失敗にはトレードオフがある(2/3)
失敗にはトレードオフがある(2/3)

失敗にはトレードオフがある(2/3)

目次

福島:そうですね。たとえばLayerXで行くと、アセットマネジメント会社を三井物産と一緒にやっています。そこに当然僕らのシステムを入れていってるんです。だけど、システムフィーで取りたいのではなくて。アセットマネジメントのビジネスって、ファンドサイズが大きくなればそれに比例してマネジメントフィーもらえるというモデルなんですよね。だから、そこに乗っかるお金が10兆円とか行けば、勝手に1個のシステムでスケールするわけです。システム上に乗るトランザクションが多くなることが僕らにとってスケールで、顧客数を頑張って横に広げることではないと。

琴坂:それが乗っかっているとワンタイムのフィーではなくて、そこのマネジメントフィーというか。

福島:継続的にもらえます。僕らを外すと「そこのコスト効率が合わなくなるよ」みたいな状態をいかに作れるかという話かなと思っています。

カテゴリーキラーかつカスタマイズSaaSだと市場は小さくなりそうだと感じるんですが、どう市場を捉えているんでしょうか?

福島:これは本当に真実かどうかは分からないなと思っていて、シンプレクスの売上とかって調べたことありますかねといった感じで、ほとんどのSaaS企業よりも遥かにデカイんですよ。彼らは売上2~300億ぐらいあって、営業利益3~40億とか、いい時は50億とか出してますみたいな話で、それって小さいんですかねみたいな(笑)

カテゴリの切り方次第かなと思います。別にカテゴリで最初のソリューションを作ったからって、永遠にそのソリューションを売り続けるわけではなくて、結局カテゴリに入るとそこから入ったゆえに他の課題が見えてくるわけですよ。最初は取引の契約管理を楽にしようと入ったんだけど、その裏側のERP的な、取引先の会計のマネジメントを苦労してるから、そこにソリューション作りましょうとか。カテゴリから入ってそこの課題を広げていくみたいなやり方をしていけば、全然大きくなると思います。

堀:なるほど。

失敗にはトレードオフがある

Gunosy時代の失敗の中でLayerXで特に活かしたいと思っていることは何でしょうか?

福島:いっぱいありますよ。まず、避けられる失敗と仕方がない失敗があります。めちゃくちゃ成長していて多少組織が痛んだとしても、売上とか利益を追求するタイミングって会社経営ではあって。だからといって、LayerXで同じような状況になった時にそこでブレーキを踏んで組織を壊さないような意思決定をするかっていうと、僕はあまりしないかなと思って。失敗ってどこかでトレードオフがあったりするんですよ。

組織がうまく回ってビジネスもうまく回って、将来のリスクも全部抑えられてるなんて状況はあるわけないので、今の利益を刈り取ってたら将来新しい新規事業を生み出すリスクを実は背負っちゃってるみたいな話もありますし、人のマネジメントにコストをかけすぎると文化を重視して成長が止まってしまうみたいなケースもあると個人的には思うんです。

琴坂:LayerXが取ろうとする反面、少し犠牲にしてることは何かあるんですか?

福島:短期的な急激な成長は切ってるかもしれないですね。広告費でポンみたいなビジネスではないんですよ。当たり前ですけど。トランザクションを育てなきゃいけないんで。アセマネ会社をセットアップしてライセンス取って、そこもいきなりアセットが溜まっているわけではないので色んな手を尽くしながら、アセットが溜まっていくようなサイクルを頑張って作ってみたいな、結構しんどいわけです。そういうのを1社1社保険領域だったらこれやって、とかってやっていかなきゃいけないので、いきなり2年3年で広告費100億ぶっこんで売上100億行くみたいな、そういうのはあんまりないかなという。

堀:銀行の会社になるとそういう時って手弁当でとりあえず作らせてくださいみたいな感じでやって、支払いが後になったりとか持ち出しが多くなったりするケースがあると思うんですけど。PoCから入って、お金が最初入ってこなくて赤字から始めなきゃいけないケースも多いのかなと思うんですけど、その辺はうまくやれてるんですか?

