中国の工場に1,000万円を持ち逃げされても生き残った起業家の話

公開日
2022/04/26
より良い睡眠のために、光で起こす目覚まし時計やサプリメントまで手がけるムーンムーン株式会社の竹田 浩一さんを取材しました。
 

 
ムーンムーンとはどういう会社?
 
光で睡眠リズムを整えるライトや、横向きで寝れる枕を主力商品とした、変わった切り口ながら科学的根拠を持って睡眠を改善する商品を開発・販売している会社です。
 
朝と夜、2色の光で整えるトトノエライト
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いびきや無呼吸対策に、横向き寝専用まくらYOKONE3
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創業のきっかけは?
 
私は今39歳なのですが、8歳から28歳くらいまで20年近く睡眠障害に悩んでいたことがきっかけです。
 
夜は布団に入ってから2時間は寝付けないし、寝たと思ったら2時間ごとに起きてしまったり。小学生のときは母親が高級な枕を買ってきてくれたり、寝る前にハーブティーを飲んでみたり、寝つきが良くなる体操をしてみたり。それでも治りませんでした。
 
大人になってもいろいろな快眠グッズを試していくなかで、海外で光目覚まし時計なるものが流行っていることを聞きつけました。
 
早速取り寄せて使ってみると、朝5時に寝ていたのが朝5時に起きれるようになって、夜も22時くらいに布団に入ってすぐ眠れるようになったんです。
 
この感動から、自分と同じような悩みを抱えている方々を助けたいと思って創業しました。
 
━━━ ご自身のお悩みから始まったとはいえ、睡眠で悩む人が多いはずというだけでは起業に踏み切れない気もするが。
 
当時は自分の20年来の悩みが解決されたという感動があまりに大きかったですね(笑)
 
それに、1社目でしっかり利益を出せていたので、良い意味で考えすぎることなくムーンムーンを創業することができました。自分のやりたいことのために1社目で稼いだお金を充てることができたのは大きかったと思います。
 
光目覚ましって、正直怪しいと感じる方もいるはず。どうやって初期の顧客を獲得した?
 
メディアを使ったPRを重点的に行っていましたね。
 
創業時は、本社のある熊本からメディアのある東京まで資料と商品を持って、何とか置いて帰ってくるみたいなことを毎月のようにやっていました。
 
すると徐々にではありますが、テレビや新聞で取り上げていただけることも増えてきて。この10年間で1,300媒体ほどに掲載していただきました。
 
ハードウェアの印象が強いが、睡眠にまつわるSaaSなどは考えているか?
 
それは社内でずっと話しています。
 
━━━ SaaS展開するとして、具体的には?
 
たとえば睡眠の質をアプリやApple Watchなどで計測し、睡眠の状態をこちらで分析し、その人に適した寝方を提案したり、他社の商品も含めた睡眠グッズを提案していきたいですね。
 
今のところ、睡眠の質を分析するアプリはあるのですが、提案まで上手くやれているアプリはないので、私たちはそこを上手く狙っていきたいですね。
 
OEM生産する上で、工場とのやりとりで苦労したことはあるか?
 
私たちの主力商品である光目覚ましは中国の工場に製造を依頼していました。
 
私たちには並々ならぬ思いがあったので、とにかく細部まで「こうやってくれ、いやこうやってくれ」と注文を繰り返したんですね。
 
途中までは相手方も一生懸命やってくれていたのですが、修正されることがあまりに多かったので明らかに嫌がっていました。
 
そんな矢先のことです。次のロットの代金を振り込んだら、「お前らみたいなうるさい会社とはやりたくない。この金はもらっておく」とブチ切れられ、支払った1,000万円だけ持って逃げられてしまったんです。
 
顧問弁護士に相談しても、「海外相手なので正直取り返すのは難しい。このお金は諦めて、切り替えて頑張っていくしかない」と言われまして。当時の僕らにとって1,000万円は相当大きいですし、主力の商品も届かない状態なので本当に困り果てました。
 
そこからは急いで他のOEM先を開拓しつつ、銀行を駆け回ってつなぎ融資を獲得しつつ、なんとか首の皮一枚繋がっていた感じです。
 
幸いなことに、他のOEM先で作っていただいた光目覚ましは完売し、何とか会社として一命を取り留めることができました。
 
いろいろありましたが、ここから先も頑張っていきたいですね。