cover image

差別化について

日付
2021/02/14
ライター
 
福島 良典|LayerX 代表取締役 CEO 東京大学大学院工学系研究科卒。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。 2012年大学院在学中に株式会社Gunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。 2018年にLayerXの代表取締役CEOに就任。 2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定。2016年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。2017年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。
 
目次
 
今日のネタは差別化です。スタートアップにおける差別化みたいな話をしようと思います。
別に定義がある訳ではないんですけど、差別化もハイレベルな差別化と、極めてローレベルな差別化の2種類の差別化というのが世の中ではよく言われているなと。
 
で、ローレベルな差別化をやり切ろうみたいなところが結構見過ごされがちだけど、すごく重要なんじゃないかという話をしようと思います。
 
なんでこんな話をするかというと、僕がスタートアップを始めたのが2012年のことですね。もうかれこれ8年くらいこの業界にいて、8年前って僕の知識が足りなかったっていうのもあるかもしれないですけど、おそらく今ほどスタートアップに関する知識とか情報、こうやったら上手くいくみたいなノウハウって日本ではあんまりなかったのかなと。
 
今の日本というのは、一定のスタートアップが一巡した2012年ぐらいに創業した会社が大体上場し終わってるぐらい。だいたい早いところで2年、遅いところで6年から10年ぐらいで上場していくので。
 
そう考えたら、僕が生きてきたこのスタートアップ業界っていうのは一巡していて、イグジットした企業とか、上場して成功している企業とかが今になって結構出てきている訳です。
 
恐らく今のスタートアップって第三世代か第四世代くらいで、ノウハウも第二世代以前よりも定式化されていて次のフォーミュラを探しているみたいな感じなのかなというところなんですけど。
 

究極的な差別化は基本的に3つの要素からしか成り立たない

 
そこで出てくる究極的な差別化は基本的に3つの要素からしか成り立たないと。
 
1番強いのはネットワークエフェクトであると。つまり、ユーザーないし、データないし、コンテンツ。何でもいいんですけど、あるものが集まることによって他のものがさらに集まり、それによって全く同じプロダクト、全く同じコードで動くサービスだったとしてもネットワークがある方が強いというもの。これはやっぱり真似しづらいですよね。いわゆるハイレベルな差別化。
 
2点目がブランド。ある全く同じサービスを提供しているのに、ユーザーの選好性とか、あとは第一想起を取っているかとか。そういうのを含めて、全く同じ質のサービスをやったとしてもなぜか選好される、選ばれるっていうのが僕の中でのブランドの定義なんですね。なぜか思い出される。それは良い体験とともに記憶される。良い体験を積み重ねた結果ブランド化される。これが2点目。
 
3点目がデータですね。特にソフトウェアの領域だと、全く同じプログラムでもデータがあるかないかによって全く質の違うサービスになります。例えば僕が0から検索エンジン作った場合と、Googleが作っている検索エンジン。これは全く違う質のサービスなんですね。全く同じコード、全く同じアルゴリズムだとしても。なのでデータで差別化されますと。
 
この3つの差別化はよく言われるんですけど、これ全部ね、皆さん気にしなくていいですっていう話ですね。
 

この3つの差別化は気にしなくていい

 
なぜならこの3つが差別化ポイントになるのってもう頂上決戦、Google対Facebookとか。Amazon対Microsoftとか。そういう頂上決戦の時に、本当に差がつくものは何かみたいなのが先ほど挙げた3つで。
 
ほとんどのスタートアップってどういう性質のものかというと、何かしらのズレに対して素早く動くものがほとんどなんですよね。つまり、そんな複雑な差別化はいらなくて、単純に2つやりきればいいと思っていて。
 
1つは、顧客のことを徹底的に理解する。それによって、既存の市場では解決されていない課題を「これを解いてます!」「ここが便利なんです!」という圧倒的な強みを1つ作る。それはプロダクトという強みですね。買ってもらうという意味で。
 
スタートアップはやはり強みを買ってもらう商売だと思うので、それを作って、後は営業だろうがマーケティングだろうが、それを顧客にどうやって知ってもらって、どうやって最終的にお金を落としてもらうかというところのファネルを設計してそこをやり切ること。
 
この2つを徹底的にやり切ることがほとんどの会社の成功と失敗を決めている考えですね。
 
ここにデータとかネットワークエフェクトとかブランドとか何も関係ないですよ。
 
既存の顧客のことをまず徹底的に観察しようと。で、既存の商品で解決されていない課題を、これはtoCでもtoBでも一緒ですね、これを見つけてくると。そこを解く。本当に深く集中して解く。
 
この徹底的にやり切るというところでよく言われるのが、toCだろうがtoBだろうが、まずユーザー100人に当たって、ちゃんと設計されたヒアリングをしましたとか。で、そのヒアリングをちゃんと計測可能な形で、何らかのジョブを定義して、そのジョブが解けているかをちゃんとプロダクトを使わせて観察しましたかとか。
あとは、それをユーザーに知ってもらうためにちゃんとファネルを設計して、例えば100人のユーザーがいたとしたら何人が有料ユーザーに転換してくれて、いくら落としてくれるみたいなのをきちんとモデル化するところまでやり切る。あるいはチャネル。オフラインであろうがデジタルであろうがそこをきっちりやり切って、ちゃんとユーザーに伝わる努力をしているかみたいな。
 
