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【全訳】ネットワーク効果の説明書:13種類のネットワーク効果

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2021/5/30 2:27
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2021/05/30
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【全訳】ネットワーク効果の説明書:13種類のネットワーク効果
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PayPal。Microsoft。Facebook。Uber。Twitter。Salesforce。これらは世界で最も影響力を持つ重要な企業の一例です。
 
各企業は多くの点で非常に異なっていますが、ある一つの特性においてはこれらすべての企業を定義でき、そしてその特性はこれらの成功の根底にあります。
 
その特性とは、ネットワーク効果です。
 
これまで述べてきたように、ネットワーク効果は、デジタルの世界において防御力を高めるための最も優れた方法です。コアビジネスモデルに強力なタイプのネットワーク効果を組み込んだ企業は勝利し、大きな成功を収める傾向にあります。
 
先日発表した3年間の調査結果によると、1994年にインターネットが普及して以来、テック企業が生み出した価値のうち70%はネットワーク効果で説明できることがわかりました。ネットワーク効果を持っている企業は少数派であるにもかかわらず、そうした企業が価値の大部分を生み出しているのです。
 
真にインパクトのある会社を作りたいと考えている創業者にとって、これほど価値のある専門分野はありません。
 
しかし、ネットワーク効果についてはほとんど記事がないため、誤解が多いのも事実です。多くの人がネットワーク効果について語っていますが、ネットワーク効果とは何か、ネットワーク効果はどのように機能するのか、ネットワーク効果にはどれほど種類があるか、ネットワーク効果をどのように構築し、どのように維持していくのかなど、その複雑さを理解している人はほとんどいません。さらに、ネットワーク効果に関する貴重なプレイブックを共有しようとする企業はほとんどないため、ほとんどの創業者はネットワーク効果を察知してもどの種類なのか認識できず、ましてやその複雑な内部構造を理解することはできません。
 
以下に、当社が作成したネットワーク効果マップとそれに付随するマニュアルを紹介します。このマップは常に進化し続けており、変更や更新を繰り返しています。現在のところ、13種類のネットワーク効果を確認しており、それぞれに独自のプレイブックを用意しています。このマニュアルは、ネットワーク効果をめぐる議論の出発点となることを目的としています。このマニュアルを読むだけでなく、関連資料もぜひご覧ください。
 
  • NFXバイブル:ネットワークエフェクトに関する重要な概念や用語を解説したもの
  • NFXアーカイブス:ネットワーク効果やネットワークサイエンスについて書かれた最も洞察に富んだ記事を集めたもの
 

ネットワーク効果の基礎知識

 
ご存知のように、ネットワーク効果の簡単な定義は「企業の製品やサービスが、利用者の増加に伴ってより価値の高いものになる」というものです。
 
この定義からすると、ネットワーク効果は非常にわかりやすいもののように思えます。
しかし、じっくり考察してみると、ネットワークの種類によって働き方が大きく異なることに気がつきます。そのため、すべてのネットワーク効果が同じというわけではありません。あるものは他のものよりも強く、より多くの価値を生み出す傾向があります。
 
ネットワーク効果は、ブランド、組み込み、規模と並んで、デジタル時代に残された4つの障壁の1つです。この4つのうち、ネットワーク効果は圧倒的に強い障壁です。これまでに私たちは、5つの大きなカテゴリーに分類される13種類のネットワーク効果を認識しています。
 
以下のマップでは、さまざまな種類のネットワーク効果をテキストで表示し、カテゴリーを色で分類しています。マップの中央に向かえば向かうほど、ネットワーク効果は強力でシンプルなものになります。また、他の3つの障壁も右側に示しています。
 
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私たちは、このテーマをより明確にするために、長年にわたってこのマップを作成してきました。しかし、深く見ていく前にいくつか指摘しておきたいことがあります。
 
  1. ここに示したマップは、議論と理解のための出発点であり、絶対的な真実として受け止められるべきものではありません。これは、創業者が強力な力を認識し、それを利用して偉大な企業を作るのに役立ててもらうために作っている私たちのメソッドの1つです。なぜなら、強力な競争力のあるモートを築こうとしている創業者にとって、ネットワーク効果を認識し理解する能力は非常に重要だからです。
  1. ネットワーク効果はバイラル効果とは異なるものです。ネットワーク効果とは防御力を高めることであり、バイラル効果とは新規ユーザーを無料で獲得することです。この2つは目的もプレイブックも全く異なります。
  1. 同じ企業でも、複数のネットワーク効果を同時に発揮していることがありますが、これは各種類のネットワーク効果は排反ではないということです。ネットワーク効果を色とすると、あなたの会社はアート作品のようなものです。あらゆるパレットに精通していると、絵を描くときに役立ちます。
 
それでは、マップを見てみましょう。以下では、「ネットワーク効果マップ」に掲載されているさまざまなネットワーク効果について、関連する例を挙げながら説明します。
 
 

直接的ネットワーク効果

 
ネットワーク効果マップで青く表示されているのは、1つ目のカテゴリーである「直接的ネットワーク効果」です。最も強力で単純なネットワーク効果は直接的なもので、あるプロダクトの使用量が増えると、直接的にそのプロダクトのユーザーにとっての価値が高まります。
 
直接的ネットワーク効果が初めて確認されたのは1908年まで遡ります。当時のAT&T会長のセオドア・ベイルは、任意の地域において他の電話会社より多く顧客を獲得してしまえば、AT&Tに対抗するのがいかに難しくなるかに気づきました。彼は、株主への年次報告書の中でこの点を次のように指摘しています。
 
「同じ地域に2つの交換機があるという状態は...永続しえません。1つの電話回線ですべての相手と連絡が取れるなら、2つの電話回線を使う必要はないのです。」
 
ベイルは、AT&Tの価値の大半は電話技術ではなく、そのネットワークに由来することに気づきました。当時においてこれは革命的な洞察でした。技術的には新しい電話機の方が明らかに優れていたとしても、それを使って友人や家族に電話をかけることができないのならば、誰も新しい電話機を欲しがらないということをこれは示していました。
 
言い換えると、より優れたプロダクトがあったところで、ネットワークに欠けている価値を補うには至らないということです。新規参入者がユーザーに同等の価値をもたらすためには、同等のネットワーク効果を実現しなければならないのです。ベイルの言葉を以下に引用します。
 
