新しいテクノロジーに対するよくある誤解

公開日
2022/05/15
新しいテクノロジーには、おもちゃみたいに見えたり、高価だったり、粗悪だったり、明確な用途がなかったり、いくつか欠点を抱えていることが多いです。
 
新しいテクノロジーがどのように発展していくかを予測するためには、より深く掘り下げることが重要です。ここで、新しいテクノロジーが誤解されがちな点をいくつか挙げてみましょう。
 
「ただのおもちゃ」
これは、電話・パソコン・ソーシャルメディアといった画期的なテクノロジーが生まれた頃に、実際にされていた誤解です。
 
電話が発明されたとき、ウエスタンユニオンなどの既存企業は、「音質が悪いし、近距離でしか使えない」と言ってこれを無視しました。彼らは、そういう欠点がどれだけ早く改善されるかを想像できなかったのです。
 
また、初期のブログやTwitterのようなサービスは、ニッチな技術トピックを議論したり、個人の日常を共有するために使われることがほとんどでした。多くの人々は、それらをおもちゃや一時的な流行とみなしました。今日では、何十億もの人々が、主要な情報源としてソーシャルメディアに頼っています。
 
ソーシャルメディアは、「ランチに何を食べたか」を共有するための手段として登場した、グローバルなメディアネットワークを構築するためのテクノロジーだったのです。
 
「高すぎる」
今日では、電気自動車、宇宙旅行、VRヘッドセットなどについて、この言葉を耳にすることがあります。ハードウェアは、リリース当初は高いことが多いです。しかし、製造ノウハウの蓄積と規模の経済が働きはじめると、時間とともにコストは急速に低下します。
 
 
ハードウェアは安くなっただけでなく、高性能になりました。最新のiPhoneは120億個以上のトランジスタを搭載しており、これは1995年のPentium PCのおよそ3,500倍にあたります。現在、世界中の成人の80%以上のポケットの中には、インターネットに接続されたスーパーコンピュータ、すなわちスマートフォンが入っているのです。
 
 
20年前には1億ドルかかっていたヒトゲノムの塩基配列決定が、今では1,000ドル以下でできるようになり、多くの人にとって手が届くものになりました。ラリー・ペイジが言ったように、「ハードウェアの価格は、最終的に商品材料の投入コストに近づく」のです。
 
 
「何か問題を解決しているのか?」
多くの画期的なテクノロジー、特にコンピュータに関わるテクノロジーは、直接的に問題を解決するわけではありません。その代わりに、新しい可能性を解放し、それによってユーザーや開発者、クリエイターが問題解決できるようにするのです。
 
初期においてパソコンは、主にゲームを作ったり、ハッキングをするためのマニア向けなものでした。高価なおもちゃといったところでしょうか。しかしその後、その初期の熱狂的なファンが、ワープロ、スプレッドシート、ウェブブラウザなどを開発したのです。
 
スティーブ・ジョブズは、コンピュータを「頭脳のための自転車(a bycycle for the mind)」と呼びました。自転車が人間の運動効率を高めるように、コンピュータは人間の知性と創造性を高めるのです。
 
私たちと高等霊長類との違いは、私たちが道具を作る人間であることだと思います。 地球上のさまざまな種の運動効率を測定した研究を読んだことがありますが、最もエネルギーを使わずに1km移動するのはコンドルでした。そして人類は下から3分の1というかなり印象の悪い結果になりました。万物の霊長としては、あまり誇れる結果ではありません。 しかしそこで、サイエンティフィック・アメリカン誌の誰かが、自転車に乗った人間の運動効率をテストすることを思いつきました。すると、自転車に乗った人間はコンドルを吹き飛ばし、完全にトップから脱落させたのです。 これこそが、私にとってのコンピューターなのです。コンピュータとは、私たちがこれまでに発明した最も優れた道具であり、私たちの頭脳にとっての自転車に相当するものなのです。 ━━━ スティーブ・ジョブズ
 
Webはたしかに画期的な発明でしたが、セプ・カムバーが言ったように、1989年の人々に「暮らしを良くするためには何が必要か」と尋ねたら、「ハイパーテキストを使ってリンクされた情報ノードの分散ネットワーク」と答えられることはまずなかったでしょう。
 
 
まとめると、新しいテクノロジーと出会ったら、第一印象でとどまることなく、次のように掘り下げる質問を投げかけることが重要です。
 
  • 「おもちゃのようだ」 → どれくらいのスピードで改善されるのか?
  • 「高すぎる」→どのくらいのスピードで価格が下がりそうか?
  • 「問題を解決しない」 → 新しい可能性を提供するか?
 
 
 
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
 

Chris Dixon@cdixon
Andreessen Horowitz(a16z)のGPを務め、シードおよびグロースステージの投資家として活躍している。それ以前は、SiteAdvisorとHunchという2つのスタートアップを創業し、それぞれMcAfeeとeBayに売却した。
 
2022年、ベンチャーキャピタリストの世界番付であるMidas Listで1位に輝いた。