市場よりも自分たちがうまくできることをコアにMOATを作る

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目次

Clubhouseのユニークなバイラルの仕方

前田ヒロ氏(以下、前田):本題に入る前にCluhouseについて福島さんの見解というか、どういうふうに考えられてるのか気になりますね。

福島良典氏(以下、福島):やばいな(笑)相当むずいですね。それこそ僕は去年とかに福山太郎とかに「これすごいよ」みたいな感じで教えてもらったっていうのがClubhouseのあれなんですけど。USでの使われ方とかまったく調べてないんで置いておいて。日本だと今までにないバイラルの仕方をしてるなって。

今までのバイラルの仕方って、どっちかっていうとITインフルエンサーと既存のインフルエンサーって交わらないバイラルの仕方をしてたんですけど、今回間違いなくITインフルエンサーから始まって、ITインフルエンサーのお友達のスポーツ選手とか芸能人とかインフルエンサーっぽい人をインバイトすることによってそっちのユーザーがバッと来てるみたいな。IT史上初めてこのバイラルの仕方を見るなみたいな。

要は今までのバイラルってITインフルエンサー抑えてもしょうがなくねみたいな感じで、早くいかにZ世代とかそういういわゆる若いインフルエンサーにいくとか、芸能人にいかに最初に使ってもらえるかとか、芸能人じゃない濃いコミュニティもたとえばゲーム配信のめちゃくちゃ人気のある人を最初に連れてこようとか。

そういう、ある業界の広がるインフルエンサーをまず最初にダイレクトにとりにいってたのが今回はITインフルエンサーがそいつらを連れてきて、いろんなところにバイラルし始めてるっていうところにおいて、今まで見たことないバイラルだなっていう。

前田:そうですよね、だから一気にキャズムを超えたというか、IT層以外の属性を結構巻き込んでますもんね。

福島:多分もう完全に入ってきてますよねこれ。

前田:中長期でどう思います?このプロダクトのポジションってどこにいくんだろうっていつも投資家目線で見てるんですけど。

福島:なんかQuoraがでてきた時に近いなと僕は初見で思ったんですけど。ただ今のバイラルの仕方を見るとQuoraより全然もっとマスな層にいってるんで、Quoraだと現状ちょっとかなり収益上がってると思うんですけどプライベートな課金の方にいってるというか。濃い層にいかに使ってもらえるかみたいなところにいくのかなと初見では思ったんですけど。

もしかしたら気づいたらインスタみたいになってるかもしれないですね。

前田:Clubhouse疲れとか出てくるんですかね。

福島:もうみんな疲れ始めてますよね(笑)

前田:個人的にはやっぱり、計画性がないうえ、自然にいろんな会話が生まれるのすごい良いとこなんですけど、逆に言うと、だらだら話とか情報が流れる傾向があるかなと思っていて。それって聞く側は結構疲れるんじゃないかなと思ったりしますけどね。

福島:そうですね。正直、そんなめちゃくちゃずっとマスなままずーっと残り続けますみたいなサービスの感じはしないですよね。今はどっちにせよ、彼らもそんなことはわかって意図的にやってると思うんですけど、世界中で同じようなバイラルが起こってるんで。バイラルでユーザー数伸ばせることは証明できたから一旦それで突っ走ってみようみたいな。そのうえで、何が残るかは勝手に淘汰されていくんじゃないかみたいな経営の仕方をもしかしたらしてるかもしれないですよ。

前田:でも本当に久々にこんなに盛り上がるものがでてきたなと。toCの世界で。

福島:やっぱSNSですよね。

DX総合商社の構想について|なぜ請求書に注目したのか

前田:じゃあ一気にスイッチ変えるんですけど、BtoB SaaSの話をしましょうっていうとこで。

本当に、今回1年ぶりに収録してあれから福島さん、経営もそうですし、やってることも出始めてるというかこの前リリースね、LayerX INVOICEも出てきて。ちょっとLayerX INVOICEのアイデアというか、そこに行き着くまでの経緯ってうかがえますか?

