Square, PayPal, Waze, Twilioなどがトラクションを得るために意識していたこと
アーリーステージのスタートアップにとって、トラクションほど重要なものはありません。トラクションとは、アイデアを実際の成長に変えてくれる、測定可能なアウトプットです。
トラクションを促進する戦術はさまざまで、普遍的な方法論よりも、ユニークで直感に反する選択に頼ることが多いです。しかし、注意深く見てみると明らかなパターンが見受けられます。
そこで私たちは、世界のトップ企業の創業者やCEO、初期のリーダーたちにインタビューを行い、創業期までさかのぼって調査を行いました。いったいどのような戦術が初期のトラクションとなったのでしょうか?
大躍進を遂げた企業には、初期の成長のきっかけとなったインサイトがあるものです。その中にこそ、あなたのスタートアップのトラクションを加速させるヒントが隠されているのです。
目次
PayPal, Keith Rabois|Executive Vice President(2000年〜2002年 )Twilio, Jeff Lawson|共同創業者兼CEOSquare, Keith Rabois|COO(2010年〜2013年)Waze, Norm Bardin|CEO(2009年〜2021年)Yelp, Keith Rabois|取締役(2005年〜2014年)Fiverr, Micha Kaufman|Founder & CEOSuperhuman, Rahul Vohra|創業者 & CEOThumbtack, Marco Zappacosta|共同創業者 & CEOPoshmark, Manish Chandra, 創業者 & CEO「トラクション戦術」は直感に反することが多い
PayPal, Keith Rabois|Executive Vice President(2000年〜2002年 )
最終的には、人が成長を促す
まず第一に言えることは、ピーター(ティール)とマックス(レブチン)の採用でしょう。彼らは適切な人材を見つけるという哲学を持っており、最終的には個人的なネットワークを通じて、PayPalの人材ネットワークの大部分を調達してきました。ピーターはスタンフォード大学でのコネを利用し、マックスはシカゴの高校やイリノイ大学で学んだエンジニアを採用しました。彼らは、スケールアップしても高いポテンシャルを持つ人材を見極め、全員を混ぜ合わせました。
ピーターは、「マネジメントが得意な人は採用しない」と断言しました。それぞれの分野で最高の人材を昇進させ、その分野をリードしてもらおうと考えていました。例えば、最高のエンジニアはVP of Engineeringに、最高のデザイナーはデザインチームのリーダーに、最高のプロダクト担当者はプロダクトチームのリーダーに、最高の財務担当者はCFOに、というように、それぞれの分野で最高の人材を登用することにしました。そのため誰もが、自分の上司は実際に(ただの中間管理職ではなく)非常に優秀であることをわかっていました。これは、私たちの企業文化の基盤だったと思います。
マーケットのプルタブを見つける
eBayがPayPalのターゲットマーケットであるとは誰も思っていませんでした。しかし、デイビッド・サックスが、eBayの出品者の中に、「PayPalでお支払いください」とわざわざ入力している人が54人いることに気づきました。
これは明らかに非常に少数であり、PayPal経営陣の最初の反応は、「なんてこった。この人たちはなんでPayPalを使っているのだろう?私たちが想定した使われ方とは違うのだから、彼らを排除すべきだ」でした。
しかし、翌日オフィスにやってきたデビッドは、真逆のことを言い放ったのです。「そういうことか!我々のマーケットを見つけたぞ」と。そこで私たちは、出品者がわざわざ手書きで入力しなくてすむように、PayPalのロゴを挿入できるようにしました。また、こうした売り手は数多くの商品を取り扱っていたので、ロゴを自動で挿入できる仕組みも作りました。これは、会社が注力すべきマーケットであると同時に、2年間のプロダクト戦略の指針にもなりました。

Twilio, Jeff Lawson|共同創業者兼CEO
ミッションではなく、問題から始める
世界を変えるような大きなビジョンやミッションを掲げている企業を見ると、それらはたいてい後付けのように思います。正直に言うと、これはすべてのスタートアップにとってきまりの悪い事実です。
初日に世界を変えるような巨大なビジョンを掲げたスタートアップは、「私たちは世界を変えなければならないし、ビジョンもある」などと言って、それによって周りが見えなくなるかもしれません。そんなことを思っていると、実際に目の前にやってきたビジネスチャンスを見逃してしまうのです。
最高のスタートアップはおそらく、このような巨大なミッションを構想して創業されたものではありません。「問題を抱えている顧客層を知っているので、私がそれを解決しよう」という比較的シンプルな理由で創業しています。
そして、スタートアップの初期段階でそれが上手くできれば、「よし、解決できてるぞ。お金も稼いでいるし、成長もしている。次はどうする?初期の成功を将来の成功につなげるためにはどうすればいいだろうか?」と言えるようになります。
このタイミングで次のことを考え始めるのです。
では、弊社の本当の北極星は何だろうか?次にやるべきことを選ばなければならないタイミングで左に舵を切るのか、右に舵を切るのか?
