Facebook上場に添えて。今思い返す、若きマーク・ザッカーバーグからのメッセージ

公開日
2021/11/01

マーク・ザッカーバーグからの手紙

 
Facebookは、もともと企業として作られたものではありません。世界をよりオープンで、よりつながりのある場所に」という社会的使命を果たすために作られました。
 
Facebookに投資してくださる皆様には、この使命が私たちにとってどのような意味を持つのか、私たちがどのように意思決定を行い、なぜそのようなことをするのかを理解していただくことが重要だと考えています。この手紙では、私たちのアプローチの概要を説明したいと思います。
 
Facebookでは、人々が情報を広めたり消費したりする方法に革命をもたらしたテクノロジーにインスピレーションを受けています。印刷機やテレビなどの発明は、シンプルにコミュニケーションをより効率的にすることによって、社会の多くの重要な部分の完全な変革をもたらしました。より多くの人々に声を与え、進歩を促し、社会組織のあり方を変えました。そして、私たちの距離を縮めてくれました。
 
現在、私たちの社会は新たな転機を迎えています。世界中の大多数の人々がインターネットや携帯電話にアクセスできるようになり、自分の考えていること、感じていること、やっていることを誰かと共有するために必要な道具がそろった瞬間です。Facebookは、人々に共有する力を与えるサービスを作り、私たちの中核となる多くの機関や産業を人々が再び変革できるようにしたいと考えています。
 
世界中のすべての人がつながり、すべての人に声を与え、未来のために社会を変革していくことには、大きなニーズと大きなチャンスがあります。構築しなければならない技術やインフラの規模はかつてないものであり、私たちが注力できるなかで最も重要な問題であると考えています。
 
私たちは、人と人との関わり方を強化したいと考えています。
 
私たちのミッションは壮大に聞こえますが、始まりは小さいもので、2人の人間関係から始まるのです。
 
人と人との関係は、私たちの社会の基本単位です。人間関係は、私たちが新しいアイデアを発見し、世界を理解し、究極的には長期的な幸福を得るための手段です。
 
Facebookでは、人々が好きな人とつながり、好きなものを共有できるようなツールを開発しています。これにより、人々が人間関係を構築・維持するキャパシティを高めています。
 
たとえ親しい友人や家族との間であっても、人々がより多くのことを共有することで、よりオープンな文化が生まれ、他の人々の生活や考え方をよりよく理解できるようになります。そうすることで、人々の間により強い関係が生まれ、より多くの多様な視点に触れることができるようになると考えています。
 
私たちは、このような人々のつながりを支援することで、人々が情報を広めたり、消費したりする方法を変えていきたいと考えています。世界の情報インフラは、これまでのような一枚岩のトップダウン型ではなく、ボトムアップ型、つまりP2P(ピアツーピア)型のネットワークである「ソーシャルグラフ」のようになるべきだと考えています。また、シェアする内容を人々がコントロールできるようにすることが、この再構築の基本原則であると考えています。
 
私たちは、これまでに8億人以上の人々が1,000億件以上のつながりを作るお手伝いをしてきましたが、私たちの目標はこの再構築を加速させることです。
 
私たちは、人々がビジネスや経済とつながる方法をより良いものにしたいと考えています。
 
よりオープンでつながりのある世界になれば、より良いプロダクトやサービスを提供する本物志向のビジネスが生まれ、より強固な経済が実現すると考えています。
 
人々がより多くのことをシェアするようになると、自分が使っているプロダクトやサービスについて、信頼できる人々から発信されたより多くの意見にアクセスできるようになります。その結果、より良いプロダクトを見つけやすくなり、生活の質と効率を向上させることができます。
 
より良いプロダクトが発見されやすくなることで、企業はより良いプロダクト、つまり人々に合わせてデザインされたプロダクトを作ることで報われるようになります。私たちは、ソーシャル性を備えたプロダクトは、従来のプロダクトよりも魅力的であることを発見しました。世界中のプロダクトがこのような方向に進むことを期待しています。
 
当社の開発者向けプラットフォームを使うことで、すでに何十万もの企業が、より質の高い、よりソーシャルなプロダクトを構築しています。私たちは、ゲーム、音楽、ニュースなどの業界で破壊的な新しいアプローチを目の当たりにしてきましたが、今後はより多くの業界で、ソーシャル性を備えた新しいアプローチによって同様の破壊が起こることを期待しています。
 