福島:僕らは開発費はしっかり取りますね。そこはまた別の話なので。

琴坂:それは選択肢として取らないという選択肢はなかったんですか?

福島:取らないならレベシェア率をめちゃくちゃ上げます。そこのバランスだと思うんですよ。

琴坂:スタートアップする中だと、「最初は実績を作るから値下げしなきゃ」とか、そういう誘因が働くのではと一般の方々は想像すると思うんですけどどうですか?

福島:値付けの問題かなと思います。一応、僕らSIerとかITコンサルがどれぐらいの値付けならどれくらいのパフォーマンスを出していて、どういうアウトプットが求められるのか、というのはすごく研究しています。その辺に対しては自信を持ってパフォームしてます。

琴坂:ちなみにこれはどうやって研究するんですか?

福島:一番早いのは中の人に聞くことですね。そういう人を採用して文化を取り入れちゃうとか。たとえば営業強化したいのならキーエンスの人採れば一番早いじゃないですか。そうするとそのDNA自体を輸出してくれるので。

琴坂:そこの知識の媒体者として人を取って、組織に吸収していくという。

福島:テレビ広告打ちたいんだったら電通の人を取るのが一番安上がりで、情報差分もなくなると思うんですよね。

琴坂:今の採用環境っていかがですか? 福島さんとLayerXがあって楽な部分もあると思うんですけど。

採用の基本

福島:マクロで見るとベンチャーに対する寛容度はどんどん上がってきてるので、まず大前提としてこの領域に来たいと思う人は増えてると思いますね。別に僕らみたいな産業に関わらず、スタートアップの中でももっといろんな産業があると思うんですけど、そこに対しての挑戦の寛容度もいろんな人の中で上がってきてるんで、10年前より採用は楽になってると思います。

琴坂:それでも福島さんが最初Gunosyを立ち上げてまたゼロから独立していくという中で苦労はされませんでしたか?(LayerXは)ハイプロファイルな方がいないと回らないビジネスモデルだと思うんですけど、どうやって説得されましたか?

福島:基本的には僕が考えていることをしっかり話す感じですかね。「なぜこの産業に賭けるのか、その意味は何か」とか。多分そのハイプロファイルな方って給与とか条件とかで動かない方という感覚が僕の中ではあるんですけど。

たとえばメルカリにいる人に「すごいtoCサービス作ろうしてるんすよ。来て下さい」と言っても多分何も響かないじゃないですか。メルカリは日本で一番成長したtoCプロダクトで、彼らよりも大きいのはLINEとYahooぐらいしか残っていないので「そこに行くか違う道に行きますか?」くらいの選択肢だと思うんですよね。

そういう人に、「いやいや実はDXという文脈がありまして、ソフトウェアがこうやって産業を食ってくんです。これが日本のこういった課題を解決していくんです」みたいな意味付けとストーリーを話すと来てくれるチャンスがある。自分の会社のことなので、やっぱり始める理由があるわけじゃないですか。自分なりに事業にかける理由をストーリー立ててしっかり話していくというのが採用の基本かなと思いますね。意味がない会社には来ないですよ。

琴坂:それでもう全部行けますか?それともその先に何かあるのか、ビジョンが重要でそれがファウンデーションになるといろんな方がおっしゃってますけど、その先に何か最後の一押しになるようなスパイスってあるんでしょうか?

福島:タイミングじゃないですかね。全ての会社において、「採用したい人」ってかぶるんですよ。人気者は絶対かぶる。しかも、それって採用する側だけではなくて会社として引き止める側もいるわけです。こんなのタイミングでしかなくて、だから僕らは経営陣が採用に関してはコミットするというのと、メンバーも一定時間コミットしていて、全体でも2割ぐらいはAクラスの人、Sクラスの人連れてくるために動いている。その上で半年とか1年かかる人もいるので、ずっと声をかけ続けます。

琴坂:福島さんの考えるAクラス、Sクラスの人材ってどういう人ですか?

