起業は根性だ

公開日
2021/06/29
 
福島 良典|LayerX 代表取締役 CEO 東京大学大学院工学系研究科卒。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。 2012年大学院在学中に株式会社Gunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。 2018年にLayerXの代表取締役CEOに就任。 2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定。2016年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。2017年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。
 
24歳男です。福島さんに憧れて7月に起業します。なにか一言ください!
 
今日もちょうど、僕の母校でスタートアップのお話をするというのがありまして。幸運なことに毎年呼ばれているんですが、来年はとうとう呼ばれないんじゃないかという講義をしてしまって。毎年頑張って話すんですけど、今年はとうとう「起業とは何ですか?」と聞かれても「根性です」と。
 
他にもいろいろ質問いただいてたんですよ。「ビジネスアイデアはどうやって考えるんですか?」とか「グロースってどうやればいいですか?」とか聞かれたんですけど、「あんまり重要じゃないね」と、やる気あるのかと言われそうな講義をしたので来年呼ばれるかわからないんですけど、気合入れて頑張って欲しいですね。
 
気合い、根性とはなんぞやというところなんですけど。
 
ビジネスにおいて、起業したときに3つ検証すべきことがあるんですよ。1つがプロダクトマーケットフィット(PMF)と呼ばれる、プロダクトのフィット。もう1つがチャネルマーケットフィット。プロダクトをユーザーにどう広げて使ってもらえるかという話。最後にビジネスモデルマーケットフィット。要はどうやってユーザーからお金を落としてもらうか。
 
この3つがあるんですが、大事なのはプロダクトマーケットフィットだけなんですよね。チャネルフィットもビジネスモデルフィットも非常に大事なんですけど、有限個のパターンを試すだけで基本はどれかにマッチする。つまり語弊を恐れずに言うと、解かれ切った既知の問題なんですよ。
 
ある良いプロダクトを広げるためには、相性の良さそうなチャネルを全部試して、そのなかで一定伸びるんですよね。お金の取り方に関してもそんなにパターンはなくて、インターネットビジネスだとトランザクション型課金か、サブスク課金か、広告。この3つしかおそらくビジネスモデルはない。toBに広げても、ちょっとはお金の取り方変わりますけど数パターンしかないので。
 
だからビジネスモデルとかチャネルとか、そういうテクニック論的な話は重要じゃないですよと。プロダクトマーケットフィットが大事ですよと。
 
プロダクトマーケットフィットってどこから生まれるかと言うと、「10年後の人類を想像して、10年後の人類を舐めない。馬鹿にしない。」
 
10年後じゃなくて20年後でも2年後でもいいんですけど、そこに訪れていそうな習慣とか、絶対にこんな仕事のやり方残ってないだろうというものを解決することを見つけるのがプロダクトマーケットフィットだと思うんですよね。未来のスタンダードを見つける。
 
これはもう、信念からしか生まれない。「なんか儲かりそうだ」とか「なんか米国とか中国でユニコーンになってる会社があるからそれと同じモデルをやりたいんです」とか「米中だと何千億円の市場なのに日本ではまだ無いから、この市場規模のギャップは3分の1程度には収まるはずだ」とか、そういう理論が僕は大嫌いで。埋まらないんですよね。超長期で見ると埋まるかもしれないですけど。そこを埋めるのがプロダクトマーケットフィットなんですよね。誰もその埋め方を分かっていなくて、その問題をいち早く解いた人がその市場の勝者になるというゲームをしているだけなので。
 
その問題を解いてる人って、事業をやっていくうちに「普遍的な課題か?」とか「グローバル展開できるか?」とか、人間の普遍性みたいなところでグローバル市場をチェックすることはあるんですけど、市場規模とかあんまり気にしていないと思うんですよ。
 
どっちかと言うと、このプロダクトが顧客にバリバリにはまっていて、ここから一般性を獲得してもっと普及していきたいだとか、もっと多くの人にこの便利な体験を届けたいみたいなそういうところがドライバーになって広がっていくプロダクトがほとんどなのかなと。それがいろんな層に広がった結果がプロダクトマーケットフィットです。
 
つまり気合いと根性が大事という話で。
 
LTV/CPAとかああいう話はかなりどうでもよくて。実際に経営するときはかなりモニタリングする指標ですし、そこを最適化していくことが重要なんですけど、その一歩手前の「プロダクトの種を見つけて強烈にユーザーの課題を解決する」こと。これはもう信念と根性からしか生まれない。
 
何で根性がいるかって言うと、すごく考えて作ったプロダクトが最初は必ず否定されるからです。プロダクトマーケットフィットまでに平均27回のイテレーションをすると本で読んだんですが、ということは27回「NO」って言われるんですよ。相当根性いりますよ。マジで辛いですよ。自分が120%かけてめっちゃ良いと思ったプロダクトが27回否定されてようやくマーケットフィットだと。しかもこれは平均なのでもっとかかる可能性ありますよね。足の長いプロダクトだと50回とか100回否定されてようやくかもしれない。
 
その頃には初めてから何年経ってるんだと。周りの人が就職して活躍して給料もどんどん上がるなかで、5年とか10年かけてプロダクトマーケットフィットを目指して粘り続けるのって相当根性がいる。短期で華やかに成功した人にスポットライトが当たっちゃうんですけど、たいていの人は5年・10年・20年かけてビジネスを作っていく。
 
だから信念があること、信じられることをやるのが大事ですよと。テクニック論じゃなくて、起業とは気合いと根性であると。27回NOと言われても、28回目のもう一発目を出したいみたいな。そんなことを見つけてやるのが良いのかなと思います。
 
※この記事は配信者の許可を得て公開するものです。
 
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