VCにバリュエーションについて尋ねられたらどう答えるか

VCにバリュエーションについて尋ねられたらどう答えるか

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起業家にとって資金調達のプロセスで最も難しいことの一つは、「情報の非対称性」を持つ人々から資金を調達しようとすることです。

VCは何千件ものディールを見ているのでそれらを通して価格感を得ており、市場がどのようにディールを評価しているかを見極めることができます。

起業家としては、あらゆる価格を知っているディーラーのところに車を買いに行くのと同じくらい威圧的なものに感じるかもしれません。

そこで、スタートアップでのバリュエーションの話し方を書いて、投資を検討している人が何を考えているのかを少しでも理解してもらえるような記事を書こうと思いました。もちろん、車と違って、各スタートアップを直接比較することはできませんので、これらは情報格差を均等にするためのいくつかの一般的なガイドラインのようなものです。

あなたの最後のラウンドのポストバリュエーションはいくらだったか?(そして、どれくらい資金調達したか?)

VCから、前回のラウンドでどれくらいの資金を調達したのか、ポストバリュエーションはいくらだったのかを聞かれることはよくあることです。ファウンダーの中には、このような質問をされると、何か秘密を共有するような気がして、最終的には自分が損をするのではないかと不安になる人もいると思います。

しかしこれらの質問は、あなたの最終的な成功には関係ありませんし、ぶっちゃけた話、ほとんどのVCは、いずれにせよこういった情報がすべて掲載されているPitchbookのようなデータベースにアクセスすることができます。

では、なぜVCはあなたに質問するのでしょうか?

まず第一に、VCは「適合性(fit)」を探っています。

典型的なシード/A/Bラウンドのファームと話をしている場合、彼らは投資先の会社のオーナーシップターゲットを持っていることが多いです。彼らの資本と時間には制約があるので、多くの場合、彼らが最も確信を持っている企業に集中的に投資をしようとします。

よくあるようにVCが最初の小切手で$5Mを投資し、そのターゲットが20%以上を所有するといったとき、そのディールはプレで$15M〜$20Mといったものになることが大半です。

もしあなたがプレで$40Mというバリュエーションで資金調達に動いているのであれば、彼らのストライクゾーンから外れているかもしれません。

多くのVCの投資は以下のように曲線状に分布(distribution curve)します。

・少しのアーリーステージディール(たとえば、プレ$6M〜$10Mで$1.5M〜$3Mを投資)

・大半の「ダウンザフェアウェイ(down the fairway)」ディール(プレ$15M〜$25Mで$4M〜$5Mを投資)

・ほんの少しのレイターステージディール(プレ$30M〜$40Mで$8Mから$10Mを投資)

もちろん、より価格に敏感で、より早い段階で投資をしたいと考えている小規模なファンドや、より多くの資本を投入してより高い価格でディールしたいと考えているファンドもあるので、VCの "規範 "とは何かを理解することは重要です。

VCが判断しようとしている2つ目のことは、前回の評価額が明らかに評価されすぎだったかどうかということです。

もちろん、バリュエーションは見る人によって変わってくるものではありますが、もしそのVCがあなたの最終ラウンドのバリュエーションがあまりにも高かったと考えているならば、彼らは今あなたのバリュエーションを下げて話をしようとするよりも、むしろ丁重にパスする可能性が高いでしょう。

VCは「ダウンラウンド」をひどく嫌うし、多くのVCは「フラットラウンド」すら好みません。それにはいくつかの単純な理由があります。

まず第一に、VCは、他の案件で一緒に仕事をしなければならない可能性が高いため、前ラウンドのVCを怒らせたくないからです。また、他の株主すべてを困らせることから始まるような株主にはなりたくないというのもあります。

しかし、もう一つ非常に合理的な理由があります。

VCがフラットまたはダウンラウンドの価格を設定した場合、それは経営陣が希薄化しすぎていることを意味しています。会社を十分に所有していなかったり、十分なアップサイドがあると認識していない創業者や経営陣は、いずれ次の会社のことを考え始め、その会社に留まる可能性が低くなることをVCたちは知っています。

つまりVCは、創業者が初日から不満を感じていても他に選択肢がないために資金を受け取るようなディールはしたくないのだ。

VCがフラットラウンドをして、創業者が「本当に気にしていないです!前回ラウンドのバリュエーションは明らかに高すぎましたから」と言ったという話はどこのVCにもあります。

これらのケースではほぼ100%、創業者は1年後(そして2年後、4年後)にフラストレーションを吐露しています。

それは、「私たちが他のVCに会社の本当の価値を見てもらうのに非常に苦労していたときによくぞおいでくださりました。ありがとうございます。」といったものではなく、もう少し口調はソフトなものの、次のようなものになるでしょう。

「他の選択肢などなかったときに、お前たちは私たちを利用したんだ。」

VCが次のダウンラウンドやフラットラウンドをパスしたくなるのは、このハードな記憶があるからです。常に評価すべき素晴らしいディールが市場にはあるのに、傷つく可能性のあるディールを結ぶ理由なんてあるでしょうか?

