自分自身を競争に晒したことで成長した。LayerX福島良典に聞くスタートアップ論
自分自身を競争に晒したことで成長した。LayerX福島良典に聞くスタートアップ論

自分自身を競争に晒したことで成長した。LayerX福島良典に聞くスタートアップ論

登壇者のTwitter(福島さん堀さん琴坂さん

目次

琴坂将広氏(以下、琴坂):今日のゲストは福島さんです。

福島良典氏(以下、福島):こんばんは。よろしくお願いします。

琴坂:最近いろんなニュースが出ていますけど、一番気になっていることから教えていただけたら嬉しいです。

福島:堀さんと冗談で「NBAの話しますかね?」みたいな話をしていて(笑)

琴坂:バスケお好きですよね。

福島:アメリカってスポーツビジネス1兆円ぐらいあったので、結構やばいと思うんですよね。それが(コロナの影響で)売上0とまではいかないですけど。早く再開してほしいなというのと選手の安全が…みたいな状況ですよね。

琴坂:今スポーツ領域で起業できそうですか?

福島:どうですかね。資本があるところで、メルカリがアントラーズ買うとか、楽天がヴィッセル神戸で過去最高収益とかあるので、「スポーツビジネスおもしろいな」と思うんですけど、かなり資本が要るのかなと思います。単純に買うにしても数十億とか、下手したら100億とかかかるわけじゃないですか。なので結構エネルギーがいるなと思います。

琴坂:アーリーキャリアのスタートアップが挑んでいくのは難しいかも?

福島:そうですね。ジムとかスクールみたいな感じでライトに立ち上げてスケールしていく、いわゆるYouTubeのような課金プラットフォームをうまく使ってスケールしていくモデルを作れるのであれば、それはそれでおもしろいんじゃないかなと。地域にスポーツスクールっていっぱいあったじゃないですか。ああいうのが全部オンライン化したらどうなるんだろうとか考えたりはしますね。

琴坂:今はすでにLayerXに取り組まれてますけど、それ以外のアイデアも浮かんでくるんでしょうか? それともLayerX一本なんでしょうか?

福島:LayerX一本ですね。めちゃくちゃLayerX一本ですよ。

LayerXがやっていること

琴坂:この番組の視聴者には学生も多くて、LayerXがなんかすごいことをやっているイメージはあると思うんですけど、学生にもわかりやすいようにLayerXがやっていることを教えていただいてもよろしいですか?

福島:みなさんが思うインターネット企業とはちょっと違って、どっちかというと、システムインテグレーター、SIerとかITコンサルがやってることの最新技術版、みたいな感じですね。

大学生とかはイメージが湧きづらいかもしれないですけど、銀行とか物流業者の裏側のシステムってかなり古いもので作られているので、そこが主な理由で「紙の仕事が減らせません」「ハンコとかFAXの仕事が減らせません」みたいな、インターネットの世界からするとバカバカしいことが平気で残ってしまっていて。

ただ、そこって変えるのは結構難しい。というのも、インターネットでは、情報が動けばお金が動くみたいに、全部インターネット上に乗っかってるわけじゃないですか。でも、銀行とかは支店もいっぱいありますし、物流も運ぶ際のミスとか問題が起こった後のトレーサビリティも含めて、配慮しなきゃいけないことがいっぱいあるので、その基幹システムみたいなものを作るのは難しいんですよね。そこをモダンな技術で、新しくスクラッチで作っていくみたいなことをやってるんですよね。

LayerXとGunosyの共通点

琴坂:Gunosyのときは完全にコンシューマー向けのサービスというイメージでしたが、(LayerXは)BtoBでかなり大手企業とかを抱えていて、作り方って全然違うんじゃないかと思うんですけどそのあたりはどうですか?

福島:実は一緒なのかなと思ってます。僕はtoCサービスにあまり向いてなくて、Gunosyではひたすらソフトウェア的な経営をやっていたんですよね。

僕ってかっこいいデザインは思い浮かばないんです。ただ、数字が上がるデザインはわかるんですよ。なぜなら、ABテストひたすら繰り返して、「こういったユーザーインターフェイスがこのKPIに対してはこう効く」みたいなものを必ず科学的に実験するので、勘で作る人よりも数字が出せるんです。それがクールなプロダクトかと言われると分からないですけど、数字は出せます。

あとは、アルゴリズムとかも含めて裏側の仕組みも勘で選んでるのではなく、全部ソフトウェア的な実験を繰り返すことで、実験数をたくさん並行して並べていて。職人の技って残らないけど、ソフトウェアの技って残るんです。ソフトウェアとデータという形で必ず保存されて、これは誰が動かしても同じ結果になって、改善点がずっと積み上がっていくんです。なので、ある種ソフトウェア工場みたいなものを裏側で作っていたイメージです。

Gunosyもある意味メディアのDXをしていたのかなって。普通のメディアが「記事をどう作って、どういう人にどういう媒体でどう見せようか」みたいに考えるところを、多分まったく違うルールで、トヨタのものづくりみたいな視点でメディアを作っていたと思うんですよ。

琴坂:なぜそうなったんですか?