「相手に接続されていない電話機は、科学機器でもなければ、おもちゃでさえありません。そんなものは世界で最も役に立ちません。電話機の価値とは、相手の電話機との接続に依存しており、接続数が増えれば増えるほどそれだけ価値も増大します。」
 
以下は、1908年の年次報告書の該当ページ全文です。ベイルが「ネットワーク効果」という言葉を使っていないのに気づくと思いますが、彼が説明している概念はネットワーク効果のことです。この言葉自体は後になって出てきたのです。
 
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ベイルが直接的ネットワーク効果について述べてから72年後、イーサネット規格の生みの親であるロバート・メトカーフは、ネットワークの価値は接続されたユーザーの数の2乗(N^2)に比例すると提唱し、この概念をさらに発展させました。これは現在、メトカーフの法則として知られています。
 
下図は、メトカーフの法則によって提唱された直接的ネットワークの基本概念を示したものです。
 
デジタルネットワークの各ノードは、上の図で表されるように、他のすべてのノードに接続されています。直接的なネットワークにノードが追加されるたびに、既存のすべてのノードに新しい接続が追加されるため、新しい接続の数(ネットワーク密度)はノード数(N2)の二乗に比例して増加します。ネットワークの価値はその密度に比例するので、ノードを追加するごとに幾何学的な割合でネットワークの価値が増加します。
デジタルネットワークの各ノードは、上の図で表されるように、他のすべてのノードに接続されています。直接的なネットワークにノードが追加されるたびに、既存のすべてのノードに新しい接続が追加されるため、新しい接続の数(ネットワーク密度)はノード数(N2)の二乗に比例して増加します。ネットワークの価値はその密度に比例するので、ノードを追加するごとに幾何学的な割合でネットワークの価値が増加します。
 
2001年、MITのコンピュータサイエンティストであるデビッド・リードはさらに一歩進んで、「メトカーフの法則はネットワークの価値を過小評価している」と指摘しました。例えば高校のサッカー部、家族の中の兄弟、同僚の中のテニスプレイヤーなど、大きなネットワークの中には、より小さなネットワークが形成されていると指摘しました。
 
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このようなつながりや、他のサブグループへの参加可能性は、ネットワークの全体的なサイズや接続密度が示すもの以上に、人々のネットワーク全体へのコミットメントをより深いものにします。このことからリードは、ネットワークの真の価値は、ユーザー数に比例して指数関数的(2^N)に増加し、メトカーフの法則よりもはるかに速いと考えました。私たちはこれをリードの法則と呼んでいます。
 
これらの法則の詳細は学術的に議論されるものの、創業者にとっては、ネットワーク効果は強力であるというオペレーション上の真理を概念化してくれる具体的な方法です。これは自然の法則なのです。
 
ひとくちに直接的ネットワーク効果といっても、その種類はさまざまです。ここでは、「物理的」「プロトコル」「個人的効用」「個人的」「マーケットネットワーク」の5つを紹介します。
 

物理的(直接的ネットワーク効果)

物理的なネットワーク効果は、物理的なノード(電話機やケーブルボックスなど)や物理的なリンク(地中の電線など)に結びついた直接的なネットワーク効果です。直接的なネットワーク効果があるだけでなく、規模や組み込みといった他の障壁を追加することもできるので、最も防御力の高いタイプのネットワーク効果です。物理的なネットワーク効果を持つ企業と競争するには、多額の先行投資と物理的な制約が課されます。
 
上の図は物理的なネットワークの形を表しており、ノードは固定電話、駅、水道の蛇口などのユーティリティ端末を、ノード間の接続は固定電話、電車の線路、水道管などの物理的なインフラを表しています。
上の図は物理的なネットワークの形を表しており、ノードは固定電話、駅、水道の蛇口などのユーティリティ端末を、ノード間の接続は固定電話、電車の線路、水道管などの物理的なインフラを表しています。
 
道路、鉄道、電気、下水、天然ガス、ケーブル、ブロードバンド・インターネットなどは、物理的な直接的ネットワーク効果を持つビジネスの例です。実際、ほとんどの物理的ネットワークはユーティリティです。つまり、勝者総取りの市場であり、独占市場に発展し、最終的には国有化されます。
 
物理的ネットワークが強い障壁を持っていることに対する何よりの証拠は、多くの物理的ネットワークが貧弱な、あるいは標準以下のサービスしか提供していないにもかかわらず、市場をリードし続けていることです。コムキャストやベライゾンを考えてみてください。なぜ彼らは米国で最も顧客満足度が低いのでしょうか?なぜかというと、放っておいても自分たちの利益に何のリスクもないからです。誰も彼らと競争することはできません。誰があれだけのケーブルを敷設する費用をかけられるというのでしょうか?そして競争相手がいないので、不満を持った顧客はどこにも乗り換えることができないでいるのです。
 
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プロトコル(直接的ネットワーク効果)

プロトコルネットワーク効果は、通信や計算の標準が宣言され、すべてのノードやノード作成者がそのプロトコルを使ってネットワークに接続できる場合に生じます。最近では、ビットコインやイーサリアムがプロトコルネットワークの例として挙げられます。プロトコルの設計者は、個々の企業、企業グループ、または委員会のいずれかです。
 
プロトコルネットワークは、通信規格や計算規格を中心に構成されており、ノード(ビットコインマイナーやビットコインウォレットなど)間のリンクの基盤となっています。
プロトコルネットワークは、通信規格や計算規格を中心に構成されており、ノード(ビットコインマイナーやビットコインウォレットなど)間のリンクの基盤となっています。
 
イーサネットはプロトコルネットワーク効果のもっと伝統的な例として挙げられるでしょう。ロバート・メトカーフが3Com社を設立した際、彼はDEC、インテル、ゼロックスを説得し、ローカルコンピュータネットワークの標準プロトコルとしてイーサネットを採用させました。イーサネットの標準速度は毎秒10メガビット、アドレスは48ビット、グローバルな16ビットのイーサタイプ型タイプフィールドを備えています。
競合する独自のプロトコルも存在しましたが、イーサネットが引き離してシェアを拡大し始めると、イーサネットに対応したプロダクトが市場にあふれました。これにより、相対的な性能にかかわらず、イーサネットの価値は複利で上がり、競合他社の価値は下がっていきました。やがて、イーサネットポートは現代のすべてのコンピューターの標準機能となりました。
 