何か指針となるようなビジョンが必要になりますね。そこで、その判断のためのフレームワークを導入しましょう。それがミッションです。Twilioではそうでした。
複数プロダクトの会社へと迅速に移行する
どうすれば顧客にもっと価値を提供できるでしょうか?また成長していく中で、あらゆる顧客にとってプロダクト全体の価値を高める方法はあるのでしょうか?その方法は数多くあります。1つの方法は、包括的なプロダクトを迅速に構築することです。
Twilioについて考えてみると、私たちは1つのプロダクトの会社から複数プロダクトの会社へと迅速に移行しました。これは多くの点において常識を覆すものです。従来は「1つの事業を手がけ、それを上手く運営せよ」だとか、「ニッチを見つけて儲けろ」と言われます。いろいろな言い回しがありますが、ソフトウェアの世界においてはチャレンジは比較的安価にできるので、いろいろなことを試してみるべきだと私は考えています。
Twilio Voiceは当社の最初のプロダクトでしたが、1年半後にはすぐに2番目のプロダクトであるTwilio SMSを発表しました。今ではSMSはVoiceよりも大きなプロダクトになっています。私たちは、メッセージングで出来ることに関して多くのイノベーションをもたらしました。
現在、私たちはビデオ、チャット、Eメール、そしてデータインフラへの投資を続けています。当社のプラットフォームには多くの側面があります。一度Twilioを知っていただければ、様々な方法でTwilioをご利用いただけると思います。私たちは、開発者が抱える日に日に大きくなる課題を解決しているのです。
企業が求めているのは、より包括的なソリューションです。そのためには、さまざまなものを組み合わせるのではなくあらゆる属性を共有する1つのプラットフォームを持つことであり、そうして企業は信頼できるベンダーを選ぶことができるのです。

Square, Keith Rabois|COO(2010年〜2013年)
現実世界のバイラル
私が入社した頃のSquareはまだ始まったばかりでした。当時は1万台か2万台のSquareを世に送り出し、成長を始めたころです。その時の様子をご紹介しましょう。
私たちはマーケティングを一切行っていませんでした。というのもマーケティングを行う資金もありませんでしたから。しかし、Squaresをローンチしてから2週間目に、ジャック(ドーシー)が自分のコンピュータを指差して、日に日にユーザーが増え、毎日少しずつ成長していることに気づいたことを覚えています。
彼はなぜこんなことが起きているのかと私に尋ねました。私は一瞬思考が止まりました。標準的なルールでは起きるはずはないことでしたから。私たちはこの成長を生み出すために何もしていなかったのです。数分間考えて、私はある仮説を立てました。制約がある中での仮説に過ぎませんでしたが。
「これはもしかしたら、Squareの実際のデバイスを現実世界で見て、そのうちの何割かが登録してくれているのかもしれない」と考えたのです。
仮説を作れたら、次の問題は「どうやってそれを検証するのか?どうやってテストするのか?」ということです。仮説が正しければ、新しいSquareを出荷するたびに、一定の成長率で新しい顧客を獲得し、新しいトランザクションが生まれるはずです。その結果、完璧な関係があることを発見しました。その数字はちょうど1%でした。ゼロ日目の全取引の1%に当たる数が翌日の新規登録数と完全に一致していたのです。驚きました。
現実の世界で実際にバイラルループが起きたのです。私たちは、成長の要因となっている現実世界に生まれてからずっといたわけですが、それは全く明らかではありませんでした。
私たちはこの口コミが、デバイスの美しさという魅力、デザインの一貫性、そして名前を人々が覚えられるようにしたことが一因であると考えました。四角い形をしていますが、これは文字通りSquareという名前で、登録しようと思ったときに想起しやすいのです。初期の頃はこれが功を奏しました。

Waze, Norm Bardin|CEO(2009年〜2021年)
オーガニック・ファースト
マーケティングやパートナーシップなどの非オーガニックな活動は、オーガニックなトレンドが確認されてから実行するというのが私たちの基本的な考え方の1つでした。特定の都市や国での展開を何度も試みましたが、うまくいきませんでした。一方で、オーガニックに(=自然と)人々が使い始めた地域では、その火にガソリンを注いで灯りをともすことができたのです。