福島:もともと僕みたいな発想をしてた人っていっぱいいたんです。そもそも僕がいた領域、ソフトウェア工学の領域とか機械学習の領域って実験なんですよ。実験で勝ったやつが偉い、結果を出したやつが偉いという科学的な世界で戦っていたんです。

ただ、いろんな行動履歴、ログが取れないような時代だった。新聞とかテレビとかを科学的に経営しようと思っても、できないじゃないですか。だから、勘に頼るしかない。でもソフトウェアがコントロールできる範囲が広がっていて、科学的に経営できるようになっちゃったんですよ、メディアはここ少なくとも10年。

それが今物流、金融の世界にまでソフトウェアのコントロール範囲が広がろうとしている。金融の世界って、ある一定のルールとか縛りがあるなかで、完全にソフトウェア化するのは難しいとなっていたところがほぐされようとしている。物流とかも、もちろんセンサーからデータを取ってくるとかは難しいんですけど、IoTの普及とか、自動運転とかそういったものすらも制御できるというなかで、ログも取れるようになった。これって、インターネットのメディアトラフィックの場合と評価の仕方は変わらないじゃないですか。

琴坂:つまり、最初福島さんがアプローチしたのがたまたまメディアであって、根本的にはそのときやられていたことと、今やられてることって実は方向性は変わらない。

福島:ソフトウェアで科学的に経営するということに興味があるという感じですね。

琴坂:そこの応用領域がすごく広がってきたので、LayerXはいろんな産業、いろんな大手の企業と連携しているという形ですね。

福島:そうですね。大手と連携する理由は、やっぱり一朝一夕で得られないアセットがあるんです。トヨタが自動車の生産ラインを持ってるとか、販売系も含めて戦後から50年60年かけて作ってきた販売網ってベンチャー企業が手に入れられないネットワークじゃないですか。

僕ら三井物産とアセットマネジメント会社をやってるんですけど、それで何をやりたいかというと、三井物産が持っているアセットを流動化したいんですよ。そうなったときに、彼らってガス田とか航空機のサブスクの権利とか色々持ってるんですけど、それが今まで投資商品化されてなかった。そういうのを技術で投資商品化できるとなると、それは魅力的な利回りで安定したキャッシュフローにできるみたいなのをいっぱい持ってるんですよ。

琴坂:きっとこれを聞いている方は、スタートアップでいきなり名だたる大企業の仕事を取ってこれるイメージは全くないと思うんですけど、福島さんはなぜそれができるのでしょうか?

福島:そうですね。自分の強みとか、自分が社会からどう見られているかを考えると、1回ある程度結果を出しています。それをもって自分は実力があると言うつもりはないんですけど、少なくとも結果を出しているから僕の言葉に信用が生まれる。

それに世の中的に、大企業の方々ももし10年前だったら、デジタルかオフラインかというところでデジタルに振り切ることをためらう方が多かったと思うんです。でも、この10年間でデジタルと共存する、デジタルを活かすという考え方が当たり前になって、ソフトウェアがどんどんその領域を食ってるというのは彼らも気付いているので、分かってるやつを取り込むしかない、分かってるやつと組むしかないという大きなマインドチェンジがこの10年間で起こったんじゃないかなと。なので、結構組めるチャンスはあると思います。

LayerXに影響を与えたビジネス

堀新一郎氏(以下、堀):スタートアップで、受託を大企業相手にやっていく会社ってここ数年ほとんどいなくて、挙げるとするとPKSHAとかKudanさんですが、彼らの動きは少なからずLayerXの今のビジネスモデルに影響を与えたんですか?

福島:そうですね。あのやり方でうまくいくというのは僕の中でも新鮮というか、「なるほどな」と思って参考にはしています。あと、海外でもそういうスタートアップが増えてきていて「よく受託ですか?」と勘違いされるけど、PKSHAとか受託じゃないんですよね。トランザクション型のフィーでとっていて、カスタマイズをめっちゃ頑張るSaaSみたいな。SaaSって個別カスタマイズせずに、営業でスケールさせていくみたいな発想だと思うんですけど、逆にPKSHAとか僕らは営業する数を絞って、その代わりトップクライアントからしっかり予算をいただく。その代わりめちゃくちゃカスタマイズしますみたいな。でもトランザクション型のビジネスで伸びていきますよと。

琴坂:SaaS型が少ないと言ってるのは何でしょう?

