スタートアップにおける4つの失敗要因
1)資金の枯渇
企業が失敗する理由の第一位は資金の枯渇です。FacebookやGoogleが「アクハイア」(編集注:acqhire, 人材獲得を主な目的として行う企業買収)した企業の多くは、現金を使い果たしてしまい、ひきとってくれる家を探していたチームです。 彼らは才能を獲得してもらうために会社を売ったのではありません。 彼らは文字通り、標準的な雇用パッケージで雇われているだけです。これについてよくある例の1つとしては、100万ドルのシードラウンドを調達し、プロダクトマーケットフィットにいたるまでに6-7人のチームを採用する数多くのシードスタートアップが挙げられます。こうした会社は1年で現金を使い果たし、その後、GoogleやFacebookなどに自身を売り込もうとします。この売り込みが失敗した場合、会社は閉鎖され、従業員は様々な企業に個別に雇われることになります。
このシナリオは、創業者の数が多いチームで最もよく見られます。たとえば創業者が3人、エンジニアが3人の場合を考えてみましょう。エンジニアは問題を抱えて早期に退職するかもしれず、その場合チームの残存価値は低くなる、あるいはゼロになる可能性があります。こうなると会社はイグジットなど到底できず、創業者たちは散り散りになって職を探すことになります。
緩和する方法
- リーンに経営すること。 お金を稼げる、またはもっと資金調達できると確信しているときにのみ、チームを採用する。
- 可能なら、必要以上の現金を調達する。
- ブートストラップするか、またはDay1からプロダクトに課金させる。
- 他のすべてが失敗したときでも人材獲得の可能性を高めるために、Day1からエンジニアリングに重きを置いたチームを持つことに焦点を当てる。
2)チームの崩壊
明瞭な意思決定力に欠けていますか? 創業者は常に戦っていますか? 社員たちを不快な気持ちにさせるような嫌な奴を雇っていませんか? 多くの企業は悪いチームダイナミクスのせいで崩壊しており、これは明確な方向性の欠如、内紛や裏切り、ひどい労働環境につながります。
緩和する方法
- あなたと共同創業者の役割を明確に定義し、最終的な意思決定者を一人にする。
- あなたと共同創業者のコミュニケーションをオープンにすること。成熟した率直なディスカッションを行う。(お互いに建設的なフィードバックを与えることができますか?)あなたが思う会社の目標に向けて共同創業者と方向性を一致させる。(片方は早期の売却を希望していて、もう片方はロングタームでのグローバルビジネスの構築を望んでいたりしませんか?)
- 初期の採用者には、企業文化やチームのフィットについて高い基準を設定すること。採用上のミスを迅速に修正する。
3)リビングデッドカンパニー/ライフスタイルビジネス
あなたの立場にもよりますが、これは素晴らしい結果(小さなライフスタイルのテックビジネス)になるか、ひどい結果(株式価値がほとんどない、あるいは全くない「リビングデッド」スタートアップ)になるかのどちらかです。 VCや極めて貪欲なファウンダーは、一定の規模には達するもブレイクしたとは言えないような企業になることを最悪の失敗と考えています。その場合起業家は、すぐに失敗して他のアイデアに取り組むことはできず、ゆっくりな軌道、あるいは軌道にすら乗れていない企業に閉じ込められてしまうのです。 会社は生き残り、従業員の給与を支払うのに十分な額を稼ぎますが、意味のある速度で成長するのには十分ではない額です。 この会社はスモールキャッシュビジネスとみなされているため、追加の資金調達もできません。 起業家は会社を辞めることができないと感じており(「従業員と投資家のために頑張らなければならない」)、VCは取締役会の席に縛られ、かなりの時間を奪われています。
緩和する方法
- 大規模で、急成長している市場を選ぶ。
- 自分のビジネスを10倍にするにはどうすればいいかを常に自問自答する。
- まあまあなビジネスからピボットする(これは非常に難しい)、あるいはスモールイグジットすることをいとわない。(VCから調達した場合はできないかもしれない)
4)悪い取締役 / 投資家
悪い役員や投資家は、スタートアップに以下のような愚かなことをさせるかもしれません。
- 不必要なほど大量に資金調達させ、イグジットするには高すぎるバリュエーションにする、そして創業者がインセンティブを感じられないほどにひどく希薄化させる。
- 創業者を解雇し、プロダクトや会社を間違った方向に向かわせる「プロのCEO」を雇う。
- 理にかなっている場合でもイグジットを認めず、6ヶ月前に買収オファーを出してくれた大企業にスタートアップが潰されるのを眺める。
緩和する方法
- 投資家のデューデリジェンスを行う。 他の起業家やエンジェルに、その投資家や取締役との過去の経験がどのようなものであったかを聞く。
- その人物をよく知るまでは、取締役に加えないようにする。
- ブートストラップしたり、取締役の席を譲らずにエンジェルから資金調達する。(ベンチャーラウンドではより難しくなる)
※この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:4 Ways Startups Fail by Elad Gil
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Elad Gil(@eladgil)
Airbnb、Coinbase、Instacart、Pinterest、Square、Stripe、Wishなどシリコンバレーにおける有名企業の投資家・アドバイザーを務めている。2013年から2016年12月までカラージェノミクスの共同創業者兼CEOを務め、現在は会長に就任。カラージェノミクスの創業前はTwitterでコーポレート戦略バイスプレジデントを務め、M&Aや事業開発チームの担当を務めた。過去にはGoogleにも在籍しており、さまざまな買収案件に携わった。