フランスは最も強力な市場の1つなのにドイツでは誰も使ってくれないという理由がよくわかりませんでした。私たちはいまだにそれが理解できていません。いろいろな理論で考えたりもしましたが、どれもピタッとハマりません。しかしそんなことはどうでもいいのです。フランスでうまくいっているのを見て、私たちはそこに投資した。イギリスでうまくいっているのを見て、そこに投資した。しかし、うまくいっていないドイツでは投資をしなかった。ただそれだけのことです。
ビジネスの原動力となるKPIを理解する
スタートアップ企は通常、ダウンロード数やユーザー数といった非常にシンプルなKPIを設定します。そうしたKPIは多くの場合、投資家が期待しているものを表しています。なぜなら、特に初期段階のKPIは資金調達を目的としていることが多いからです。しかし、企業が成熟して成長するにつれ、KPIはビジネスやユーザーエクスペリエンスをより象徴するものになっていくはずです。
私たちの場合、運転キロ数が私たちのビジネスにとって最も重要な指標であることに創業から数年経って気づきました。それは、投資家にとって意味があるとか、他のサービスと比較してどうかということではありません。しかし、私たちのネットワークが生み出すものを考えたとき、サービスを利用して運転する人が増えれば増えるほど、つまり私たちが運転キロ数と呼んでいるものが増えれば増えるほど、私たちはデータを集めることができるのです。より多くの時間を使ってもらえれば、広告収入もその分増えます。また、利用者が増えれば増えるほど、彼らはより多くの機能を発見し、それが利用の増加につながります。
会社全体のことを考えたときに、KPIを1つだけ選べと言われたら運転キロ数です。私たちがどんなビジネスをしているのかを一番的確に表していると思うからです。
「これだ」という感覚
私が初めてWazeアプリを試したとき、妻が「わあ、他にもこれを使ってる人がいるんだ。1人じゃないみたい」と言っていました。この感覚は非常に重要で、私の印象に残りました。
私たちにとって、初期段階では、他のWazeユーザーを見つけることは「Wow」というような瞬間でした。その瞬間はみんなが夢中になったものです。もちろん、今日ではそのような経験は必要ありません。なぜなら、ユーザーの数が多すぎるからです。地図上で他の人を見つけることは、もう「Wow」な瞬間ではありませんが、ネットワークに属していることをユーザーに伝えるために今でも表示しています。
テクノロジーについて考えるとき、それが何をするかという機能的な側面と、それが何を感じさせるかという感情的な側面があります。多くのスタートアップ企業は、機能や性能といったハード面を重視しすぎています。しかし、そのプロダクトを使ったときにユーザーが何を感じるかにもフォーカスする必要があります。うまく機能することと、ユーザーが感じることのコンビネーションこそが必要なのです。
最初のうちは「ジャンキー」でOK
アーリーアダプターをターゲットにしている時は、プロダクトが非常にスムーズでクリーンでなくとも構いません。それでは間違った印象を与えてしまいます。スムーズでクリーンで美しいプロダクトがあったとしても、それが機能しなければ多くの人を失望させることになります。もし、壊れていて不便だけれど、多くの機能を備えたプロダクトを用意していて、それをより良いものにするために協力してくれるアーリーアダプターをターゲットにしているなら、彼らは自分たちがプロダクトにどれほど影響を与えているかを知ることができます。彼らがどれほどより良くしてくれているかを見てもらう。これは彼らにとって非常に重要なことです。
マスマーケットに向けて準備が整ったとき、ユーザーとの関係は、アーリーアダプターとの関係とはまったく異なるものになるでしょう。その時には、私たちはアプリをよりスムーズに、より楽しく、よりクリーンにしました。最初にあった多くの機能を削除したので、コアなユーザーは怒っていましたが、新規ユーザーにとってはそれは問題ではありませんでした。例えば、GPS信号の強さなど新規ユーザーは気にしませんでしたが、アーリーアダプターは気にしていました。