一度採用されたプロトコルをリプレイスすることは非常に困難です。
ファックスのプロトコルは今でも使われているし、TCP/IPのプロトコルも(今ではもっと優れたプロトコルが存在するにもかかわらず)使われていることを考えてみてください。
 
また事実として、他の直接的ネットワーク効果ではネットワークの開発から得られる価値のほとんどを獲得できる一方で、プロトコルの開発者はその価値の大半を獲得できません。
 
プロトコル開発者が、トークン対応ネットワーク内のトークンのかなりの割合の所有権を維持する場合や、アドレッシング、アイデンティティ、ウォレット、ネーミング、優先順位付けなどの中央管理を維持しつつネットワークにプロトコルを採用してもらうことができれば、プロトコルネットワークにおけるこのような価値の分配は変えることができます。
 
このような採用戦略の成功は、多くの場合、テクノロジーというよりもマーケティング、ソーシャルエンジニアリング、市場のニッチの選択にかかっています。Betamaxの方が間違いなく優れた規格だったにもかかわらず、VHSがBetamaxに勝ったのはそれが理由です。また、他の多くのデジタル通貨に比べて運用コストが高く、取引量も少ないビットコインが、デジタル価値の貯蔵庫として成功したのもこれが理由です。
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個人的効用(直接的ネットワーク効果)

個人的効用ネットワークには、2つの目立った特徴があります。1つ目は、ユーザーの個人的なアイデンティティが当該ネットワークに結びついていることであり、Facebook Messengerのようにユーザー名が実名に結びついていることが多いです。2つ目は、ユーザーの個人的または職業的生活において毎日欠かせないものであることです。
 
上の図では、個人的効用サービス(リンク)で結ばれた人々(ノード)のチャットバブルでノードが表現されています。個人的効用ネットワークのノードは、それを利用している人々の現実のアイデンティティと結びついており、特に、ローカルなサブグループが多いため、ネットワークの密度が高いです。これはリードの法則を引き起こすので、個人的ユーティリティネットワークの価値は最大2^Nの割合で上昇する可能性があります。
上の図では、個人的効用サービス(リンク)で結ばれた人々(ノード)のチャットバブルでノードが表現されています。個人的効用ネットワークのノードは、それを利用している人々の現実のアイデンティティと結びついており、特に、ローカルなサブグループが多いため、ネットワークの密度が高いです。これはリードの法則を引き起こすので、個人的ユーティリティネットワークの価値は最大2^Nの割合で上昇する可能性があります。
 
人々は個人的効用ネットワークを利用してコミュニケーションや交流を行っているため、オンライン上にいないことやネットワークに参加しないことは急激なダウンサイドになります。ネットワークから離脱すると、日常生活において大きな障害となり、人々の重要な個人的または仕事上の関係を大きく損なう可能性があります。
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個人的(直接的ネットワーク効果)

個人のアイデンティティや評判がプロダクトに結びついている場合、個人的ネットワーク効果が活躍します。個人的ネットワークに参加している人は、実生活で知り合った人に影響されてネットワークに参加していることがよくあります。現実の世界で知り合った人たちが、自分のアイデンティティや評判を保つためにみんな同じプロダクトを使用している場合、自分がそのネットワークに参加すれば、(自分にとって)大きな付加価値が得られます。
 
個人的ネットワークは、個人のアイデンティティとレピュテーションに関わり、各ユーザーのペルソナを他のユーザーのペルソナと結びつけます。それぞれのノードは、潜在的なオーディエンスメンバーであると同時に、他のすべてのノードのための追加的なコンテンツプロデューサーでもあります。
個人的ネットワークは、個人のアイデンティティとレピュテーションに関わり、各ユーザーのペルソナを他のユーザーのペルソナと結びつけます。それぞれのノードは、潜在的なオーディエンスメンバーであると同時に、他のすべてのノードのための追加的なコンテンツプロデューサーでもあります。
 
個人的ネットワークは、主に2つの点で個人的ユーティリティネットワークと異なります。前のセクションで説明したように、個人的ユーティリティネットワークは、通常、実行する必要のあることに使用されます。ユーザーにとってはかなりの実用性があります。第二に、個人的ユーティリティネットワークは、一般的に、公共の場でのコミュニケーショ ンというよりもむしろプライベートなコミュニケーションのためのものです。これに対して個人的ネットワークはそれほど不可欠なものではありません。使うのをやめても日常生活に大差はないでしょう。
FacebookやTwitter、(就職活動をしていない場合の)Linkedinのようなネットワークは、通常、日々の生活に欠かせないものではありません。
 
しかし、個人的ネットワークはそれでもかなり強力です。FBやLinkedInがある今、あなたは他の友人ネットワークやプロフェッショナルネットワークに参加するのに必死な状況ではありません。とはいえ、両方とも使うのをやめても日常的には問題がないのも事実です。
 
あなたと関係が深い人に「お母さんを空港に迎えに行くのを忘れないでね」とインスタントメッセージを送るのと、ソーシャルメディアにお母さんが参加したというステータスアップデートを投稿するのとでは違いがあります。どちらの場合も、あなた自身のアイデンティティがコミュニケーションに結びついており、オーディエンスとはあなたは個人的につながっています。しかし、一方はプライベートなneed-to-haveであり、もう一方はパブリックなnice-to-haveです。
 
個人的ネットワーク効果は、人とのつながりを築きたいという対人的、部族的な衝動から生じるものです。これは、友人や同僚、隣人もそのネットワークの一員だからネットワーク(Facebook、LinkedIn、あるいは宗教など)に参加して、そこに留まり続けるよう促してくる衝動なのです。個人的ネットワークにおけるユーザーの「ソーシャルグラフ」は、通常、生身の人間関係と密接に対応しています。
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マーケットネットワーク(直接的ネットワーク効果)

マーケットネットワークは、個人的ネットワークのアイデンティティとコミュニケーションの側面に、トランザクションのフォーカスと目的というマーケットプレイスの特徴を組み合わせたものです。通常、マーケットネットワークは、オフラインで既に存在するプロフェッショナルのネットワークを強めることから始まります。以下に示すように、ノード間の関係が直接的であることから、マーケットネットワークは直接的ネットワーク効果の一形態であると考えられます。
 