福島:そうですね。まずLayerX社が今どういう事業体でやっているかっていうのと、どういう事業体を最終イメージしてるのかっていうところから話すのが良いかなと思うんですけど。

僕が思ってるLayerXのある種完成形でいくと、まずデジタルな何かしらの事業がありますと。今はアセマネ事業とかをどんどんデジタルシフトさせていこうと。ユーザータッチポイントもそうだし、業務の流れ自体も全部デジタルに乗っけてってるし、そういうデジタルスクラッチな事業を持ってくなかで、そこってめちゃくちゃバーティカルなんですよね。バーティカルなところは事業を持とうと。ただバーティカルな事業をリアルで触る中で、ホリゾンタルに展開できるプロダクトっていうのがやっぱぽこぽこ生まれてくるんですよね。それの1つがLayerX INVOICEですと。

なので事業をやるなかで、あんまりSaaSだとか、これマーケットプレイスですとか、いやこれはデジタルなマーケティングのなになにですっていうジャンルよりも、事業を持ってるSaaS会社みたいな。で、SaaSを持ってること自体が事業にフィードバックされるし、事業を持ってること自体がまた新しいSaaSの新商品であったりとか既存商品のアップセルにつながるような、そういうDX総合商社みたいなところをLayerXは目指してるので。まずその構想の中で生まれてきたものですと。LayerX INVOICE自体はゴリゴリのSaaSプロダクトなので、SaaSの方程式にしたがってとにかく伸ばしていこうって考えてます。

どういうところから着想を得たかっていうと、実際アセマネ業務を実は僕は人を送り込んで、たとえば会計業務にだいたいみんなアセマネ会社のオービックとか使ってるんですけど、freeeとかマネフォとか使えないのとか、契約って紙でやってるんでクラウドサインかDocuSign入れて稟議と電子契約を繋げちゃおうよとか。するとバックオフィスの人数が半減させることができる。

そういう地味なことをやってくなかで、今の世にあるSaaSを組み合わせてもどうしても解決できない領域みたいなところの1つが請求業務だったんですよね。請求というか受け取り業務ですね。請求書を送る方の業務はMisocaとか、元ピクシブの伊藤さんがやってるスケールベースとかもバックオフィスの請求管理だけじゃなくてもうちょっと顧客管理みたいなところも含めてやってるんですけど、ああいう系の売上を管理するみたいなサービスはやっぱり死ぬほど僕らも探してるんですけど、boardとかもそうだし。請求書受領側はやっぱり難しいんですよね、請求書受領側作ろうと思っても。送る側ってある種自分たちが持ってるデータを加工して相手に合わせますみたいな作業なんですけど、請求書のフォーマットもバラバラですとか、仕訳自体も結構各社によって切り方変わりますとか。結構SaaSとして切り出すのが若干難しかった領域なのかなと。

ただ今の技術とか、今の会計ソフトとか稟議ツールとかある程度デジタルで揃ってるような状況だと実はSaaSとして成り立つような領域になってるっていうのが、なんとなく僕らが見つけた真実で、なのでそこで今。

外から見るとなんでLayerXが請求書受領のSaaSを作るのみたいな感じに見えるかもしれないですけど、僕らのなかでは一個一個の業務の中で見つけてきて、埋められてない穴みたいなところにチャンスを見出してるっていう。

ヒアリングと検証の進めかた

前田:これ見つけ方ってどういうふうにしたんですか?最初ある程度たぶんこの領域いこうとか、この分野にいこうみたいなのを定義されていたと思うんですけど、そっからどうやって深掘っていったというか、検証していったんですか?