Yelp, Keith Rabois|取締役(2005年〜2014年)
直感に反したKPI
私が取締役になって2回目の取締役会だったと思います。ジェレミー・ストッペルマンがプレゼンテーションにて、Yelpはまさにバイラルなソーシャルプロダクトを構築しているというビジョンを示しましたが、当時はまだ誰もそう思っていませんでした。
私はテーブルの向こう側の彼を見つめ、「では、もしソーシャルプロダクトを作っていると言うのなら、その正否を示す重要な指標は何になるか?」と言いました。すると彼は、テーブルを見渡してこう言いました。「ユーザーから別のユーザーへの、1対1のパーソナルメッセージの数だ」と。
個人的には、当時その答えは馬鹿げていると思っていました。しかし、その後3ヶ月から6ヶ月の間に、彼が正しかったことに気がつきました。この指標は、真のコミュニティを構築しているかどうかを判断する重要な指標だったのです。当時はまったく直感的ではありませんでした。

Fiverr, Micha Kaufman|Founder & CEO
スタートはシンプルに
Fiverrの最初期バージョンは、7つのカテゴリーを持った労働者向けのマーケットプレイスでした。この7つのカテゴリーの中で、5ドルであれば何でも提供することができました。私たちが行ったのは、のちのち面倒になる価格設定という摩擦を取り除き、単一の価格でスタートすることでした。
5ドルというのは、スターバックスのフラペチーノ価格です。なぜそれが重要なのか?なぜなら、もしあなたが買ったコーヒーが完璧ではなかったとしても、ショックを受けることはなく、コーヒーを捨て、場合によれば別のコーヒーを買うこともあるでしょう。このようなサービスを提供するリスクは非常に低いので、供給サイドで私たちが行わなければならない審査のハードルもそれほど高くなく、これは物事を簡単にしてくれました。最初から誠実なスクリーニングを売りにしたマーケットプレイスシステムを導入する必要はありませんでした。
市場は下流に広げるのではなく、上流に広げる
ビジネスの歴史を振り返ってみると、プレミアムビジネスを損なうことなくマーケットを下流に広げるのを実現した例はほとんどありません。だからこそ、私たちはマイクロビジネス向けのマイクロサービスで、市場の最下流からスタートしたのです。初期のお客様の大半は企業でしたが、個人事業主の場合、企業というよりも消費者として行動します。
私たちはそこからスタートし、時間が経つにつれ、より洗練されたプロダクトを用意してより大きなタイプのビジネスに向かっていきました。この方法のおかげで、市場を拡大しながら市場教育を行うことができました。マイクロサービスで大成功を収めたことで時間を稼ぐこともできました。そのおかげで市場を拡大し、市場の信頼を得る努力が実りました。
自分のブランドで企業にサービスを提供できるかどうかは、常に難しい問題です。このようなニッチなサービスを提供したり求めたりする人々のために、プラットフォームに余裕を持たせておく必要があります。しかし同時に、ブランドに信頼と真剣さのレイヤーを重ねていき、企業が利用できるようにしなければなりません。これは決して簡単なことではありません。
ブランドの認知度を変え、より多くのお客様にご利用いただけるようにするには、時間とストーリーテリングが必要でした。私たちは、お客様のニーズに応えられることを証明しなければなりませんでした。それは、信頼のシステムを再構築することでした。より質の高い商品を提供し、よりプロフェッショナルなカテゴリーを作らなければなりませんでした。
カスタマーサポートは自社で持つ
最初のうちは、すべてを自動化する必要はありません。手作業部分が多くてもよいのです。実際に規模を拡大する前に、基本的なプロダクトマーケットフィット(PMF)を達成しておかなければなりません。
私はいつも他の創業者に、私たちの共通点は、顧客がどのように使うかを明確に理解できている、あるいは少なくとも想定はできているプロダクトを作ることだと言っています。そしてその後、顧客が来て、彼らが使いたいようにプロダクトを使うのです。ですから、最初の段階では顧客のことを理解することは規模よりも重要なのです。
私がやったことのひとつに、創業当初の3〜5ヵ月間、カスタマーサポートを担当したことが挙げられます。それこそが私の役割であり、会社のCEOという役割以外での主な役割でした。最初の頃は、ほとんどのサポートは私が対応していました。