福島:一言で言うと「会社の未来のリスクを潰してくれる人」。たとえば僕らの会社で次のフェーズに行くと「アクセンチュアに対してどう勝っていくの?」とかを考えないといけない。開発資金もらいながらレベシェアみたいな美味しい状態ってそんな続かないと思うんですよ。

僕らは今希少な存在ですけど、DXできる会社、ブロックチェーンを使える会社は増えていくと思うので、そうすると競争にさらされるわけじゃないすか。100人ぐらいになるとそもそも組織の問題が起こってくるとか、資金調達ある程度大きな額しちゃってるので、ここで緩めちゃうと緩んだ組織文化が作られちゃうとか、普通に想定しうるリスクっていっぱいあると思っていて。

あと、アカウントを開けるためにトップ営業をしなきゃいけないんだけど、トップ営業ができる人っていうのは、やっぱりマッキンゼーとかボスコン、キーエンスで経験してきた人。僕らはそういう経験してないので分からないから、そういうDNAを取り入れるみたいな。

会社の成長のボトルネックってあると思うんです。toCのプロダクトみたいなものを考えるとすごく分かりやすいと思います。シード終わりました、プロダクトマーケットフィット終わりました、の後にマーケをガン踏みしたとき、マーケティングが本当に上手い奴が1人いるかいないかで効率って2~3倍変わるんですよ。本当にそれぐらい変わるんです。その1人がいるかいないかで、10億円ぶっこんだ効果が2~3倍に膨れ上がるかどうかが決まっちゃうんで、そういう人がいないとまず駄目ですね。

あとそういうユーザーの増やし方をすると、サービスのインフラが絶対持たなくなるんですね。だからトラフィックをさばいた経験があるやつが必ず必要になるわけじゃないですか。次はある程度ユニットエコノミクスを確かにするためにマネタイズの方法を考えなきゃいけない、広告なのか課金なのか。それも経験している奴がいるかいないかで、冗談抜きで多分100倍ぐらい変わると思うんです。

堀:今までってGunosyだったじゃないですか。だからコンシューマー系のサービスでグロースできる人、必要な人採りに行くというところで、Yahooだったりスマニュー、LINEで働いている人に声かけてアプローチしたりとかはあったと思うんですけど、LayerXになったらエンジニアは別として、今までのご自身のネットワークがほぼ活かせないような気がして。福島さんがキーエンスとかボスコンの人と元からネットワーク持っていたような気がまったくしないんですけどその辺ってどうやって構築されていったんですか?

福島:基本的には紹介でやっていくという感じです。

堀:ヘッドハンター、それとも友人?

福島:両方ですね。あとはやっぱりそういう人が1人入るとまたネットワークって広がるじゃないですか。そんな感じで採用もネットワーク的に考えてます。だからPRはめっちゃ頑張っています。それで言うと、そういう人たちが興味を持つ、申し込みたくなる、話を聞きたくなるような文言、タイミング、見せる角度を徹底的に考えてます。採用とかPRもある種のマーケティングだと思っているので、めちゃくちゃハックしにいきます。

堀:それはTwitter普段のつぶやきとかも結構関係しているんですか?

福島:結構狙ってますよ(笑)全然考えずつぶやくときもありますけど。

会社を常に構造で捉えよ

stand.fmにて「経営者がやるべきは、リソースを投下した時、その課題が解かれた時に、最も企業成長のボトルネックが解かれて成長が円滑化することに時間を使うこと」と仰っていたと思うのですが、そのボトルネックの特定のために普段何を見ていますか?また優先順位づけの基準を教えていただきたいです。

福島:常に会社を構造で捉えてます。定量的に把握できるところとできないところがあるんですけど、会社がどう成長しているのかドライバーを整理しておく。経営者ってボトルネックになっているところを把握できると思うんですね。どういう要素があって、どういう変数があって、ここがこうなればこう動くはずだみたいな仮説と検証みたいなところでズレとか差分を繰り返す。

たとえば僕らのビジネスだったら、法人営業かけなきゃいけないですよね。法人営業をすごい広い視点で見ると、顧客のファネルがあって、リード獲得にはPRでインバウンドで取ってくるのと、こっちからプッシュするのと、その間ぐらいでセミナーとかを開いて取れるのと…みたいななんとなくな図があるわけです。それがまず次の一発目のミーティングに行く確率。その後何回か営業していて最終的に案件として成立するまで、それも一緒の顧客ファネルがあるわけですよね。そういうのを1個1個分解していって、何が足りてないのかって常に考えておくべきかなと。