福島:たとえば金融機関で証券会社だと、まともな証券会社って多分10社ぐらいしかないんです。でもSaaSが対象とする会社って何万社とかじゃないですか。10社にそんな汎用的なプロダクトを作る意味ってあまりないんですよね。

だから、ひと世代昔で行くと、シンプレクスとかフューチャー、ワークスアプリケーションズとかは、顧客何万社とかを相手にするんじゃなくて、たかだか100社から200社ぐらいの間でしっかり高いフィーを取って、しかもお互い利益が出るみたいなモデルだった。「シンプレクスさんがいないとコストが上がっちゃう」とか、そういう構造を作りながらうまくサービスフィーとトランザクションフィーを混ぜ合わせながら成長してるというのがあるので、意外となくはないかなという。

カテゴリーキラーを作れ

琴坂:そうすると、その領域のこのモデルで生存できる企業は少なくて、LayerXさんPKSHAさんとかいくつかで固まりつつあるようなイメージもあるんですけど、これから起業しようという人たちが入り込む余地というのはどこにあるんでしょうか。たとえば、福島さんが2周目、3周目じゃなくてゼロからスタートするとしたらどういうことをするのでしょうか?

福島:カテゴリーキラーを作りますね。たとえば、キャディさんとか10Xさんとかと僕らは結構近しい発想で動いていて、キャディさんは製造業、10Xさんは小売みたいな感じで、そのカテゴリに特化したソリューションを作っていて。よりサービスっぽいのだとOLTAさんとか五常さんとかも結構近い発想かなと。だからカテゴリーキラーを作ればいろんなチャンスがあると思います。

琴坂:カテゴリーキラーを作って、一番上ではなくて中段下段のマスのある層をとっていくイメージ。

福島:そうですね。

堀:金融中心にブロックチェーンをやってらっしゃると思うんですけど、カテゴリーキラーって業種セグメントのことじゃないですか。ブロックチェーンってホライゾンタルで横軸の話で、LayerXに関して言うと金融×ブロックチェーンでやってると思うんですけど、ブロックチェーンにこだわりはないんですか?それともブロックチェーンはマストなんですか?

福島:そうですね。マストではあるんですけど、あまり表には出さないようにしたいなと思っています。結局企業がやりたいことってDXなので、たとえばPKSHAもアルゴリズムで課題を解決する会社であって、機械学習を頑張って導入させるという会社だという認識はしていないと思います。彼らは前工程のコンサルもやるし、データクレンジングみたいな泥臭いこともやるし、BPR的な業務改善、業務全体を落としてワークフローにして行くみたいなこともやると思うんです。

そういう意味において、実は強いこだわりはないという感じですかね。技術として当たり前に選択されつつあるというのは中国の事例とかを見て思うので、技術選択として皆が思っている程ダメなもんじゃないという自信は持ってます。

堀:私は20年近く前にフューチャーシステムコンサルティングというところで働いていたのでわかるんですけど、当時、オープンソースで金融だったり小売のシステムをリプレースしていくというのでバンバカ受注して、IBMとかのメインフレームをどんどん置き換えていたんですけど、それに近い話かなと思いましたね。

福島:そうですね。あと、リプレイスのない世界を作りたいと思っていて。たとえば、今のインターネット企業ってリプレイスっていう発想を持ってないじゃないですか。基本的にすべてサービスを出してからが勝負で、改善していきますというのがソフトウェア経営だと思うんですね。デジタル化するというのは全てがサービス化することだと思うので、経理活動すらサービスですと。

堀:バージョンアップしていくと。

福島:なので、そのインフラを作ってその先でとにかく継続改善されていく仕組みを作りたいなと。

堀:これは作った側からすると、ずっとチャリンチャリン儲かる発想でいいですね(笑)

福島:(笑)

琴坂:そこのサイエンスって難しいですよね。そこは何が工夫になるんですか? リプレイスされないような仕組み、ロックインとか。

堀:どんどんバージョンアップしていったらズブズブに浸っていくから、他のものに変えられなくなるんじゃないですか?

福島:あとは、システムとして入れるのではなくてたとえば、今インターネットのサービスだとマイクロサービス的な設計思想ってあるじゃないですか。入れるのはその設計思想とかオフィスインフラ、デブオプスとかの乗っかるシステムとかではなくて、ある種インターフェースが切られている。

たとえば、電子契約サービスを選びたいってなると今だったらサービスロックインされるじゃないですか。ではなくて、電子契約インターフェースみたいなものがあって、データもこっちに残ります。その上でドキュサインかクラウドサインかは状況によって選んでいけば。

琴坂:それができるように大手企業側をトレーニングしていて、そういうサービサーにロックインされないように設計をしていくアドバイス、お手伝いをしているみたいな言い方になるのかな。

福島:究極的にはそういうところですかね。先方にCTOがいて、そこの採用まで手伝って…みたいな。ただ、オフィスインフラは入れてくださいみたいな。

琴坂:がっちりとそこの会社の戦略まで踏み込んでいって。

福島:そうですね。なので、ITコンサルとかアクセンチュアとかがやってることに近くなると思います。ただ、僕らはソフトウェア視点でそれを全部作っていくみたいな。

受託をどうスケールさせるのか

受託はスケールしづらいとよく言われます。どうスケールさせるのでしょうか? Gunosyとかメルカリのように広告で一気に伸ばしたりできないと思うので、SaaSのSmartHRみたいに営業人員を採用しまくって売上を伸ばしていくのでしょうか?

(以下に続く)

失敗にはトレードオフがある(2/3)