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よく混同されますが、マーケットネットワークは2サイドマーケットプレイスとはまったく異なります。HoneyBookやHouzzのような会社をマーケットプレイスだと思っている方は多いですが、そうではありません。実際には、個人的な直接的ネットワークと2サイドマーケットプレイスの両方の主な要素を兼ね備えたマーケットネットワークであり、2サイドではなく複数サイドであり、加えて専用のSaaSワークフローソフトウェアもあることが多いです。マーケットネットワークの詳細については、このテーマに関する私たちの記事をご覧ください。
 
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2サイドネットワーク効果

ネットワーク効果の2つ目の大きなカテゴリーである2サイドネットワーク効果は、学術的には「間接的ネットワーク効果」と呼ばれることが多いです。しかし私たちは、この呼び方は誤解を招くと考えています。2サイドネットワークには、直接的なネットワーク効果と間接的なネットワーク効果の両方が存在するからです。
 
2サイドネットワークを他と違ったものにしている明らかな特徴は、2つの異なるクラスのユーザーが存在することです。それは供給サイドのユーザーと需要サイドのユーザーです。彼らはそれぞれ異なる理由でネットワークに参加し、相手側に補完的な価値をもたらします。
 
2サイドネットワークにおいて、供給サイドのユーザーが新たに加わるにつれて、需要サイドのユーザーにとってネットワークの価値は直接的に高まり、その逆もまた同様であることは比較的簡単に理解できます。例えば、eBayのような2サイドマーケットプレイスでは、新しい売り手(供給サイドのユーザー)が1人増えるごとに、商品の供給量や種類が増え、買い手(需要サイドのユーザー)の価値が直接高まります。同様に、売り手にとっても新しい買い手は潜在的な顧客になります。
 
同一サイドのユーザーどうしの関わり方はもっと複雑です。ほとんどの場合、同一サイドのユーザーは、お互いに直接価値を引き下げます。例えばeBayでは、コアな売り手どうしの競争は激化します。ラッシュアワーにUberの乗客が増えると、サージプライシング(訳注:需要が急増すると急激に価格が上昇する料金体系)が行われます。どちらも負の直接的同一サイドネットワーク効果の例です。
 
一方で、間接的なベネフィットは、そうした直接的なマイナスを上回る結果となるのが普通です。マーケットプレイスに多くの売り手がいるということは、買い手を惹きつけてその場に留めます。そしてこれは、たとえより効率的な価格で販売しなければならないとしても、最終的には売り手にとってより価値のあることなのです。買い手側でも同じことです。
 
2サイドネットワークのこうした間接的な効果は、歴史の中で発見されるのを繰り返してきました。例えば、1600年代後半には、あらゆるバイオリン職人はみんなベニスの同じ通りに移動してバイオリンを売っていました。競合するバイオリン販売業者が近くにいることで販売価格は低下しましたが、バイオリンを求める人々が他の都市の他の通りではなく、その特定の通りに買いに来てくれることの方が重要であったため、供給業者にとってはグループでいることの価値はあったのです。
 
1980年代には、アメリカのショッピングモールでも同じようなことが起こりました。競合する販売業者を一か所に集めることで、分散している販売者よりもはるかに多く売り上げることができ、競合他社は同じ場所に集まることが普通になったのです。
 
現在、主流になっているオンラインの2サイドネットワークはこれと同じ効果を発揮していますが、物理的なロケーションではなくソフトウェアによって発揮されています。
 
また、同一サイドのユーザーが増えるたびにお互いに価値を付加することで、ポジティブな同一サイドのネットワーク効果が発生するケースもあります。これは非常に強力なもので、プロダクトを設計する際には探し求めるべきものです。これは、世界で最も永続的な2サイドネットワーク効果を持つプロダクトの1つであるMicrosoft OSに当てはまります。Microsoft OSのユーザーは、同僚や友人とより簡単にファイルを共有できるので、他のユーザーにもメリットがあります。これは(コアとなる2サイドネットワーク効果に加えて)OSに典型的に見られる、ポジティブな直接的同一サイドネットワーク効果です。
 
現在のところ、2サイドネットワーク効果には、マーケットプレイス、プラットフォーム、漸近の3種類があると考えています。
 

マーケットプレイス(2サイド)

マーケットプレイスの2サイドとは、買い手と売り手のことです。Craigslistのような成功した2サイドマーケットプレイスはディスラプトするのが非常に難しいです。彼らを崩すためには双方にとってより良いバリュープロポジションを同時に提供する必要があり、さもなければ誰もあなたのマーケットプレイスに訪れることはありません。顧客はベンダーのために存在し、ベンダーは顧客のために存在します。どちらかが一方的に離れることはありません。
 
2サイドマーケットプレイスには、上図のように2組のノードがあります。一方は供給サイドのユーザーで、もう一方は需要サイドのユーザーです。これらのユーザーは、図中の中央ノードで表される仲介者であるマーケットプレイスを介して、お互いに対して直接的な価値を提供します。
2サイドマーケットプレイスには、上図のように2組のノードがあります。一方は供給サイドのユーザーで、もう一方は需要サイドのユーザーです。これらのユーザーは、図中の中央ノードで表される仲介者であるマーケットプレイスを介して、お互いに対して直接的な価値を提供します。
2サイドマーケットプレイスでは、アプリやウェブサイト自体ではなく、ネットワークが価値の大半を提供します。これが、eBayやCraigslistのようなマーケットプレイスのプロダクトが16年経っても基本的には状況に変化がない理由です。
 
しかし、マーケットプレイスの防御力には大きな弱点があり、それは「マルチテナント」という現象から生じます。人々はeBayとEtsyで同時に商品を売ることができます。家主は自分のアパートをCraigslistとTruliaに掲載することができ、借り手は両方のマーケットプレイスをチェックして空室情報を閲覧することができます。自分のネットワークの参加者が、自分のネットワークだけでなく、競合するネットワークもペナルティなしに利用できるのであれば、新規参入者の競争を封じ込めることは難しいです。したがって、マーケットプレイスが目指すべきなのは、参加者がマルチテナントに誘惑されないように、特に供給サイドにおいて、プロダクト / サービスに大きな価値または「ロックイン」を付加するように設計することです。
 