福島:まず大前提、LayerXが何に興味があるかっていうと、ブロックチェーンの事業も含めてやってるなかで、お金の流れとか価値の流れ、広くいうと。そこを、紙とかアナログな作業じゃなくてデジタルで扱えるようにしようっていう領域にすごく興味があるし、そこをなめらかにしていこうっていうのがLayerXのミッションにもある、「すべての経済活動を、デジタル化」しようと。なので価値とかお金とかが流れる場所で、デジタル化ができると世の中ってすごい良くなるよねとか、すごいインパクトがあるよねみたいな視点でまずいろんな事業を探してるんですよね。

そのなかでじゃあその、アセマネ業種とか請求書受領業務とかは何ていうんですかね、一見離れてるように見えるんですけど、価値を扱うとか、お金の流れをデジタル化していく、価値の流れをデジタル化していくっていう意味で実は大きな文脈では一緒に乗っているんで、あくまでそういうなかで、じゃあ請求書のやりとりの業務ってどうなってるんだろうとか、契約書のやりとりの業務ってどうなってんだろうとか、アセットの管理の仕方ってどうなってんのとか、ここって銀行のある種銀行APIとかで上手く繋いでもっとシームレスにデジタルなUXで作れないの、とかそういうことを考えてるなかから生まれてきたっていう感じですね。

前田:多分ヒアリングをたくさん重ねていったとおもうんですけど、どういった構成のヒアリングをしていったかだったりとか、ヒアリングを重ねていくなかでの気づきみたいなのあります?テクニック面で。

福島:まず、最初デモすらなく、紙芝居でヒアリングしてたんですよね、教科書通り。そんときにヒアリングした方法は結局、割とその段階ではあんまりまだ請求業務って絞ってなかったんで、もうちょっと広くコーポレートの業務が実際にどういうフローで行われているかと、あとそのなかで管理者視点、ヒアリングしてた対象も経理の実務やってる人とか管理の実務やってる人に加えてCFOとかヒアリングしてたんで、何を一番解決したいですかと。今社内で手をつけられていないけど解決できるとしたら解決したいことってなんですかみたいな視点で結構バーっといろいろ最初はヒアリングしてったって感じですね。

ただそこで請求書受領業務がめちゃくちゃ上位にくるかって言うと、上位に来てるわけではないんですけど、まあ最初は割とそういうヒアリングをしたと。で、結構この領域でいくぞって固めてからはむしろ思いっ切りデモを見てもらったうえで、プラス実際の業務フローを今具体的に、じゃあその請求書を受け取ってから何ならその発注をどうやってるか、稟議をどう通して受け取って支払いから仕訳の業務まで実際にどういうシステムを使ってどうやってるかみたいなところとそこに感じるそういうペインを、これをためたときにどう改善されるかみたいなところの具体的なお互いのイメージを持ちながらヒアリングしていく、みたいなことをやってました。

「これが欲しいですか?」「これ使いますか?」っていうよりは、「これが業務にはまると思いますか?」と、はめた時に実際に工数が削減できるイメージが湧くかっていうところをかなり重点的に僕らの中でヒアリングで検証したいと考えていた項目です。「欲しいですか?」って聞いたら「欲しい」って言うに決まってるんで(笑)

「使いますか?」っていう質問もやっぱり結構リアリティもって商談しないと僕はあんまり意味ない質問なのかなと思っていて、買いますよ、やりますよって言ってやらなかった例をいっぱい見てるんで。

むしろその、自社の業務に薄くパクッとはめられるかみたいな、これ入れるとここの業務フロー変えないといけないのでしんどいですね、みたいな反応がでるかでないかとか。あとは実際に、金額というよりは業務がちゃんと楽になった実感が持てそうですかみたいなところを結構重点的にヒアリングポイントにしてたっていうところですかね。

前田:プロダクト、何を作るかだったりとかどういう機能を入れていくかって、決めるプロセスってありましたか?今日福島さんのツイートでも、プロダクトは引き算という言葉が出てきたので、そのへんの考えとかフィロソフィーとか進め方ってあります?