ここを徹底してやっていれば、超大成功するかは分かんないですけど、成功しないことはないと思うんですよね。
 
で、じゃあそれでいいんですかと。
 
すごく強い競合がそこをカバーしてきたりとかするんじゃないの?みたいなのは本当にやってる側からすると毎回上がってくる疑問なんですけど、大丈夫ですと。
 
どんなに強いtoBの会社でも、どんなに強いtoCの会社でも、全ての課題を解決した会社は過去に1社も存在しないっていうその事実だけで十分かなと。
 

必ずスタートアップが入り込む隙間はある

 
必ず隙間は存在する。その要因がね、競合の会社がもしかしたら大きくなりすぎてて、スモールBのターゲットがおざなりになっているとか。エンタープライズのあるバーティカルの領域がまったく解決されてないとか。これは前田ヒロさんがなんかブログ書いてましたけど。
 
toCの領域でもデバイススイッチが多かったとか。何か圧倒的な文化/慣習の変化、今回で言うとコロナ、リモートみたいなところで圧倒的に前提が変わってECが伸びたみたいに、何か圧倒的な環境の変化が起こった、圧倒的に技術の変化が起こった、今までではあり得なかったマッチング効率で例えばニュースを配信できますとか、アドを配信できますとか。そういうテクノロジー的な変化が起こったなど、何かしらの環境の変化で必ず既存サービスで解けてない課題が少なくともニッチ領域で生まれるので、それを見つけてくるのが起業家の仕事かなと思います。
 
これをやりきった先で初めてGoogleがやってきたらどうする、Facebookがやってきたらどうするみたいな問いに当たれるんですけども。その権利を勝ち取っているだけであなたはもう大成功してます。
 
ほどんどの会社はその手前で死ぬ。ユーザーに提供する価値を定義できないとか。定義できたのはいいけどサービスをデリバリーする方法を間違えているとか。デリバーしたけどマネタイズする方法を間違えているとか。定義できてるんだけど、デリバーからマネタイズするところまでやり切れずに競合にシェアを取られてしまったとか。
 
ほとんどね、そういう話なんですよね。なので口にするとしょうもないようなことがベンチャーの差別化要因になると。徹底的に顧客を理解する。徹底的に無駄を削って早くサービスをデリバーする。これは開発プロセスの話ですね。
 
あとはどうやって顧客のカスタマージャーニーじゃないですけど、どうやってサービスを知って、どこにアハ体験を感じて、どういうメカニズムでサービスを継続して、どういう形でお金を落としてくれるのかをしっかり定義して、そこを一個一個深掘りしていって。そうすると、部分部分のサブ課題が出てくる訳です。
 
ユーザーに知ってもらうためにはデジタルチャネルのここの訴求がイケてないとか。オフラインでこういうリードの獲得ができてないとか。認知の点でこういったサービスに負けているからテレビCMを打って認知をひっくり返すとか。サービスの継続のところもそうですよね。こう使って欲しいんだけどなぜかこう使ってくれないと。それはここら辺の機能がいけてないとか。むしろそのステップが多すぎるから、ステップを削るためには何をすればいいかとか。
 
まあこれは例なので答えではないんですけど、そういうふうに深掘っていくと、やり切るっていうのはもう本当に難しいんですよ。
 

やり切れている人は世の中の0.1%もいない

 
「やり切る」ってみんな言ってるんですけど、やり切れている人は世の中の0.1%もいないので本当にやり切ってくれと。というのをこれからスタートアップに挑戦するみなさんにも伝えたいし、今挑戦している人にも伝えたいし、自分にもですね、改めて。
 
やっぱりね、空中戦とかやりたくなるんですよ。何個かイシューできて、早回りできたらいいなとか。ネットワーク効果を得るためにこういうところに拠点を作って、こういうサービスを逆算的に作ればいいのじゃないのかとかね。頭が良くて、かつて結果を出した人ほどやりがちなんですけど、それほど虚無なことはないので。
 
ただひたすら市場とかユーザーの課題に向き合って、ユーザーはなぜ今課題を抱えているのか。なぜ既存のプロダクトでそこはカバーできていないのか。どうするとそこに気づいてもらってそしてそのサービスをデリバーしてお金を払ってもらえるのか、みたいなところをひたすら磨く。
 
その間でちゃんとお金を回収しきるには時差が当然あるので、じゃあファイナンスするとか、仲間を集めてくるとか、仲間を同じ方向に向けるためにしっかりとした組織のロジックを作る。式を作る。モメンタムを作る。これが経営のやるべきこと。
 
そういうところも徹底してやると、気づいたらそれが差別化になり、他の会社にはなかなか真似ができないものになるんじゃないかなと最近強く思っています。
 
※この記事は配信者の許可を得て公開するものです。
 
💡
福島 良典氏の他のコンテンツも見る:福島 良典の名言