成功は星の輝き
公開日
2021/10/03
著者
福島 良典|LayerX 代表取締役 CEO
東京大学大学院工学系研究科卒。大学時代の専攻はコンピュータサイエンス、機械学習。 2012年大学院在学中に株式会社Gunosyを創業、代表取締役に就任し、創業よりおよそ2年半で東証マザーズに上場。後に東証一部に市場変更。 2018年にLayerXの代表取締役CEOに就任。 2012年度IPA未踏スーパークリエータ認定。2016年Forbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出。2017年言語処理学会で論文賞受賞(共著)。2019年6月、日本ブロックチェーン協会(JBA)理事に就任。
世間が感じる成功と、起業家本人が感じる成功にはギャップがある
GREEの田中さんが話していた「成功は星の輝き」というのが本当に良い言葉だと思ったので、今日はその話をしようと思います。
一般的に思われているスタートアップの成功のあり方と、実際にやってる当人がどう感じているかってすごくギャップがあるんですよね。そのギャップを表す良い言葉だなと思っていて。
スピードの速いスタートアップだと、上手くいっていると思われる3,4年前くらいから成功しているんですよね。
メルカリだけは最初からすごく上手くいっていたので例外として、僕がすごい会社としてよくベンチマークしているのは会計ソフトのfreeeとかSmartHRとかは本当にすごい会社で、実際すごいすごい言われているじゃないですか。
freeeがすごいと言われ出したのは2019年ごろとかだと思うんですけど、僕はその3,4年前にどういう評価をされていたかをよく覚えているんですよ。freeeは2015年くらいにARR3億円くらいだったんですけど、そのとき15億円くらい赤字を掘っていて、業界の人はみんな成り立たないと言っていました。これは明確に覚えてますし、僕も言ってました。大変失礼な話なんですけど、僕も成り立たないと思ってました。
それくらい、成功とは星の輝きなんですよね。今やtoBスタートアップはみんな「どうやったらfreeeになれるか」という話をしている。
SmartHRのことも覚えていて。4,5年前にサービスが出てきたとき、僕はB DashとかIVSみたいなスタートアップのピッチコンテストで審査員をしていたんですよ。それでSmartHRがめっちゃ優勝していたときになんて言われていたかを覚えてるんですよ。
なんかニッチだね。
良いサービスなのはわかったけど、ビジネスとして成り立つかはわからないね。
バリュエーション高いね。
という評価をみんなしていたんですよね。
SmartHRがニッチとか、ビジネスとして成り立たないとか、今聞いたら笑っちゃいますけど当時はそういう評価だったんですよ。
それこそGREE子会社のREALITYは多分今めちゃくちゃすごい数字が出てると思うんですけど、始まったのは4年前で、(こんなこと言ったら怒られるかもしれないですけど)4年前ってGREEってそんなにスタートアップの中心にあってイケてるっていう認識は多分なかった。
当時はむしろ試行錯誤で苦しんでいて、そのなかで方向性を見つけてVR領域・メタバース領域に賭けるぞってなったのが多分3,4年前で、そこからの今なんですよ。
「REALITYはすごい、あれを仕込んでいたのはさすがすぎる」ってみんな言ってるんですけど、3,4年前はそんなこと誰も言ってなかった。これが「成功とは星の輝き」ということですね。
ビジネスには成功の瞬間がいくつかある
なぜこれが起こるのかと言うと、ビジネスってどの瞬間をもって成功していると思いますかって話なんですよ。
僕には2つの検討の仕方があって、1つは複利で回るビジネスのシステム、つまりユニットエコノミクスが成り立っている時。ここで1,000円投下したら将来5,000円か10,000円返ってくるというのをとにかく回転させる、広げるっていう、あるドライバーを見つけた時にそれをひねると確実に成長していくみたいなシステムが回り始めた時が成功が始まった時だと思うんですよね。
さらにその一歩手前、つまりビジネスモデルが回り始める一歩手前でユーザーのバーニングニーズが見つかって、それにプロダクトがハマった時。この時に真の成功が訪れていると僕は思うんですよ。
この時の起業家の心理状態がどうなっているかと言うと、ひとことで言えば「手応えと不安の矛盾した感覚」なんですね。
「ものすごい受けてるぞ。お客様にすごい喜んでもらえてるぞ。いける!」っていう感覚と、やはりビジネスマンなので規模とか意識しちゃうわけですよ。成功しているビジネスは弾み車が回った結果として数百億円の売上があるわけで、自分がいけるぞって思った瞬間の売上が100万円とかだったときに上手くいってるなんてとてもじゃないけど言えないわけです。
おそらく見つけたであろうバーニングニーズにハマったこのプロダクトがもっとスケールしていくことを証明しなきゃ、という不安。どこまでスケールするんだろうという不安。
この2つが入り混じった感情があるんですよね。
不安の中で戦い、最後の最後でビッグバンが起きる
ビジネスが成功する時って、こういう不安がありながらも何度も何度も改善を繰り返して、最後の99.99%まで頑張って最後の0.01%のところでバーンッと跳ねる、結果として現れるみたいな。複利なのでそういうものなんですよ。
本当なら成功していたであろう人も、あともう少しだけの広告費とか、あともう少しだけの営業努力とか、あともう1社会えば、というところでビッグバンが始まったのに諦めてしまうみたいな。成功のほんの一歩手前、複利が効き始める一歩手前で諦めてしまうというケースもおそらくめちゃくちゃあるのでもったいない。
世間の評価なんて天気の話と同じ
周りの評価なんて売上とかユーザー数しか見てないので。天気を見て「今日は晴れてますね」「雨でしたね」みたいなものです。
実際の成功とは3年〜5年くらい時差がありますよと。成功が始まった瞬間、本当は成功しているのにその瞬間のユーザー数とか売上が小さいだけで上手くいってないと思ってしまうというのがよく起こってしまうことなんじゃないかなと。
なので起業家とかプロダクトオーナーに意識してほしいのは、「成功は星の輝き」であること。ビジネスって弾み車が回り始めると本当に一気に急拡大するので、それを信じて期待値の高いアプローチを実行し続けてどっしり構えていればいいということですね。
このことは自分にも言い聞かせたいし、これから挑戦していく人にも伝えたいと思った次第です。
成功は星の輝き。
LayerXは今まさに星が輝く瞬間がきてるんじゃないかなと思っています。なので3年後か4年後あたりを楽しみにしていてください。
※この記事は配信者の許可を得て公開するものです。
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