さらに、マーケットプレイスには想像以上に様々な形があります。
例えば、メディア企業は基本的に2サイドマーケットプレイスです。オーディエンス(供給)はマーケットプレイスにやってきて、コンテンツを体験するために自分の注目を売ります。一方、広告主(需要)は、オーディエンスの注目を買います。あるメディア企業のオーディエンスが多ければ多いほど、広告主がお金を使う可能性は高くなり、さらに広告主が実際に支払う金額もそのぶん多くなります。「売り手」、つまり読者やオーディエンスは、「買い手」、つまり広告主に対して性の直接的ネットワーク効果を持ちます。その逆もまた然りで、(理論的には)広告収入が増えれば、メディア企業はより良いコンテンツを作るためのリソースを得ることができます。
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プラットフォーム(2サイド)

私たちが2サイドプラットフォームネットワーク効果と呼んでいるものは、2サイドマーケットプレイスネットワーク効果と同様に、まったく異なるメリットを期待する2つのサイドがあり、それがお互いに直接的にベネフィットをもたらすという点で似ています。違いは、供給サイドがプラットフォームでしか手に入らないプロダクトを実際にエンジニアリングすることです。
供給サイドは、プラットフォームに統合するための作業をしなければなりません。供給者が作って販売するプロダクトは、プラットフォームから独立したものではなく、プラットフォームの機能です。
 
2サイドプラットフォームには、供給サイドのノード(開発者)と需要サイドのノード(ユーザー)が存在し、プラットフォーム自体(セントラルノード)を媒介にして、お互いに価値を生み出します。また、プラットフォーム自体も双方に大きな価値を提供しています。
2サイドプラットフォームには、供給サイドのノード(開発者)と需要サイドのノード(ユーザー)が存在し、プラットフォーム自体(セントラルノード)を媒介にして、お互いに価値を生み出します。また、プラットフォーム自体も双方に大きな価値を提供しています。
 
このようなネットワーク効果を実現したプロダクトの代表例として、Microsoft OS、iOS、Androidなどが挙げられる。また、少し違いますが、Xbox、PlayStation、Wiiなどもこのタイプのプロダクトです。
 
プラットフォームがマーケットプレイスのネットワーク効果と異なるもう1つの点は、オンラインマーケットプレイスと比較して、プラットフォーム自体の機能やベネフィットが、ネットワークに対するプラットフォームの効用に大きな役割を果たすことができることです。
iPhoneやiOSを購入する人は、アプリエコシステムのためだけでなく、iPhoneのブランド、デザイン、技術的機能、パフォーマンスを求めて購入しています。XboxやPlayStationなどのゲーム機は、利用可能なゲームのライブラリだけでなく、システムのグラフィックや性能を求めて購入されるかもしれません。対照的に、マーケットプレイスでは、そのネットワークの価値に比べるとプロダクト自体の価値は非常に低いものとなります。
 
また、プラットフォームをどのように販売するかによって、両サイドの間でどれだけ普及するかが大きく変わってきます。例えば、マイクロソフトは大企業に自社のプラットフォームを販売する営業部隊を持っていますが、大学にはプラットフォームを無料で提供し、卒業するころにはそのプラットフォームを標準とさせています。
 
プラットフォームの弱点は、マーケットプレイスと同じように、プラットフォームの両サイドがマルチテナントできることです。アプリ開発者は、自分のアプリをiOSとAndroidの両方でリリースすることができます。ゲーム開発者は、自社のゲームをPlayStationとXboxの両方でリリースすることができます。同様に、ゲーマーはPS4とXbox Oneを同時に所有することができますし、DellとMacbookの両方を所有することができます。しかし、マルチテナントが無料なのが普通のオンラインマーケットプレイスに比べると、価格的に難しいのが実際のところです。そういう意味では、プラットフォームの方が有利なのかもしれません。
 
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漸近的マーケットプレイス(2サイド)

もちろん、2サイドマーケットプレイスには1つとしてまったく同じものはありません。大きな違いがあるとすれば、それは「バリューカーブ」です。これは、供給が増えるにつれて需要サイドにもたらされる価値がどのくらいのスピードで増加するか、クリティカルマスに達したときにネットワーク効果がどのくらい強くなるかを意味しています。
 
下の「バリューカーブ」の図は、マーケットプレイスのネットワーク効果を3つのサブカテゴリーに分けて、需要と供給の曲線を示しています。
 
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真ん中の直線(オレンジ色)は、CraigslistやeBayに期待されるもので、一般的には、供給サイドが成長するにつれ、比較的にそれに比例して需要サイドに価値がもたらされます。このようなマーケットプレイスは時間の経過とともに非常に強くなります。
 
それを表したのが「バリューカーブ」の図です。
 
下の曲線(黄色)は、OpenTableで見られたもので、価値が生まれるのが遅れています。OpenTableは、レストランの供給サイドを非常に高いレベルにまで成長させてからでないと、需要サイドに価値を与えることができませんでした。しかし、ひとたびクリティカルマスが達成されると、ネットワーク効果は非常に強力なものとなります。
 
上のグラフの赤い曲線で示されているマーケットプレイスネットワーク効果の3つ目のサブカテゴリーは、私たちが漸近的マーケットプレイスネットワーク効果と呼ぶものです。これは、OpenTableの遅延型バリューカーブと逆の性質を持っています。初期の供給はすぐに需要側に価値を与えますが、すぐに供給の価値は逓減し始めます。
 
漸近的マーケットプレイスの最も有名な例は、Uberのケーススタディで書いたように、UberやLyftのようなライドシェアリング企業です。ある時点までは、ドライバーが増えることで待ち時間が減り、乗客にベネフィットをもたらします。しかし、あるポイントを超えると、乗客にとっての価値は急激に逓減します。8分待つのと4分待つのとでは大きな違いです。しかし、4分待つのと2分待つのではどうでしょう?供給量が増加することで生まれる価値は、4分を超えたあたりで急激に減少します。
 
この理由から、漸進的マーケットプレイスは他のマーケットプレイスよりも競争に対して脆弱です。Uberがある地域に1,000人のドライバーを抱えていたとしても、競合他社はその半分の数で同等のサービスを提供できるかもしれません。
 