「これまでいくら調達したか」という質問はたいてい、これまでの資金を資本効率良く使っているかどうかをVCが判断しようとするものです。もしあなたが多額の資金を集めていて、あまり進歩を見せられない場合は、過去のことを説明するのが明らかに難しくなります。

「前回のラウンドでいくら調達したのか」「前回のラウンドのポストバリュエーションは?」といった質問の答え方をファウンダーにアドバイスするとしたら、データから始めようと伝えます。

もし、潜在的な「問題」(調達額が多すぎたり、価格が高すぎたり)がないと認識しているのであれば、これはたいしたイベントにはならないでしょう。

あなたがいくつかの問題を抱えているかもしれないことを認識しているか、もしくはあなたが問題を抱えているかもしれないというフィードバックを受けている場合は、問われたときに、問題の前に立ちはだかるための一連の話術を身につけておくのが賢い戦略です。

バリュエーションにどんな期待を抱いているか?

この資金調達のプロセスで、VCがあなたの予想バリュエーションについて質問することは珍しくありません。VCは「価格発見」モードにあり、あなたがVCのバリュエーションレンジに入っているかどうかを知りたがっているのですから、正当な質問です。

タフになりますが、以下のことを私はお勧めします。

・ほとんどの場合において、実際の価格を言わないこと

・アンカリングすること。VCに実際の価格を言わずに一般的なレンジを植え付けることです。これを "プライス・シグナリング "と呼んだりします

・礼儀正しく以下のように言うことで、VCにその場を回してもらうこと

「あなたは当社の一般的な評価額を知っているはずですが、最近の市場は当社のようなラウンドをどう評価していると思いますか?私たちは1~2年に一度しか資金調達をしていないので。」

なぜほとんどのファウンダーは価格を提示すべきではないのでしょうか?

まず第一に、価格を指定するのは「買い手」の仕事であり、もしVCが支払う予定の価格よりも低い価格であったり、高すぎる価格でVCがプロセスから手を引いてしまうようなら価格を提示したくはないでしょう。

ではなぜアンカリングするのでしょうか?

自社の一般的な期待値のプライスシグナルをVCに伝えなければ、VC自身で認識している価値と比較してあなたが現実的な期待値を想定しているかを知るのが難しいですし、彼らに勝手にあなたのバリュエーションの期待値を想像されて、交渉が終わるよりは交渉を続けたいはずです。

どんな素晴らしい交渉も、相手の期待値をアンカリングして、相手の反応を試すことから始まるのです。

バリュエーションについてどのように話すかは、もちろん、あなたの事業の業績や他の投資家からの需要の大きさによって変わってきます。

「チャートの右上」企業は除くとして、最後の資金調達以来、良好な進展を遂げている一方で次のラウンドで爆発的な飛躍をするわけではない企業の場合は、あなたの期待について尋ねられた場合、以下のような答えを検討しておいてもよいかもしれません。

  • 前回のラウンドはポストバリュエーションで$17Mでクローズし、$3.5Mを調達しました。
  • これは20ヶ月前にクローズしましたが、それから大きな進展があったと感じています。
  • このラウンドで$5M~$7Mの資金調達を希望しています。
  • VCがどのような価格でラウンドするかは大体はわかっているので、通常の予想のレンジ内に収まると考えています。
  • しかし、当然のことながら、正しい評価額は市場に委ねるつもりです。我々は2年に1度しか増資をしないので、市場は我々よりも良い感覚を持っているでしょう。
  • 私たちは、長期的に最適なVCと、最も価値を創造してくれると思われる人物を探しています。最高価格を求めているわけではありません。しかしもちろん、フェアバリューを求めています。
  • 私たちのようなステージの企業のバリュエーションについて、どのように考えていますか?(これはフィードバックを求めています/あなたの回答を待っています)

上記では価格を提示せずにいくつかのシグナルを設定しました。VCはこれを以下のように聞きます。

  • 前回のラウンドの$17Mよりも高い価格でなければならない。それは20ヶ月前のことで、創業者は明らかに素晴らしいプロセスを経てきていると言った。(予想より高い価格を期待できるキーワード)
  • 彼女は$5M〜$7Mを調達しており、この額のバリュエーションのレンジを知っている。20~25%の希薄化を想定した場合、プレでのバリュエーションは$20M~$28M(ポストでは$25M~$35M)になることを示唆している。多分、彼女は少しでも高くしたいのだろう。低い価格には確実にしたくないはずだ。
  • 彼女は私に、最高価格でディールをしようとしているわけではないと言っている。私はそれを盲信するほどうぶではない。すべての起業家は、合理的な最高価格でVCのもとに向かうので、私は少なくともできるかぎりの交渉はする必要がある。 しかし、それが公正な範囲内であれば、彼女は断固として最高価格を提示することで私と心理戦をするなんてことはしないだろう。

既存の投資家はこのラウンドに参加するか?

