3割の人が挫折する歯科矯正において継続率は97%。価格も従来の3分の1を実現。D2Cマウスピース矯正のOh my teethが生み出す、未来の歯科体験

公開日
2022/06/24
「未来の歯科体験を生み出す」をミッションに、日本初のD2Cマウスピース矯正ブランド「Oh my teeth」を展開する株式会社Oh my teeth代表の西野 誠さんを取材しました。
 

Oh my teeth について教えてください。


 
Oh my teethは、テクノロジーに精通したメンバーと歯科矯正専門家がタッグを組んで生まれたビジネスで、「未来の歯科体験を生み出す」というミッションのもと、現在は歯科矯正のアップデートに取り組んでいます。
 
従来の矯正には「高い」「何回も通院しないといけない」「目立つ」といった課題があり、これを解決するシステムを開発し、歯科クリニックに導入を進めています。
 
具体的にはまずは提携クリニックで歯型をスキャンしていただき、複数のドクターが矯正プランに適合するかを診断します。そして適合と判断されたのち、矯正プランを契約していただくとご自宅にマウスピース矯正キットが届くので、そこからリモート矯正を開始していただきます。
 
 
マウスピース矯正は1日20時間以上の装着を毎日続けることが重要なのですが、これは簡単なことではありません。現に約3割の方が矯正の途中で挫折してしまったというデータもあるほどです。
 
Oh my teethでは、LINEを活用してアドバイスやリマインド、進捗の可視化を実現することで、継続率は97%(Oh my teeth調べ)を実現しています。
 

創業のきっかけは?


 
私自身、歯医者が非常に苦手だったんですよ。「先生が嫌」とかではなくて、何となくあの空間が苦手でした。
 
他にも、電話でしか予約できなかったり、予約したにもかかわらず待たされたり、現金しか使えなかったり。時代とUXがマッチしていないように感じられました。
 
この体験は私の幼少期から何年も変わっていなかったため、疑問を抱くようになったのが創業のきっかけです。
 

従来の約3分の1の価格を実現する、コストカットの秘密


 

━━━ 歯科矯正は100万円かかる場合もあると聞くが、なぜ33万円で提供できている?

 
矯正範囲を絞っていることが、低価格を実現している大きな理由です。私たちのマウスピースは、笑った時に見える前歯に特化しています。
 
他にも、一貫して私たちが管理していることで中間コストがかからないことが大きいですね。予約に始まり、クリニックのプロデュース、マウスピースの製造・発送まで私たちが一気通貫で手がけているため、従来よりコストをかけずに済んでいます。
 
多くの歯科矯正クリニックでは、海外メーカーにマウスピースを発注しています。いくら人件費が比較的安い海外工場に発注するとはいえ、工場が利益を確保しようとする分、クリニックに卸すときの価格は高くなってしまいます。
 
現状の歯科矯正で100万円かかることも少なくないのは、そういう背景があるからなんです。
 

創業から3年間、自己資金でやってこれた理由


 

━━━ お金がかかるビジネスだと思うが、外部から資金調達してこなかった理由は?

 
基本的には完全オーダーメイドの受注生産なので、在庫を持つ必要がありません。ユーザーに買ってもらってから製造先にお金を支払うので、前もって大量の資金が必要というわけではなかったんです。
 
しかしここからは、プロダクト品質をより良いものにするために外部から資金を調達するフェーズだと思っています。
 
店舗展開に必要な資金は、銀行融資を比較的受けやすいのですが、優秀な人材を集めるための資金も必要なフェーズになってきており、株式による資金調達も考えているところですね。
 
Oh my teeth は、本田圭佑氏から「出資希望」を獲得している
 

利用者数は?


 
利用者は7,000人を超え、希望者が2万人を超えたところです。
 

━━━ 希望者とは?

 
まだ数店舗しかないので現状では歯型スキャンに行くのが難しいものの、いずれは使ってみたいと希望してくださっている方が2万人いらっしゃいます。
 
私たちの潜在的なお客様は今すぐ歯科矯正を始めたいわけではなく、「近くに店舗ができたら」みたいなきっかけを求めていて。実際に、大阪に店舗を出したときには一気にお客様が来てくださいました。
 
6月1日には有楽町に店舗をオープンしたので、東京在住の方にはより一層ご利用しやすくなりました。
 
Image credit: Oh my teeth 導入クリニック「東京銀座有楽町矯正歯科」
Image credit: Oh my teeth 導入クリニック「東京銀座有楽町矯正歯科」
 

マウスピース矯正とメンズ脱毛には共通点がある、という仮説


 

━━━「1番の決め手は通院がいらないこと」とのことだが、逆に何が1番のハードルか?

 
マウスピース矯正自体をやっている人がまだ少ないことだと思います。そもそも矯正をしているのは全人口の約9%ですし、そのなかではワイヤーが主流で、マウスピース矯正はまだまだマイノリティです。
 
私は、ここに伸びしろがあると考えています。
 
たとえば、メンズ脱毛が流行りはじめたのはここ5年くらいだと思うのですが、あれは「周りの人がやり始めたから興味を持った」という人が多いと思うんですよね。
 
男性がしっかりスキンケアするようになったり、メンズコスメを使いはじめたように、マウスピース矯正も時間とともに興味を持つ方が増えてくると思っています。
 

「自然と生まれる会話」が顧客獲得につながる


 

━━━ 食事中にはマウスピースって外すもの?