この脆弱性に加えて、漸近的マーケットプレイスは、マルチテナントの影響を非常に受けやすいです。多くの人は、LyftとUberの両方を利用して移動しており、その時々でどちらの方が安くて待ち時間が短いかを判断しています。供給サイドでも、多くのドライバーがUberとLyftの両方を利用し、料金や待機時間に応じて使い分けています。
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データネットワーク効果

データが増えることでプロダクトの価値が上がり、さらにそのプロダクトを使用することでデータが得られる場合、データネットワーク効果が発生しています。ネットワーク効果の3つ目のカテゴリーです。
 
データネットワークでは、各ノード(ユーザー)が有用なデータを中央のデータベースに送ります。集約されたデータが蓄積されると、各ユーザーにとってのデータの価値も高まります。
データネットワークでは、各ノード(ユーザー)が有用なデータを中央のデータベースに送ります。集約されたデータが蓄積されると、各ユーザーにとってのデータの価値も高まります。
 
データネットワーク効果は、多くの人(特にベンチャーキャピタリスト)が信じようとしているよりも弱い傾向があります。データが多いことが必ずしも価値につながるとは限りませんし、また、データがプロダクトの中心であっても、より有用なデータを集めることは必ずしも容易なことではありません。
 
データはさまざまな方法でプロダクトの価値を高めうるものです。ユーザーにベネフィットを与える上で、データがプロダクトの中心的な役割を果たしている場合、そのプロダクトのデータネットワーク効果は非常に強力なものになる可能性があります。一方で、データがプロダクトの一部でしかない場合は、データネットワーク効果はそれほど重要ではありません。
Netflixがあなたに番組をレコメンドするとき、アルゴリズムはユーザーの視聴データに基づいてレコメンドしています。一方で、Netflixのディスカバリー機能は、テレビ番組や映画、ドキュメンタリーなどの保有している在庫から価値を引き出しており、データは限定的です。つまり、Netflixには限定的なデータネットワーク効果しかないのです。
 
同様に、プロダクトの使用状況と、新たに収集される有用なデータの量との関係は、非対称である可能性があります。Yelpは、より多くのレストランに関するより多くのレビューがプロダクトの価値を高めるので、データネットワーク効果を持っています。しかし、データを作成するのはごく一部のユーザーであり、ほとんどの人はYelpのデータベースを読むことはあっても書き込むことはしないため、ネットワーク効果は弱くなっています。
 
また、Yelpはデータネットワーク効果に共通する弱点の良い例でもあります。そのデータネットワーク効果は漸近的です。5件目のレビューは30件目のレビューよりもはるかに価値があります。ある低いレベルを過ぎると、レストランのレビューが増えても、ユーザーにとっての価値は上がりません。(一方で、レビューの幅が広いことは非常に役に立ち、確固たるネットワーク効果につながります。Yelpがいまだに普及しているのはこれが理由です。)
 
利用者が増加するにつれて、より有用なデータが生成されるという関係性がないプロダクトであれば、ネットワーク効果はなく、単なる規模の効果に過ぎません。エクスペリアンのような信用調査会社が規模の効果を持つのは、データが増えれば信用スコアの価値が高まる(つまり正確になる)にもかかわらず、消費者がプロダクトを使用しても自然にデータ量が増えるわけではないからです。
 
データネットワーク効果は、規模に起因するデータの優位性と混同されやすいです。大企業は、その定義からして、より多くのデータを持っています。問題は、そのデータが顧客やユーザーにとって意味のある価値を生み出しているのかどうかです。もしそうであれば、利用量の増加はより有用なデータにつながっているでしょうか?
 
データネットワーク効果の高いサービスの例として、Wazeが挙げられます。Wazeでデータを消費しているほぼすべての人が有用なデータを提供しているだけでなく、データはリアルタイムで消費されるので、データセットは継続的に更新する必要があります。したがって、ネットワークが大きければ大きいほど、どの道路でも、どの瞬間でも、より正確なデータが得られます。より多くのデータはほぼ無限に価値を生み出し続けるため、Wazeは他のどのサービスよりもデータネットワーク効果が漸近的にならないと言えます。
 
データネットワーク効果はネットワーク効果の中でも最も複雑な部類に入るでしょう。 データを利用する方法の数だけデータネットワーク効果があります。将来的には、データネットワーク効果の詳細もマッピングしていきます。
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テックパフォーマンスネットワーク効果

ユーザー数の増加に伴い、プロダクトのテクニカルなパフォーマンスが直接的に向上することを「テックパフォーマンスネットワーク効果」といいます。これはネットワーク効果の4つ目のカテゴリーです。テックパフォーマンスネットワーク効果を持つネットワークでは、ネットワーク上のデバイスやユーザーの数が増えるほど、基盤となるテクノロジーのパフォーマンスが向上します。これにより、プロダクト / サービスがより速く、より安く、あるいはより使いやすくなります。
 
テックパフォーマンスネットワーク効果のネットワークは、大きくなればなるほど良くなります(速くなる、安くなる、使いやすくなる)。ノード(デバイス)の数が増えれば増えるほど、ネットワーク全体のパフォーマンスが向上します。
テックパフォーマンスネットワーク効果のネットワークは、大きくなればなるほど良くなります(速くなる、安くなる、使いやすくなる)。ノード(デバイス)の数が増えれば増えるほど、ネットワーク全体のパフォーマンスが向上します。
 
BitTorrentのようなP2Pファイル共有サービス、HolaのようなVPNプロバイダー、Tileのような物探しのメッシュネットワークなどを考えてみてください。これらのサービスは、ネットワーク上のノード数が多いほど、すべてのユーザーにとって高速なサービスになります。BitTorrentでファイルをダウンロードしている人は、ネットワークにファイルを転送してもいます。Tileに関しても、ネットワーク上にあるすべてのスマホが常にTileをスキャンしているので、Tileのアプリをインストールしている人が多ければ多いほど、失くしたものを見つけられる可能性が高くなります。また、Skypeは、多くの人がスカイプを利用すればするほど、ビデオストリーミングの品質が向上すると主張しています。(これは本当かどうか定かではありませんが、彼らが持つ考えとしては正しいです)
 
