに興味を持ったのでしょうか?
 
多くの人がそうであるように、私も2008年の金融危機の後遺症に悩まされました。政府は危機のピーク時にやるべきことはやりましたが、その後、金融システムを改革する重要な機会を逃してしまったと思います。金融システムを改善するには、上からの規制(私はこれを支持します)と下からの競争という2つの方法があるように思いました。
 
私は4年ほど前(2010年)に、この問題についてブログを書いたことがあります。もしテクノロジー業界が金融業界を変えたいのであれば、既存の金融サービス会社の上に新しいサービスを構築するだけでは駄目だというのが私の主張でした。それは、GoogleやAppleのプラットフォーム上でサービスを構築して、彼らをディスラプトしようとするようなものです。実際にインパクトを与える(そして大きなビジネスを生み出す)ためには、既存の金融会社を完全にバイパスするようなサービスを生み出す必要があります。私は、決済をはじめとする一連の例を考えました。
 
20%の金利を請求し(銀行)、取引ごとに小銭をかすめ取る(VisaやMastercard)ことは、非常に儲かるビジネスです。既存の銀行やクレジットカード会社に依存しない新しい決済会社を立ち上げれば、破壊的な影響を与える可能性があります。
 
それ以来、私はいくつかの金融サービステクノロジーへの投資を行いましたが、それらはすべてこのテーゼに沿ったものでした。
 
ビットコインに興味を持ち始めたのは2年ほど前(2011年)です。多くの人がそうであるように、私も当初はビットコインを投機的なバブル(インターネット版チューリップバブル)や、インフレを心配する人のためのお金の逃避場所(インターネット版ゴールド)だと考えていました。
 
しかし、あるとき「ハッ」としたのです。それ以来、ビットコインとは、決済産業をより良く、より安く再構築するための新しいソフトウェアプロトコルと理解するのが最も正しいと気付きました。
 
決済産業は5,000億ドル規模の産業です(推定の仕方によってはそれ以上)。つまり、銀行や決済会社は、主にインターネット上でビットを移動させるサービスを提供するために、年間5,000億ドルの手数料を徴収していることになります。銀行や決済会社が提供するサービスには、クレジット、セキュリティ、紛争解決などがありますが、合理的な分析を少しでもすれば、これらのサービスのコストは現在よりも劇的に低くなるはずです。決済産業は、現在よりも少なくとも1桁は小さくなるはずです。
 
また、私が関わったスタートアップ企業にとって、決済がいかに大きな頭痛の種であるかを目の当たりにしたことも私の考えを後押ししました。
 
例えば、オンラインで電子機器を販売するとします。このようなビジネスの利益率は通常5%以下ですが、2.5%の決済手数料が利益率の半分を占めることになるのです。このお金は、ビジネスに再投資するか、消費者に還元するか、あるいは政府が課税するかのいずれかですが、インターネット上でビットを動かすために銀行に2.5%を渡すことは、その中でも最悪の選択です。
 
スタートアップが決済で直面するもうひとつの主な課題は、国際決済の受け入れです。お気に入りのテクノロジーサービスが自分の国で利用できないことを不思議に思うことがあるとしたら、その答えは多くの場合、決済です。
 
しかし、ビットコインの最もエキサイティングな点は(これは確かに推測の域を出ませんが)、「プログラム可能な貨幣」が可能にする興味深い新しいビジネスモデルやテクノロジーモデルです。
 
例えば、私はマイクロペイメントに非常に強い関心を持っています。最近、世界で初めて大規模なマイクロペイメントの実験が行われました。iOSやAndroidでのアプリ内決済と呼ばれるもので、設計上の重大な欠陥(中央管理、30%の手数料)があったにもかかわらず、大成功を収めました。
 
私は、ビットコインがオープンウェブのマイクロペイメントシステムを可能にし、それによってジャーナリズムなどの多くの重要なサービスにバナー広告を超える収益源を提供することができると考えています。
 
私は、ビットコイン(あるいは他の新技術)が経済や世界を救うと主張しているわけではありません。テクノロジー産業は、新しい活動を可能にしたり、既存の活動をより安価にしたりする製品やサービスを創造するビジネスです。ベンチャーキャピタリストは、このような新しい製品やサービスを作るための実験を行う起業家に資金を提供するビジネスを行っています。私は、テクノロジー産業が金融サービスを改善する唯一の方法は、既存の企業に依存しない新しいサービスを構築することだと考えています。ビットコインは、決済産業を劇的に改善する上で真剣に捉えられるべき提案です。未解決の問題はたくさんありますが、実行する価値のある実験だと私は思っています。
 
 
参考資料
記事執筆時点でのBTC価格(出典:CoinMarketCap)
記事執筆時点でのBTC価格(出典:CoinMarketCap
 
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