自社のビジネスの構造をしっかり理解してどういうファネルで、そのファネルごとにどういう要素があって、その要素を変えたときに良くなったか悪くなったかというのを、科学的に完璧にやりきるっていうのは難しいですけど、本当に僕らの会社だと「えっ?」っていうぐらいのスピードで朝令暮改とかしてて、営業資料とかも同じ営業資料は一度も使わないぐらい毎回変えたりしています。

琴坂:すべてを構造化して因数分解して、センスを必要としない経営をクールにしてるようにしか聞こえないんですけど、逆に言語化できなかったり科学的に分解できなくてエモさで勝負してる、エモいところで意思決定するときとかはあるんですか?

福島:基本はそういうの徹底排除が僕のスタイルです。ただ、その上でサービスの基本って、「そのサービスがあることによって世の中が喜んでいるという状態」だと思うんですよね。やっぱりそれを考えるのにはエモさが必要ですよね。ただ1回決めた後は、徹底的に合理と冷徹な意思決定で決めていくべきで、機械的にすべてがシステムとして動くようになれば必ず成功すると僕は思っています。

「機械的に」というのは「起こっている事象を観察して事実をもとに動く」ということだと思ってます。どうしても「統計的に1,000人に聞いてこれぐらいの反応が返ってきて…」とか、そういうのを想像しちゃうんですけど。1人の顧客が熱狂しているとか、めちゃくちゃ営業とかしていても、めちゃくちゃドン刺さりするものと刺さらないものって話してたらわかるんですよね。相手の反応とか事実に対してめちゃくちゃ誠実に動き続けるということかなと思っているんですよね。すべてを統計的に判断しているわけではなくて、ただ観察はめちゃくちゃしているという感じです。

堀:人の採用する時とかパフォーマンスはすごく見られてると思うんですけど、そのときも(エモさを)徹底排除しているんですか?この人といると楽しくなりそうだなとか。

福島:実は僕は採用の判断をしてなくて、僕の役割は口説くことだと思ってるんですよね。上がってきた時点で結構いいなと思っちゃうんですよ(笑)そういうのも含めて役割分担かなと思って。メンバーでシビアに人を見れる人とか、それこそ最近弊社に入社した石黒とかも含めて、人数めちゃくちゃ見てきているのでそこは全幅の信頼を持って任せる代わりに、口説くところは僕がコミットしてやります。

琴坂:科学的、数値、実験というと定量的とか統計的だと思われがちだけどそうではなくて、目的に達するに必要なエレメントをちゃんと構造化して、それをひとつひとつ丹念に見て潰していくという作業があると。

福島:そうですね。

琴坂:そこにはエモいというか、経営者からの熱い情熱を語るみたいなものももちろんエレメントとして。

福島:そうですね。

堀:福島さんには欠点とか弱みがないですね。

福島:ありますよ(笑)

琴坂:何ですか?

福島:弱みというか、LayerXのリスクはいっぱいあると思いますよ。それが弱みな気がします。ひとつはやっぱり「わからない」というところですかね。どういう入り方で、どういう営業メッセージで、どういうプロジェクトの進め方をしていくといいのかとか。

あと、僕らはデジタルトランスフォーメーションという言い方を結構意識してるんですけど、トランスフォーメーションじゃなくてデジタルスクラッチの方が早いんじゃないかみたいな。Amazonみたいな会社がゼロから銀行を作っちゃう方が早い可能性があるわけですよ。根本的な戦略の筋で負けている可能性はあるわけで、そういうのってどんなに努力して頑張っても抗えなかったりとか、そういうところはありますよね。LayerXはスクラッチで作るのが難しいところを意図的に狙ってますけど。

琴坂:そこはあえて避けると。

福島:そうですね。そういう負け方をしないような業界をしっかり選んで、その上で時間がかかってもいいから本丸の人たちにデジタル文化を輸出していくみたいな。

受託は個別性が高くエンジニアが疲弊するとよく聞きますが、エンジニアの扱いはどうされてますか?

(以下に続く)

スタートアップというプロセスすべてで成長した(3/3)