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世界へ羽ばたくスタートアップは築130年の京町家から生まれるか。今、関西で最もアクティブな人物が手がけるインキュベーション施設の内側

日付
2022/03/15
サマリー
スタートアップのアクセラレータープログラム『Re:Vive』などを主催する鈴田 泰久氏が京町家を使ったインキュベーション施設を正式にオープンした。
すでに全国の起業家・VC・エンジェル投資家などが訪れる場所になっており、知る人ぞ知る関西のスタートアップハブとして機能している。
 
インキュベーション施設。それは創業まもない起業者を支援する目的のもと、通常よりも安価な賃料でオフィススペースを提供したり、知見を持つ専門家などを招聘してイベントを開催したりする場所のことを指す。日本でも行政をはじめ、VCのANRIが「Good morning building by anri」を、Plug and Play Japanが東急不動産とパートナーを組んで渋谷にコワーキングオフィスを提供するなど、複数事例がある。
 
関西にもインキュベーション施設は多い。スタートアップ支援に積極的な神戸市や大阪市などを中心に、かなり安くオフィススペースを提供している地域もある。
 
しかし、インキュベーション施設に本当に重要なのは価格ではなく熱量だと私は思う。そこにいたら何かが起きるんじゃないかという、口では説明できない空気感。古くは幕末の志士が集まっていた松下村塾、漫画家が集まっていたトキワ荘、そして日本のインターネット史に名を残すネットエイジの初期オフィス。
 
安いからと入居するのではなく、そこに何かがあると感じた者どうしが共鳴し合ったから自然と集まる場所。それこそが本当の意味でインキュベーション施設だと思う。
 
当時のネットエイジオフィス玄関
Image credit: https://forbesjapan.com/articles/detail/28506/2/1/1
当時のネットエイジオフィス玄関 Image credit: https://forbesjapan.com/articles/detail/28506/2/1/1
 
今、関西は京都を拠点に、熱量の高いインキュベーション施設を手がけている人物がいる。
 
シードVC、デロイトトーマツベンチャーサポートなどでのインターンを経たのち、関西U29アクセラレータープログラム「Re:Vive」を運営している鈴田 泰久氏だ。
 
 
鈴田氏は、築130年の京町家を1軒丸ごと借り上げ、創業間もない起業家のインキュベーション施設にしている。すでに数名の起業家が鈴田氏とともに住んでおり、文字通り寝食を共にしているという。
 
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鈴田氏の思いの丈は、以下の note からご覧いただける。
 
 
しかしnoteの情報よりも深く掘り下げたいと感じた筆者は、鈴田氏にインタビューを実施させていただいた。
 

 
(以下、鈴田氏)
 
なぜ作った?どういう課題を感じていたか?
 
関西には本当の意味でスタートアップが集まれる場所が少ないなと以前から感じていたんです。行政主導のコワーキングスペースなどはすごく増えてきたのですが、コンセプトが定まっていないことが多くて、「雑多に人を集めさえすれば何かが起きるだろう」という印象があります。
 
スモールビジネスもスタートアップもどちらも変わらず尊いものではあるのですが、「町のパン屋を作りたい」という人と「このプロダクトで世界を変えたい」という人を混ぜて集めてしまってもしょうがないですよね。ちなみにこれは関西・関東は関係なく、行政主導ではどうしても起きてしまうことなんです。でも最近では、各行政もそのことに気づき始め、徐々に変わってきている印象がありますね。京都府・京都市にはその点で本当に良くしていただいております。
 
そうしたことを背景に、スタートアップに特化して機会と情報が集約する場所がなかったので、関西でそういう場所を作ろうという思いを抱いていました。前に住んでいた神戸の家が契約が終わるタイミングだったので自分も新たに住みつつ、起業家も住める場所を作ろうという思いもありました。
 
ただ、場所を作ろうと思ったのはいいのですが、すぐに物件が見つからなかったため、1週間ほど知人の家を転々としていました。さすがにずっとこの生活を続けるわけにはいかないなと思っていたところ、京都に住んでいる起業家の方に部屋を用意してもらったのが京都に滞在するようになったきっかけですね。
 
そんな考えがある中で、思いに共感していただけた方から京町家の物件を紹介していただきました。最初は大阪でやろうという考えもあったのですが、今となっては京都を拠点にして本当に良かったと思っています。
 
なぜ京都?
 
京都を拠点にしたのは偶然だったのですが、今となっては離れられない必然的な理由もあります。
 
先ほど家を放り出されたと申しましたが、実はその直前に東京に行っており、帰ってきたら出ていってくださいと言われてしまいました。私が気づかなかったのが悪いんですけどね(笑)
 
そのため、1週間くらい家がなかったので知人の家を転々としていました。さすがにずっとこの生活を続けるわけにはいかないなと思っていたところ、京都に住んでいる起業家に部屋を用意してもらったのが京都に滞在するようになったきっかけですね。
 
必然的な理由としては、京都にはスタートアップの風土が根付いているんですよ。民間で初めて組成されたベンチャーキャピタルは京都発(編集注:1972年にオムロン創業者が京都エンタープライズデベロップメントを設立)ですし、任天堂や日本電産、ワコールなど大企業も多い。大学も京大・同志社・立命館など様々にある。さらに行政の方々もスタートアップフレンドリーだった。
 
そんな考えがある中で、知り合い経由で京町家の物件を紹介していただけました。最初は大阪でやろうという考えもあったのですが、今となっては本当に京都を拠点にして良かったと思っています。
 
今は理想像から見るとどれくらいの完成度?
 
現状は場所を作って人を集めているくらいなので、まだまだ3割くらいですかね。今は創業間もないスタートアップが入居していますが、ここから大型調達をしてユニコーンを作る起業家が出てくるまでやらないといけないと思っています。
 
入居している起業家と、訪問者との間で提携や投資は発生した?
 
業務提携や投資はまだないのですが、プロジェクトが発生した事例はいくつかあります。ご存知の方もいるかもしれませんが、NFT福袋VeryLongAnimals(VLA) は町屋がきっかけとなってプロジェクトのメンバーが出会っています。
 
VLAに関しては、発起人の河さんがVLAをやる前からウチによく遊びにきてくれていて。ウチにはTRUST SMITHの安藤さんもよく来てくださっていて、そこで出会ってトントン拍子で事が進んでいったようです。これからも、志の高い人たちが出会って何かを生み出す場所にしていきたいです。
 
その熱量はどこから来るのか?
 
自分も世界を前に進めることになんらかの形で関わりたいと思って、まずはアクセラを開催するなどして動き始めました。でもやっているうちに、これは自分にしかできないなと思ったんです。
 
東京で同じことをやっても大したインパクトはありません。すでにやっている人がいるので。でも関西で本気でやっている人は誰もいないし、僕がやるかやらないかで世界が変わるとさえ思っています。そこまで大きな変数を動かせることほど面白いことはないですし、それでいて起業家から感謝もされるし、起業家の先にいる消費者からも間接的に感謝される。私はこれに使命を感じています。
 

 
京町家のインキュベーション施設では、スタートアップ起業家や長期インターンを志望する学生、エンジェル投資家、経営者など幅広く歓迎しているようだ。興味を持った方は鈴田氏(Twitter)にDMしてみてはいかがだろうか。