コミュニティとオープンな対話をして、何が好きで、何が嫌いで、何が足りないのかを理解することが目的でした。このような深い理解があったからこそ、バージョン0.9からバージョン1.0、バージョン1.1、そしてその先に移行できたと思っています。
私は、最初から規模にこだわるのではなく、顧客に対する価値創造にこだわるべきだと思います。そのためには、お客様と対話するしかありません。耳を傾け、会話をすることで、スケールアップするための多くのヒントを得ることができるのです。

Superhuman, Rahul Vohra|創業者 & CEO
ローンチせずにオンボードせよ
メールクライアント、タスクマネージャー、カレンダーアプリなどは、ユーザーによってプロダクトの使い方に大きなばらつきがあるため、バグが発生する可能性が特に高くなります。従来型のローンチを行い、何万人ものユーザーがすぐに登録してしまうと、何千ものバグが発見され、あっという間にチームは圧倒されてしまうでしょう。
そうなると、問題を迅速に解決することができません。そしてユーザーはがっかりしてプロダクトを手放し、そのひどい体験を周囲に伝えることになるでしょう。
その代わりに、初期ユーザーをオンボーディングしながら、4つの異なるフェーズに分けて、慎重に、段階的に、ファウンダー主導でローンチを行うのです。
- 第1フェーズ:準備状況の確認
プロダクト創業者(理想的にはCEO)がオンボーディングを行い、会社がオンボーディングを行う準備ができているかどうかを確認します。プロダクト創業者はプロダクトを最も総合的に理解しているので、オンボーディングを最もうまく実施できるはずです。少なくとも週に5~6回はオンボーディングを行うべきです。指標(リテンション、ユーザーエンゲージメント)が優れた数値を示していれば、第2フェーズへの準備が整ったことになります。
- 第2フェーズ:限定的なスケーラビリティのテスト 創業者ではない別のシニアメンバーがこれをリードするべきです。このフェーズの第一の目標は、創業者以外がオンボーディングを行っても優れた数字を出せることを示すことです。第二の目標は、オンボーディングをスケール可能なものにすることです。私たちは、オンボーディングにかかる時間を2時間から1時間に短縮し、週に20回のオンボーディングを行いましたが、依然として優れた数字を維持しています。
- 第3フェーズ:広範なスケーラビリティのテスト このフェーズでは、フルスタックのグロースチームを作ります。グロースチームの全員が、デマンドジェネレーション、リードクオリフィケーション、カスタマーサポート、オンボーディングを行います。このフェーズの第一の目標は、チームのシニアメンバー以外がオンボーディングを行っても優れた数字を出せることを示すことです。第二の目標は、オンボーディングの経験をスケール可能なものにすることと、次の成長段階に向けたトレーニングプランを作成することです。グロースジェネラリストは他の業務と並行して、1人当たり週に20回のオンボーディングを行うことを想定しています。このフェーズは通常、数カ月続きます。私たちは数字の低下を招くことなく、オンボーディングの時間を1時間から45分に短縮しました。
- 第4フェーズ:売上の拡大 オンボーディングのスペシャリストのチームを作り、以前のフェーズの誰よりもオンボーディングをうまくこなせるようにします。このフェーズの第一の目標は、プロダクトの楽しい魔法のような体験を維持しながら、売上を拡大することです。このフェーズにおいて私たちはオンボーディングの時間を45分から30分に短縮しました。
- トレーニングについて オンボーディングスペシャリスト1人1人に包括的なトレーニングプログラムを実施することが非常に重要です。彼らは今や会社の第一線にいるのです。当社のトレーニングプログラムは8週間かけて実施します。完全に軌道に乗ると、各自が週に35~45件のオンボーディングを行えるようになります。
- オンボーディングの人材探しについて スタートアップ創業者からオンボーディングスペシャリストの理想的な経歴をよく聞かれます。営業職であれば問題ないでしょうが、教師や接客業など、他の職種でも活躍できることがわかっています。