テックパフォーマンスネットワーク効果は、技術的な進歩とは異なるどころか優れていると私たちは考えます。技術的な優位性は半減期が短く、今やあまり障壁にはなりません。もしあなたが最初に技術を開発したならば、技術革新の速度によって、競合他社があなたの技術をコピーするか、自分たちで開発するまでにそう長くはかからないでしょう。しかし、テックパフォーマンスネットワーク効果があるのなら、他社に先駆けて開発すれば圧倒的なアドバンテージを得ることができます。争う必要はありません。時間が経てば経つほど、リードは縮まるどころか伸びていきます。
 
テックパフォーマンスネットワーク効果においてよく誤解されているのは、利用量の増加によって売上が上がり、それをさらに技術的な進歩のために再投資し、さらに使用量を増やすことができたときに、テックパフォーマンスネットワーク効果があると思ってしまうことです。売上やデータの量が増えることでパフォーマンスが向上するのであれば、それは良いことかもしれませんが、テックパフォーマンスネットワーク効果ではありません。
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「ソーシャル」ネットワーク効果

ネットワーク効果の5つ目のカテゴリーは、「ソーシャル」ネットワーク効果と呼ばれるものです。この効果は、心理学や人と人の関わり合いによってもたらされます。
 
私たちはその仕組みを次のように考えています。
 
ネットワークはノードとリンクで構成されています。固定電話のシステムでは、物理的な電話とそれらをつなぐ電線を見るのは簡単です。
 
それとは違って、人と人との間には目に見えないネットワークがあります。私たちの身体がノードであり、お互いの言葉や行動がコネクションです。これが本来のネットワークと言えるのではないでしょうか。
 
デジタルネットワーク効果と同様に、このソーシャルネットワーク効果は、より多くの人が使うほど、ユーザーにとってのプロダクトの価値を高めることができます。人はお互いの価値を高めていきます。それは、相手の考え方や感じ方に影響を与えるによって。プロダクトを使用するきっかけや自信を与えることによって。 継続してプロダクトを使用するという選択を強めることによって。
 
ソーシャルネットワーク効果は通常、長期的な障壁を目的として構築するのが最も難しいと言われています。しかし、さまざまな心理学をうまく味方につけることができれば、競合他社に対して大きな優位性となるでしょう。
 
ソーシャルネットワーク効果は、ブランドによる障壁に似ているのではないかと思われるかもしれません。部分的には正しいです。確かに類似点はありますし、言語や心理にも関係しています。しかし、重要な違いもあると考えているのでこれを別のカテゴリーに分類しました。
 
現在のところ、ソーシャルネットワーク効果には、言語、信念、バンドワゴンの3タイプを特定しています。人間の心理は複雑で、非常に多くの種類のソーシャルな関わり合いがあるため、この数は簡単に増える可能性がありますし、私たちは新しいタイプを探し続けています。
 

言語(ソーシャルネットワーク効果)

いかなる人間のネットワークにおいても、言語が主な仲介役となります。言語は、ネットワーク内のすべてのノードが相互にやりとりするために使用するプロトコルです。例えば、英語は実用的な言語ですが、15億人もの人々が英語を話していることを考えると、その価値はさらに高まります。これは、ドイツ語人口の15倍以上です。英語を話せば、ドイツ語を話すよりも15倍コミュニケーションが上手になるわけではありませんが、英語のネットワークのおかげで、英語利用者にもたらされる価値は格段に高くなります。
 
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これが理由で、歴史的に見ても言語には「勝者ほぼ総取り」の傾向があります。同じ政治的、社会的、経済的なユニットの中の人々は、一つの言語の周辺にまとまる傾向があります。
 
この考え方は、国家や企業、ティーンエイジャーやヒップスター、経済学者やグーグル社員など、特定のグループの専門用語や方言にも当てはまります。専門用語は、より多くの人に採用されればされるほど、他のユーザーにとっても価値のあるものになります。
 
スタートアップ企業はこうした言語のネットワーク効果を使うことができ、少なくとも2つの方法で「勝者ほぼ総取り」効果を利用することができます。1つ目は、ビジネスカテゴリーの言語を作ること、2つ目は、会社やプロダクトの名前をつけることです。
 
1つ目の方法では、もし創業者がビジネスカテゴリーの名前を作って認知されることに貢献し、そのカテゴリーでNo.1として知られるようになれば、その会社は強固な言語ネットワーク効果を得ることができます。ミラービールは、1975年に「ライトビール」というカテゴリーを作りました。同じようなことは1995年にも起こっており、ウェブの「ポータル」というカテゴリーが作られ、当時カテゴリーをリードしていたヤフーがその恩恵を受けました。最近では、「暗号通貨」というカテゴリーができたことで、同じような言語ネットワーク効果が見られます。そのなかで1位とされたビットコインは最も恩恵を受けました。競合する暗号通貨が何百とあるにもかかわらず、ビットコインは未だに時価総額の40%近くを占めています。
 
これらのすべてのケースで、1位は最終的にその王冠を失っており、それがゆえに言語ネットワーク効果は他よりも弱いと考えられています。それにもかかわらず、彼らの競合は長年にわたり、言語ネットワーク効果を持つ会社の不当な優位性について「自分たちにもあれば」と文句を言っていました。
 
企業が言語ネットワーク効果を利用する2つ目の方法は、会社やプロダクトのネーミングです。
 
例えば、「ググる」という言葉はインターネットで何かを検索することの代名詞ですが、これはGoogleにとって大きなアドバンテージになりました。言語自体が競合他社を利用する際の障害となったのです。誰かに「ググって」と言われたとき、スマホを取り出してBingを使い始めるのは、社会的な気まずさもあれば、精神的に心地よくもありません。
 
誰かが「Uber呼んで」と言うのも同じです。これは「Lyft」ではなく「Uber」を使うようにと社会的合図を送っているのです。(ちなみに、名詞として広まることは、動詞として広まることよりは強力ではありません。より多くの人が「あそこでUberします」と言えば、Uberにとってはより良いことでしょう。すでにそうしている人もいますが、私がUberの中の人だったら、できる限り動詞で使うように奨励します。)
 
他にも、昔は「ゼロックスして」といえば、コピーすることを意味していました。
 
会社名を言語として使ってもらうことは大きなメリットになりますが、これは非常に難しいことです。そのためには、社名が記憶に残り、かつキャッチーでなければなりません。だからこそ、社名を正しく設定することは非常に重要なのです。
 
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信念(ソーシャルネットワーク効果)