これもデリケートです。新規投資家はそれぞれ、あなたのパフォーマンスに関する最も非対称的な情報を持っているのは、前のラウンドの投資家であることを知っています。

彼らは、あなたのデータや競合他社との相対的な状況をすべて把握しているだけでなく、あなたの経営陣がどの程度のパフォーマンスを発揮しているのか、あなたが優れたリーダーであるかどうかについても、しっかりとした見解を持っています。

新規の投資家は、既存投資家がこのラウンドに多額の投資を継続し、前回ラウンドと同じ価格で投資を行う意思があるかどうかを知りたいと思う一方で、彼ら(新規投資家)は所有権の目標値を達成するために十分なラウンドを投資したいと考えており、既存の投資家には完全なプロラタ投資をしてほしくないと思っているかもしれません。

資金調達する前に既存の投資家と会話をして、彼らが何を考えているのかを把握しておくか、最低限、それを察する感覚は持っておいた方がいいです。

既存の投資家のほとんどが支持してくれているが、新たな外部のリード投資家が欲しいと考えていると仮定して、VCに対しては以下のような回答をすることをおすすめします。

  • 既存の投資家はもちろん、このラウンドに参加したいと考えています。彼らはおそらく、プロラタ投資をしたいと思っているでしょうし、中にはもう少し多くの投資を希望する人もいるかもしれません。
  • 新規投資家にはオーナーシップの目標値があることを知っています。私はそれを満たすことができると確信しています。新規投資家のニーズと以前の投資家とのニーズの間で微妙な関係になった場合、もちろん私は当然ながら既存の投資家に参加できないとは言えないが、彼らと協力して投資サイズを合理的なものに保つことができると確信しています。

VCはこれを以下のように聞きます。

  • 既存の投資家はこの新規投資を支持している。最終的には電話で確認することになるが、彼らが支持してくれていることを前提に投資を続けることができる。
  • 将来的にもっと大きな資金調達をすれば、この起業家はプロラタを行使するなと言って私を騙そうとはしないだろう。なぜなら私たちが参加する際に既存の投資家を丁寧に扱っているから。
  • この起業家は十分に洗練されている。資金調達とは新規投資家と既存投資家の両方のニーズを満たす必要があるダンスであることを知っているから。彼らは私と一緒に動いてくれるので、私の目標値に近づけることができそうだ。

いつバリュエーションの期待値を提示すべきか?

いろんな種類のラウンドがあり、場合によっては提示価格だけでもいい場合もあります。

  1. ストラテジック(業界の投資家対VC) なぜか戦略投資家の多くは、ラウンドをリードすることを好まず、価格を提示することも好みません。これは全ての戦略投資家に当てはまるわけではありませんが、多くの戦略投資家、特にVCの経験が浅い投資家に当てはまります。価格がすでに存在していれば、彼らがディールをより良く評価するのに役立つのです。多くの場合、彼らは価格を提示するよりも、「イエス/ノー」の判断の方が得意です。 あなたが評価額を提示する場合は、類似企業がどのように評価されているかの根拠を示す必要があります。他の機関投資家(あなたのインサイダーを含む)が、そのラウンドで同じ価格を支払っていることを知ることは助けになります。
  2. 多くの投資家 1-2社の新規投資家を当たる場合と比較して8-10社を当たる場合、価格を提示するのはより簡単になったりします。多くの投資家から資金を調達している理由の一つは、強力なリード投資家(例えば$20M)を見つけるのは簡単ではないが、多くの投資家が小規模な小切手(例えば$2M〜$3Mずつ)を喜んで書いてくれるということです。 あなたがとても成功しているので、誰もが投資したいと思っているという正反対の状況になる可能性があります。 いずれの場合も、価格目標を持つことは、あなたがモメンタムを得るのに役立ちます。

情報テーブルを逆転させる

最後のポイントです。

正しい方法で行われた場合、各VCミーティングは、あなたが調達しているタイミングでの市場を投資家がどのように見ているかについてのフィードバックを得る絶好の機会であり(バリュエーションは全体的な資金調達マーケットに基づいて変化します)、またVCからあなたのバリュエーションについてどのように考えているかを聞けたり、問題があるかどうかを知らせてくれたりします。

以下のように、丁寧に聞いてみるといいかもしれません。

  • あなたのファームは、所有権のターゲットレンジがありますか?
  • あなたのファームは、よくリード投資、そしてフォロー投資まで行っていますか?
  • 好んで共同投資をしているファームはありますか?
  • 私たちの資金調達サイズは合理的なものに思いますか?
  • 私たちがいま対処できるような、バリュエーション上の懸念点はありますか?

質問を考える上でのあなたの目標は、VCからシグナルを得ることです。

資金調達は双方向のプロセスであり、優秀なVCがあなたに質問をするのと同様に、あなたにもあなたの方向性を示す質問をする権利があることを忘れないでください。

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