より良いプロダクトを作るだけでなく、よりオープンな世界は、企業が顧客と直接かつ真摯に向き合うことを促します。400万以上の企業がFacebookページを開設しており、顧客との対話に活用しています。この傾向は今後も続くと予想しています。
 
私たちは、政府や社会組織に対する人々の関わり方を変えていきたいと考えています。
 
人々がシェアするためのツールを作ることで、政府に関するより正直で透明性の高い対話が実現し、それによって人々を直接的にエンパワーメントし、政府関係者の説明責任の向上につながり、そして今日の我々が抱える最大の問題の数々に対するより良い解決策につながると信じています。
 
人々にシェアする力を与えることで、これまでとは次元の違う規模で人々が声を上げるようになってきました。このような声は、数も量も増えていくでしょう。この声を無視することはできません。やがて政府は仲介人を通じてではなく、すべての人々から直接提起された問題や懸念に対して、より積極的に対応するようになると考えています。
 
このようなプロセスを経て、インターネットを支持し、人々の権利のために戦うリーダーがあらゆる国で現れると私たちは信じています。これには、人々が望むものをシェアする権利、人々がシェアしたいと望むすべての情報にアクセスする権利が含まれます。
 
最後に、経済がますますパーソナライズされたより高品質なプロダクトに変化を遂げていく中で、雇用創出、教育、医療などの世界的に大きな問題に対処するために、ソーシャル性を備えた新しいサービスが出現することも期待されます。そのために、私たちができることをしていきたいと思っています。
 

私たちの使命とビジネス

 
先に述べたように、Facebookはもともと企業として設立されたものではありません。私たちは常に、社会的使命、自分たちが作っているサービス、そしてそれを使ってくれる人たちのことを第一に考えてきました。これは上場企業としては異例のアプローチですが、なぜ私はそれが有効だと考えているのか説明したいと思います。
 
私はまず、自分があったらいいなと思うものだったので、Facebookの最初のバージョンのコードを自分で書くことから始めました。それ以来、Facebookに投入されたアイデアやコードのほとんどは、私たちのチームに集まってくれた優れた人材によるものです。
 
優れた人材の多くは、素晴らしいものを作りたい、その一部に加わりたいという思いが強いのですが、同時にお金も稼ぎたいと思っています。チームを作り、開発者コミュニティ、広告市場、投資家ベースを構築するプロセスで、私は、重要な問題を解決するために多くの人々を結集するには、強力な経済エンジンと強力な成長を伴う強力な企業を構築することが最も良い方法であることを深く理解しました。
 
簡単に言うと、私たちはお金を稼ぐためにサービスを作るのではなく、より良いサービスを作るためにお金を稼ぐのです。
 
そして、これは何かを作るための良い方法だと考えています。最近では、単なる利潤の最大化を超えた何かを信じている企業のサービスを利用したいと考える人が増えてきていると思います。
 
ミッションに集中して優れたサービスを構築することで、長期的には株主やパートナーに最大の価値を生み出し、その結果、優秀な人材を集めてより優れたサービスを構築し続けることができると信じています。私たちは、「今日もお金を稼ぐぞ」と朝に目を覚ましたりはしません。私たちのミッションを達成するための最善の方法は、強くて価値のある会社を作ることだと理解しています。
 
今回のIPOについても同様に考えています。私たちが株式公開するのは、従業員と投資家のためです。社員や投資家のために株式を公開するのです。私たちは株式を提供する際に、その価値を高め、流動性のあるものにするために努力することを約束しました。そして、今回のIPOはその約束を果たすものです。私たちが上場企業になることで、新規投資家の方々にも同じように約束をし、それを果たすために同じように努力します。
 

ハッカーウェイ

 
強い会社を作る一環として、私たちはFacebookを、優れた人々が世界に大きな影響を与え、他の優れた人々から学ぶことができる最高の場所にすることに尽力しています。私たちは、「ハッカーウェイ」と呼ぶ独自の文化と経営手法を培ってきました。
 
「ハッカー」という言葉は、メディアではコンピューターに侵入する犯罪者というイメージが強く、不当にネガティブな印象を与えています。実際のところ、ハッキングとは何かを素早く作ったり、どこまでできるかの限界を試したりすることです。多くのものがそうであるように、ハッキングは良いことにも悪いことにも使われます。しかし、私がこれまで出会ったハッカーの大半は、世界に良い影響を与えたいと願う理想主義者たちでした。
 
ハッカーウェイとは、継続的な改善と反復を伴うアプローチです。ハッカーたちは、常に現状より良くできる可能性があり、完成のタイミングは永遠にないと信じています。不可能だと言う人や現状に満足している人がいても、ハッカーはフィックスするために動きます。
 