警告:資本(Capital)、候補者(Candidates)、顧客(Customers)の3つのCのうち、どれか1つがすぐに必要な場合は、ぜひ従来型のローンチを行ってください。
Superhumanの6段階のオンボーディング・アプローチ
第1フェーズでは、最初の200人の新規ユーザーを私がオンボーディングしました。1回のオンボーディングにかかる時間は気にしませんでしたが、だいたい2時間で終了しました。それぞれのオンボーディングは6つのパートに分けられました。
- 新規ユーザーに、Superhumanの詳細なデモを提供し、Superhumanの魔法のような魅力を共有する。
- Superhumanが有料のプレミアム製品であることを伝え、価格感度メーターで価格感応度をテストする。
- 現在どのようにメールを利用しているかを聞き、役立たせてもらえそうなSuperhumanの機能をすべてメモする。
- Superhumanを使って従来の2倍の速さでメールを処理する方法を彼らに伝える。
- 30分間、ライブで一緒にメールをするように言いましょう。彼らと一緒に行うことは非常に重要です。なぜなら、毎回5~10個のバグを見つけてはチームに送り返していたからです。そうしたバグは1週間以内に必ず修正するようにしていました。そうしないと、次に対処すべきバグを処理できませんから。
- あなたが彼らの時間をどれだけ大切にしているかを示すために、彼らの趣味に合わせたギフト(私ならワインやウイスキーのボトル)を送ります。これは、何千人ものユーザーを抱える規模になると、やる回数が明らかに減ります。
価格設定はポジショニングから
Superhumanの価格設定を行った際、GoogleでGmailの最初のプロダクトマーケティングマネージャーを務めたArielle Jacksonに話を聞きました。彼女は、シンプルながらも効果的な6つの公式を使ってポジショニングを決めることをアドバイスしています。
- For(対象となる顧客)
- Who(ニーズや機会の表明)
- (製品名)is a(製品カテゴリー)
- That(主要なベネフィットの説明)
- Unlike(競合する代替品)
- (製品名)(主要な差別化の表明)
2015年、私たちは、仕事のほとんどがメールだと感じている高成長テクノロジー企業の創業者、CEO、マネージャーに向けて、次のようなポジショニングを考えました。
Superhumanは、史上最速のメール体験を提供します。もし12年前ではなく、今日Gmailが作られたとしたらまさにこんな感じでしょう。また、Gmailとは異なり、Superhumanは細心の注意を払って作られています。すべてのことが100ミリ秒以内で起こるように。
このポジショニングによって、Superhumanがプレミアム製品であることを明らかにしました。ここからは価格の話に移りました。
4つの質問をしました。
- どのくらいの価格であれば、Superhumanの購入を検討しないほど高価格だと思いますか?
- どのくらいの価格であれば、Superhumanは品質が良くないのだろうと感じられるほど低価格だと思いますか?
- どのくらいの価格であれば、Superhumanは高価格になってきたと思いますか?(問題はないけど、購入するには少し検討が必要というレベル。これが最も注目した質問です)
- どのくらいの価格であれば、Superhumanはバーゲンでお買い得だと思いますか?
私たちはプレミアムなプロダクトを作っているので、3つ目の質問に最も注意を払いました。この質問に対する回答の中央値は、月額29ドルであることがわかりました。その後、価格設定の専門家と数回話をして、月額30ドルに切り上げました。
四捨五入された価格は品質をシグナリングする一方、9で終わる価格はバーゲンをシグナリングします。
こうやって私たちは価格を設定しました。

Thumbtack, Marco Zappacosta|共同創業者 & CEO
鶏と卵の問題を解決するために「ネットワークに依存しない価値」を生み出す
アーリーステージのマーケットプレイスとして、私たちは自問しました。
どうすればネットワークに依存しない価値を生み出すことができるのか?マーケットプレイスの供給側であるプロに対して、最終的に彼らを惹きつける顧客ネットワークができる前に、どうすれば価値を提供できるのか?
