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自社のサービスをより良いものにするためのリサーチの作法

日付
2021/07/28
ライター
こんにちは、アルという会社をやっております、けんすうと申します。
 
スタタイDBは、国内外のスタートアップの企業情報が載っているDBサイトですが、サービスのリサーチをすることと、実際のサービスにどう活かすのか、というのがいまいちピンとこない、という人もいるんじゃないかと思っています。
 
よくあるのが「とにかくリサーチをしよう」というので、やたらめったら情報を掘り下げていったりしちゃう人がいるのですが・・・。自分の中で仮説や方向性がないまま、情報を手に入れても、すぐ忘れちゃったり、浅くなったりしちゃうので注意が必要です。
 
というわけで、実例があったほうがイメージがしやすいんじゃないかと思いまして、この記事を寄稿させていただくことにしました。
 
僕は20年くらい、インターネットサービスを作る、ということをやり続けているのですが、「国内外のサービスをリサーチして、サービスに活かしたいときに、こういう感じでやっているよ」という話を書きたいと思います。
 
目次
 

前提

よく他社さんの事例では「国内外のVCが何に投資をしているのかのリストを眺めて、今の潮流を把握したり、市場があるところを見つける」という話を聞きます。
 
このやり方は「良い市場を見つけて、そこからヒットするサービスを作る」という、いわゆるマーケットイン的な方法です。どういうサービスを立ち上げるか、というのよりも、会社をうまくいかせたい、経営としてきちんと利益をあげたい、大きなインパクトを与えたい、と思うタイプの起業家には向いている方法です。
 
雑にいうと、クラウドソーシングが来ている、というのであればクラウドソーシングサービスを立ち上げるし、フィンテックが来ている、というのであればフィンテックを立ち上げる、ということができる人であれば、素晴らしいやり方だと思います。
 
ただ、僕はどちらかというと「面白いサービスを立ち上げて、それがあると社会がどうなるのか」みたいなところに興味が強いので、この方法はあまりとりません。
 
逆にいうと、上記の方法でやりたい、という人は、スタタイDBさんのVCのページから、全会社を眺めるというやり方でいいと思います。
 
というので、今回は、どちらかというと、作りたいプロダクト側からリサーチをする方法について書きたいと思います。
 

STEP1

僕の場合、まずは、「こういうサービスがあると、こうなりそうだけど、なんでないんだろう?」というところから考えます。
 
実例を上げたほうがわかりやすそうなので書きますと・・・。
 
たとえば、先月(2021年6月)に立ち上げた「elu」というサービスがあります。これは、1枚の画像をさくっと売れるサービスなのですが、「速攻で何かのイラストとかを売れたらいいな」と思ったのが起点です。
 
この時点では、自分でも「何でそういうサービスのアイデアがでたか」というのはわかっていません。なので、もうちょっと思考を掘り下げてみます。
 
僕の知る限り、そういうサービスはありません。となると、「今、それをやりたいと思っている人はどこでやるのか?」を考えました。
 
簡単さ、という点においては、「BASEでお店を作る」か、Gumroadなどを使う、イラストの販売、とかであればDLsiteなどが思いつきました。
 
じゃあ、今、僕がイラストを描いて1枚だけを売ろうと思ったときに、それらのサービスを使うのか・・・というと、なんか使わなそうだなと思ったんですね。ちょっと敷居が高く感じたんです。
 
本当はBASEもGumroadも、ものすごいシンプルにして、敷居を下げたサービスなのですが、今やそれすらも大変と思う部分があるのでは、ということに気づきました。
 
となると、「シンプルに何かをさっと売るサービスがないかな」というので調べてみます。これらはちょっとセンスがいりまして、「クリエイターエコノミー文脈で記事がないか」「その記事でどういう会社が取り上げられているか」などをスプレッドシートなどでまとめながら、情報を掘り下げていったりします。
 
こういうのをやって、まずはアイデアの解像度を上げていきます。
 
注意したいのが、サービスのアイデアがない状態でいろいろみてしまうと、アイデアがすでに実現しているサービスをいろいろ見れてしまうので、とてもバイアスがかかってしまうのですね。
 
この時のバイアスで一番よくないのが「競合したくないからニッチを狙う」みたいな方向になってしまうことです。知りすぎてしまうと、競争を避けてマニアックなことをやりたくなってしまったりします。
 