ハッカーは、一度にすべてを完璧にしようとするのではなく、素早くリリースし、小さなイテレーションから学んでいくことで、長い目で見て最良のサービスを構築しようとします。これをサポートするために、私たちはテストフレームワークを構築し、いつでも何千ものバージョンのFacebookを試すことができるようにしています。私たちのオフィスの壁には "Done is better than perfect"(完璧を目指すよりまず終わらせろ) という言葉が書かれており、常にリリースし続けるように自分たちに言い聞かせています。
 
また、ハッキングは本質的にハンズオンでアクティブな学問です。ハッカーは、新しいアイデアが実現可能かどうか、あるいは何かを構築するための最良の方法とは何か、と何日もかけて議論するのではなく、何かを試作してみて機能するかを確認することを好みます。Facebookのオフィスでよく耳にするハッカーの格言があります。それは "Code wins arguments."(コードは議論に勝る)です。
 
また、ハッカー文化は非常にオープンで実力主義です。ハッカーたちは、最も優れたアイデアとその実装こそが常に勝つべきだと考えています。アイデアのためのロビー活動に長けている人や、最も多くの人材を管理している人ではありません。
 
このアプローチを促進するために、数カ月に一度、ハッカソンを開催しています。ここでは、全員が新しいアイデアのプロトタイプを作成します。最後にはチーム全員が集まって、作ったものをすべて見ます。タイムライン、チャット、ビデオ、モバイル開発フレームワーク、HipHopコンパイラーのような重要なインフラなど、最も成功したプロダクトの多くはハッカソンから生まれました。
 
すべてのエンジニアがこのアプローチを共有できるように、私たちはすべての新人エンジニアに、たとえコードを書くことが主な仕事ではない管理職であっても、Bootcampと呼ばれるプログラムを受講することを義務付けています。この業界には、エンジニアを管理する立場にありながら自分ではコードを書きたがらない人がたくさんいますが、私たちが求めているハンズオン型の人材は、喜んでBootcampを受講してくれます。
 
上記の例はすべてエンジニアリングに関するものですが、私たちはこれらの原則を、Facebookの運営方法に関する5つのコアバリューに集約しました。
 

インパクトを与えることに集中する

 
最大のインパクトを与えたいのであれば、最も重要な問題を解決することに常に集中するのが最善の方法です。簡単なことのように聞こえますが、ほとんどの企業はこの方法がうまくいかず、多くの時間を無駄にしていると考えています。私たちは、Facebookの社員全員が、取り組むべき最大の問題を見つけることに長けていることを期待しています。
 

早く動く

 
早く動くことで、より多くのものを作り、より早く学ぶことができます。しかし、多くの企業は成長するにつれ、動きを遅くしすぎて機会を逸することよりも、失敗することを恐れるようになります。私たちがよく使う言葉があります。それは、"Move fast and break things." (素早く動き、破壊せよ。)です。これは、もし何も壊さないのであれば、あなたはきっと遅すぎるのだという考えです。
 

大胆になる

 
素晴らしいものを作るには、リスクを取ることが必要です。これは怖いことでもあり、多くの企業は大胆な行動をとることができません。しかし、変化の激しいこの世界では、リスクを取らなければ必ず失敗してしまいます。私たちは別の言葉もよく使います。それは、 "The riskiest thing is to take no risks." (リスクを冒さないことが最大のリスクだ)です。たとえ間違うことがあったとしても、大胆な決断をすることを皆に勧めます。
 

オープンであること

 
私たちは、よりオープンな世界がより良い世界であると信じています。なぜなら、より多くの情報を持つ人々がより良い判断を下し、より大きな影響を与えることができるからです。それは、会社経営においても同様です。Facebookでは、社員全員が会社のあらゆる部分についてできるだけ多くの情報にアクセスできるようにして、最善の意思決定と最大の影響力を発揮できるように努めています。
 

社会的価値の構築

 
繰り返しになりますが、Facebookが存在するのは、世界をよりオープンに、よりつながりやすくするためであり、単に会社を作るためではありません。私たちは、Facebookのすべての人が、自分の行動のすべてにおいて、世界のために真の価値を構築する方法に日々集中することを期待しています。
 
この手紙を読むのに時間を割いていただきありがとうございます。私たちには、世界に重要な影響を与え、そのプロセスで永続的な企業を築く機会があると信じています。一緒に素晴らしいものを築いていけることを楽しみにしています。
 
 
 
 
 
参考記事