 
外すものです。実は、これが顧客獲得に結構効いているんですよ。
 
たとえば会食時、「ちょっとお手洗いに」とOh my teethユーザーが席を立つと、周りは「え、なになに?」となって詳細を聞くことが多いんです。
 
Image credit: Oh my teeth ユニークなマウスピースケース
Image credit: Oh my teeth ユニークなマウスピースケース
 
実際、Oh my teethを購入してくださる方は「人からの紹介」が一定割合を占めているのですが、その内訳の半分近くは「日常会話」というデータがあります。
 
「それ何つけてるの?」とか「マウスピース矯正どう?」といった会話から購入に結びついているようです。
 
ハードを使うビジネスでは、見た目がユニークであることが顧客獲得につながるケースが多い。
 
Square社が提供する正方形のクレジットカードスキャナーは、リリース当時、見た目の美しさから多くの人が興味を持ったという。日本でも電動モビリティのLUUPなどがこの事例に当てはまるだろう。
 
 

オーガニックも寄与し、顧客獲得コストは従来の8分の1


 
私たちはWeb広告やSNS広告にコストをかけていますが、先ほど申し上げたようなオーガニックな顧客獲得も一定割合を占めているため、顧客獲得コストは業界相場の8分の1程度に抑えられています。
 
逆に、従来の歯科矯正医院は広告に依存してしまっているため、コストが重くのしかかっています。
 
「歯並びを直す」というベネフィットは変わらないので、「マウスピース矯正おすすめだから、近くの歯医者行ってみたらいいよ」という会話にはなっても、「〇〇歯科のマウスピース矯正がおすすめだよ」という会話にはなりづらいんです。
 
それでも顧客獲得しようとすると、広告に多大な予算をかけなければなりません。そのため、従来の歯科矯正医院が顧客を1人獲得するのに、10万円〜20万円かかってしまっています。
 

歯科矯正は一生もの。初期ユーザーの獲得が難しいのでは?


 
意外と早く受け入れてもらえました。
 
リリースしてすぐに、Forbesさんに取材していただいたことがきっかけでアーリーアダプター層に届いたんですよね。
 
歯並びを直したいと思っていた人たちだけでなく、最先端のものを試してみたいという人まで初期のユーザーになってくれました。
 

━━━ リリースまもないサービスがForbesに取り上げられるのは珍しいのでは?

 
はい、珍しいと思います。運が良かったですね。
 
2019年の終わりごろに取材を受けたのですが、当時はD2Cが2回目の盛り上がりを見せていました。
 
メディアとしても「D2C × ヘルスケア」の事業を取材対象としてずっと探しているということを知人から聞き、その繋がりでOh my teethについて取材していただけました。
 

ソフトウェアビジネスと比べ、何倍も時間がかかる事業性の検証


 

━━━ 事業を構想してから正式にユーザーに提供できるまで、どれくらいかかった?

 
2〜3年かかってますね。
 
需要が本当にあるかどうかの検証と、矯正専門の歯科プロフェッショナル探しに時間がかかりました。
 
まずは需要検証ですが、これは非常にシンプルで、LPを作っていろんな人に見てもらっていました。
 
当時は「良いものを選びたい・お金はある・時間はない・合理的」といったところで、「外資系30代女性」みたいなペルソナを置き、該当する方々にインタビューしていました。
 
最初は「早い・安い」を前面に押し出していたのですが、インタビューした方々に「何か不安、怪しい」と言われまして。これを受けて、医学的なエビデンスを掲載したLPに差し替え、お客様の不安を取り除いていきました。
 
ほかにも、「リモートで経過観察は本当にできるのか」も入念に検証しました。
 
マウスピースや矯正計画自体は、他の歯科医院さんでもやっているものなので検証済みですが、私たちが生み出す違いは「通わなくていい」というところなので、写真だけで歯科医師たちはレビューできるのかどうかを注意深く検証していました。
 
Image credit: Oh my teeth
Image credit: Oh my teeth
 
「ここはこういう写真がいいんじゃないか」「ユーザーに提出させる写真をもっと減らせないか」と、歯科医師さんと何度もやりとりしましたね。
 
矯正が無事に完了するまで見届けなければいけないので、検証期間がソフトウェアに比べて長いというのが特徴の1つかもしれません。
 

未来の歯科体験を生み出す


 
6月1日には有楽町に導入クリニックがオープンしましたが、現時点では私たちが思い描いている絵の1%しか実現できていません。2030年には1万クリニックへの導入を完了させ、4人に1人がまったく新しいOh my teethの歯科体験をしている状態をつくりたいんです。
 
現在は歯科矯正分野をアップデートしていますが、今後はあらゆる歯科体験の従来の常識を変える大きなチャレンジをしていきます。
 
「未来の歯科体験を生み出す」というミッションにワクワクする方は、ぜひ一緒に働きましょう!