なので、僕はあくまで、自分が作りたいサービスがあって、そこの仮説の精度をあげるためにリサーチをするという方法をとっています。
 

STEP2

この段階でリサーチをいったん終えて、MVPを作ります。MVPとは、Minimum Viable Productの略ですが、要は「最小限の機能で、まずは世に問うてみる」みたいな感じです。
 
というわけで、だいたい2週間くらいの工数で、できたサービスをリリースしてみました。登録などはなく、Google Formで申請する方法です。あとはイラストをアップして値段をつけて売れるだけ、という感じです。
 
やってみたのですが、思ったより反応がよく・・・。1ヶ月で1,500万円くらいのGMVが発生しました。ただし、プロダクトとしての課題も多く見えてきました。
 
今回のサービスの場合、トップ層はとても売れるけど、そうでない人はやはり売れない。となると、他社はどうなっているのだろう、というのが気になります。
 
そこで、「ファンにモノを売っているサービスを調べよう」というので、ファンエコノミー系のサイトを調べます。この段階では、上位の人たちはどのくらい売れているのか、トップ層がほとんど稼ぐモデルなのか、ロングテールなのか、などをできる限り調べていきます。
 
要は「サイトのユーザー層の偏りや構造を理解する」ためにリサーチをします。1人が発信して10,000人が見るサービスなのか、100人が発信して100人が見るサービスなのか、によってサービスの構造が変わるので、そのあたりを把握しにいきます。
 
ここでは情報があまり落ちておらず割と苦戦したりするので、実際にサービスを使ってみて掘り下げていくしかないケースがほとんどです。
 

STEP3

こういうことをして、サービスの改善や、戦略を練っていきます。
で、この段階で、「よりマクロな調査」と「よりミクロな調査」を行います。
 
マクロな調査とは、たとえば今回のeluは広くいうと、いわゆる「クリエイターエコノミー」というジャンルに入りそうです。なので、クリエイターエコノミーに関係するサービスを洗い出してチェックします。
 
海外だと、クリエイターエコノミーではこういうサービスが出てきているな、とか、こういうサービスが人気だな、というのを把握していくのです。スプレッドシートに情報をできる限りまとめていきます。
 
一方で、ミクロな調査も行います。具体的には、親しいサービスや似たジャンルのサービスを、実際にメンバーと一緒に触ってみます。
 
支援金などを出して、実際にお金を使ってみたりして、気付きを得ていきます。「ここはこういう効果があるのではないか」「このエフェクトは、こういう気持ちがして、とてもよかった」みたいな小さな気づきをためていきます。
 
それらを社内で共有しあって、「よりよいサービスにするためには、こういうところを参考にしよう」というのをメンバーの中で共通認識を持てるようにします。
 

というわけで

こんな感じのことをして、PMFを目指してリサーチサービスを創っていく、というのが多いです。もちろん、全部をやらないときもあれば、やり方が違うときもありますが、ざっくりというとこういう流れになります。
 
国内外の情報を集めて、詳細に自分の領域をほっていくのはとても大事なのですが・・・。リサーチのタイミングや掘り方などをミスると、どうしてもサービスがぶれたりします。
 
あくまで、サービスを作るときには、使うお客さんのことを考えるのが100%にするべきです。そして、お客さんのためのサービスの完成度を上げるためにリサーチをする、という形にするべきだと思っています。
 
で、めちゃくちゃな「そもそも論」を書いてしまうと・・・
MVPを作る前にリサーチする範囲と、MVPができて実際のユーザーがいる状態でリサーチする範囲は全然違うはずです。なのについつい「たくさん情報は知っておいたほうがいいだろう」と思い他社事例などをリサーチしがちなんですが、僕は結構危険じゃないかと思っていたりするんですね。
 
変なバイアスがそこで入りまくってしまうからです。
それをするくらいなら、まずはお客さんに話を聞きまくったほうが、効果的なリサーチになるはずです。その上で、作るべきサービスの像が見えてきたら、サービスのクオリティをあげる範囲でのリサーチをしていく、というのがおすすめです。
 
業界とかについて調べるのは、MVPを出してお客さんの反応を実感してからのほうが効果的なんじゃないかと思っています。
 
リサーチをすることが目的にならないようにしないとな、というのは常に意識しているところなので、もしよければ参考にしてみてくださいー!
 
※この記事は、「00:00 Studioのリクエスト機能」を利用して依頼された記事です。