13番目のネットワーク効果は信念です。信念のネットワーク効果は、金、ビットコイン、宗教で最もよく見られるものです。これは直接的ネットワーク効果です。
 
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ホモ・サピエンスは群れで行動する動物です。私たちは「仲間」に入りたいし、他の人に認められたいと思っています。共通の信念を持つことは、そのための重要な要素です。人々が何かを信じていれば、他の人々も非常に興味を持ち、信じる可能性が高くなります。その結果、友人が信じていることを信じなければ社会的に大きな影響が出ますし、むしろ悪い影響が出るかもしれません。これが、人々が集団思考に固執する要因の1つであり、否定的な情報に対して非常に抵抗力があります。
 
最も重要なことは、人々が信じれば信じるほど、信念は信者にとって価値のあるものになるということです。
 
金を見てください。なぜ価値があるのでしょうか?食べることも寝ることもできません。きれいですが、きれいなものは他にもたくさんあります。工業的な用途もありますが、そんなにはありません。金が貴重なのは、塩に価値があると長らく信じていた私たち人間が、その代わりとして金に価値があると信じるようになったからです。そして5,000年以上もの間、金は常に価値あるものであり続けています。5,000年の過去が、未来においても人間がこの信念を持ち続けるという確信を与えるのです。その信念は時間とともに強まっていきます。
 
つまり、私たちが価値があると信じているからこそ、金には価値があるのです。
 
信念のネットワーク効果とは砂のようなものです。砂は、少量であれば風に吹かれて消えてしまいます。しかし、砂をたくさん重ねると、石のように硬くなります。
 
ビットコインも同じです。価値があると信じる人が増えれば増えるほど、誰にとっても価値のあるものになっていきます。そして今、ビットコインにも同じような「砂の積み重ね」が見られます。ビットコインの価格が何度も暴落しては立ち直るたびに、人々はビットコインに価値があると信じるようになります。そして、その上にイーサリアムの「砂」を重ね、さらに他の何千もの暗号通貨(取引所ではすべてビットコイン建て)の「砂」を重ねると、ビットコインの砂は信念ネットワーク効果の成長の結果、次第に安定していきます。かつては流動的で無形だったものが、岩に近いものへと変化しているのです。
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バンドワゴン(ソーシャルネットワーク効果)

バンドワゴンは、ネットワークに参加しなければならないという社会的圧力によって、人々が「仲間外れにされたくない」と感じるときに起こります。
 
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その良い例がSlackです。テック業界では、チームがSlackを使っていなければモダンな会社とは言えないと一般的に思われています。私たちは、Slackの知名度とバリュエーションはプロダクトの実用性を上回っていると考えています。それは、Slackがテック業界において、ある種のムーブメントを起こし、強力なバンドワゴンネットワーク効果を生み出したからです。
 
バンドワゴンネットワーク効果は、一般的にネットワークが集約され始めたとき、つまり人々が早くから飛びつくときに発生します。1998年に人々がGoogleを使い始めたとき、「クールな人はGoogleを使っている」という一般的な感覚がありました。(彼らはそれまでAlta Vistaを使っていました)
 
Googleを使っていない人は仲間外れにされていたのです。その後、Googleでは他のネットワーク効果がコアな防御力を発揮するようになったので、もはや初期のバンドワゴンネットワーク効果に頼ることはなくなりましたが、最初の頃は確かにそれがあったのです。
 
バンドワゴンネットワーク効果をコアなノウハウとしている企業に、Appleがあります。毎年、新製品のデモや発表会では、綿密な台本に基づいたパフォーマンスで、話題性とFOMO(Fear of Missing Out)を繰り返し生産しています。これは非常に効果的なものであり続けています。最近では、シリコンバレーの会議にApple製のコンピューターではなく、IBMのクローンを持って現れたら、それはあなたが仲間外れである証です。Macを使っていない人は部外者と見なされます。
 
これは、より良い製品を持っているにもかかわらず、なぜかAppleに勝てない競合他社にとってはもどかしいことでしょう。Appleの成功は「ブランディング」だけではありません。Appleの成功は「クールな集団の一員になりたい」「ムーブメントに参加したい」という心理をうまく刺激することにあります。
 
2010年に公開されたこの動画は、Appleの独占の背景にあるメカニズムに対する競合他社のフラストレーションや混乱を面白おかしく描いています。また、2017年に公開されたSamsungの広告キャンペーンも、同じ虚しさを嘆いています。Samsungが「より良い」製品を作っているのだから、消費者はiPhoneへの幼稚で感情的な執着から「卒業」する時だと伝えようとしています。しかし、彼らが見落としているのは、ユーザーにとっての価値とは、製品の機能の総和だけでもなければ、効用を集約した関数だけでもないということです。それは、他の製品のユーザーから得られるネットワークの価値や、ユーザーを参加させるバンドワゴンの社会的価値を含んでいるのです。
 
バンドワゴンネットワーク効果をうまく説明している動画があります。デレク・シバーズは、「急げば仲間になれる」というバンドワゴン心理の本質を捉えています。そして、残りの人たちは(参加しないと最終的に馬鹿にされるので)群衆の一部でいることを好むから参加するのだと巧みに説明しています。この動画は見応えがあります。
 
ネットワーク効果を学ぶ人は、バンドワゴン効果が行き過ぎてしまうことを正しく理解するでしょう。あまりにも多くの人がムーブメントに参加すると、そのグループが主流になりすぎてしまったという理由で、アーリーアダプターがムーブメントから離脱してしまうことがあります。これが理由で、「バンドワゴン効果」はプロダクトの最初の段階で見られるのです。賢い創業者は、バンドワゴンから他のネットワーク効果への移行をうまく行い、長期的な障壁を維持します。
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ネットワーク効果の威力

先に述べたように、「ネットワーク効果マップ」は、ネットワーク効果の本質について議論するためのきっかけとなるものであり、この問題についての最終的な結論ではありません。ネットワーク効果は表面的には単純に見えても、複雑な現象です。
 
このマニュアルではネットワーク効果の重要性、多様性、複雑性を伝えようと試みました。一流の創業者はネットワーク効果をより深く理解することで、より実践的なビジネス判断ができるようになるでしょう。最終的には、防御力こそがあなたのビジネスの成功を決定づけます。そして、その成功の鍵を握るのは、何よりもネットワーク効果なのです。
 
※この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。