私たちの初期の成長戦術は、こうしたプロがどこにいて、どこですでに顧客を見つけているかを探すことでした。2009年から2010年当時、その場所はCraigslistでした。
私たちが作ったのは、ThumbtackのプロフィールをワンクリックでCraigslistに再掲載できる非常に簡単なツールで、写真、レビュー、メタデータのすべてを素晴らしいHTMLレイアウトで取り込むことができました。重要なのは、彼らは自分たちでこれを行うことに興味もなければできもしなかったのですが、彼らにとってはこのツールは即座に価値を見出せるものでした。そこで私たちは、「あなたはCraigslistを利用している/したいと思っているんですね。こんな素晴らしいツールがあります。プロフィールを入力するだけでOKです」と言えるようになりました。
その結果、インターネットを使って顧客を見つけようとする意欲のあるプロたちが集まってきました。彼らこそが、私たちが必要としていた人材でした。また、このおかげで最初から彼らとの関係を築くことができました。一般的なディレクトリとは異なり、Thumbtackは最初からマーケットプレイスで見つけたすべてのプロと関係性を構築しています。
私たちは、単にプロに関する情報ではなく、プロという人物をあなたと結びつけたいのです。これが、初期の成長戦略としてすべてを軌道に乗せるきっかけとなったのです。
SEOに最適
プロの方々が当社のプロフィールを作成することで、もう一つのメリットが得られました。プロはCraigslistのような他のプラットフォームで自分自身を表現するために私たちのプロフィールを使用するので、見栄えの良いプロフィールを作成し、ユニークなコンテンツを多く提供することに非常に意欲的でした。これがSEO対策に最適でした。
私たちは長い間、世の中にある他のプラットフォームと驚くほど被りがありません。GoogleやFacebook、Yelpを考えてみればわかりますが、この分野は非常にロングテールのカテゴリーであり、不透明で不完全な情報で断片化されています。私たちのアプローチは、質の高い関係を築くことができるだけでなく、SEOにも有効でした。

Poshmark, Manish Chandra, 創業者 & CEO
エンゲージメント > グロース
特にコンシューマー向けプロダクトに当てはまることなのですが、初期段階での私たちのインサイトの1つは、コンシューマー向けプロダクトを理解するための最良の方法は、ユーザーのエンゲージメントとリターン率であるということです。グロースではありません。これはローンチした頃には信じられないようなインサイトでした。
ユーザー数はわずか1,000人ほどでした。しかし、1日の平均エンゲージメント時間は20~22分で、1日あたり7~8回のエンゲージメントがありました。今では、1日あたり23~27分になっています。
これは、私にとって非常に強力なインサイトでした。
成長を止めるタイミング
2013年の半ばには、すべてが壊れてしまったように感じました。
オフィスには何百もの箱が散乱していました。Posh Partyはスケールアップできず、サーバーがクラッシュすることもありました。USPSが私たちの前に現れ、私たちがUSPSのルールに違反しているため、CEOを刑務所に連れて行きたいと言ってきました。
あらゆる決済業者に別の決済業者を探せと言われました。事業のユニットエコノミクスは悪化していました。それでも、ユーザーのエンゲージメントは非常に高かったのですが、システム全体ではまだそこまで至っていませんでした。そんな中、資金調達をどうしようかと考えていました。
そこで私は一歩引いて、Mayfield(VC)のナヴィーンに会いに行き、「成長率を80%削減し、マーケティング費用も80%削減する」と言いました。狂ったようにお金を使い続けて成長せず、悪い状況に陥ることを避けたかったということもあります。しかし、それでも難しい決断でした。
その間に、USPSとのパートナーシップを再構築し、当社のビジネスモデルをサポートできる決済代行会社を見つけ、つい最近にはPosh Remitを立ち上げて、販売者のために自動的に消費税を徴収して送金できるようにしました。
現時点では、販売者にとっては、配送も支払いも、そして行政との統合もすべて簡単です。これで販売者は、自分たちが好きな2つのこと、つまり商品をどのようにして販売するか、お客様との会話をどのようにして簡単にするかに集中することができます。

「トラクション戦術」は直感に反することが多い
アーリーステージのスタートアップにとって、トラクションが聖杯であることはよく知られています。しかし残念なことに、トラクションを得るための本当の方法は一般的には知られていません。
今、Square、Twilio、PayPal、Wazeなどの背後にある「トラクション戦術」を知ることで、世界中の創業者たちは自分たちで実験を始めることができます。しかし、直感に反するようなインサイトを見落とさないように注意してください。それこそがトラクションの原動力になることが多いのですから。
※この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。