福島:全部の顧客を探索できないっていう前提で、何となく売りたい顧客のイメージはできているんで、当たり前ですけど1社ヒアリングしたデータだけでは作らないっていう。ただその、観点を聞いていくなかでも、完全に受注・失注みたいなゼロイチの話じゃなくて、もうちょっと間ふわってしてるじゃないですか。これがあったらいいなとか、これがあると決めれますなのか、これがあったら良いなのかみたいなところをちゃんと営業プラスヒアリングみたいなところでちゃんと聞いていて。マストっぽい機能と、よく言われるMust to haveな機能とNice to haveな機能っていうのをちゃんと振り分けて、Nice to haveは作らない、相手のノックアウトファクターになるような機能だけは優先して作ろうと。この請求書受領サービスの本質的なところは経理の手入力を減らすことで、そこに1番帰するのはたとえばOCRでの読み込み精度であったりとか、そこからの仕訳の予測だったりとかするんで、そこはめちゃくちゃコア機能として作り込もうと。それ以外のサブな機能だけど業務にとって重要な機能はMust to haveなやつだけを作ろうっていう感じで機能を絞っていってるって感じです。

だからすごい誘惑ありますよ。これ、SaaSの経営者すごいなと思って。これ作ったら入れますって言ってる顧客が目の前にいるのに、あえてその機能を作らないっていう意思決定をしないといけないんで。これは結構忍耐力がいる話だなあという。

前田:そこ面白いですよね。いろんなお客さんと話していると、やっぱり「これ作ったらいれますよ」とか「これあったらもっと払いますよ」って誘惑が多いじゃないですか。

福島:はいはいはいはい。めちゃくちゃ多いですね(笑)

前田:その誘惑に負けない方法って...

福島:僕負けそうになってます(笑)

前田:それってやっぱり、ブレない軸を持った方がいいってことなんですかね?

福島:まあ、とはいえ、ジェネラルな機能ではないんですよね、結構。なので、本当にそうか?本当に(その機能が)ないと入れないのか?みたいなところは、「こういう方法でこれって解決できないですか?」とか、「そもそも既存のあるSaaSのこの機能をもっとこう活用することで、この役割を減らしてもっと入れられないですか?」みたいな、使い方の提案をすごい考えることが多いですね。

営業時に機能のロードマップを共有しないワケ

前田:なるほどですね。ちなみにこのプロダクトのロードマップって、お客さんに共有してますか?

福島:口頭レベルでは、こういうものをこれくらいまでに出しますみたいな話はしてます。ただ、めちゃくちゃ絵にして見せるかっていうと多分そこまでのフェーズではないので。どっかの段階でそういうこともやろうかなとは思うんですけど、正直まだそこまで成熟したプロダクト組織でもセールス組織でもないんで。割とチームの中で共通認識では作っているんで。

あと、話すと野暮みたいなケースもあるっちゃあるんですよ。要は、機能が増えてくるから、機能が増えた後に意思決定したいですみたいになるのが顧客心理だと思うんですよね。でも正直、現状の揃っているプロダクトでも8割くらい、あなたの業務において8割くらいインパクト出せますと。でも別に、その顧客からすると今この瞬間決めなくても、数ヶ月後にこの機能出るなら数ヶ月先に決定を遅らせた方がいいみたいなインセンティブが出ちゃうじゃないですか、SaaS的なプロダクトだと。

もちろん当然そういうロジックで値上げしていったりとか、もしかしたら僕らも商談いっぱい入ってくるんで商談の優先度が下がるとかそういう話はあるかもしれないですけど。彼らからすると、機能のロードマップを出してしまうがために、今入れなくてもいいのかなみたいな。いわゆる「Why now?」が弱まっちゃう可能性があるので、そこは営業のさじ加減。この規模のお客さんだとこの機能がないと絶対に効果が出ないんで、その場合はそういったロードマップを示したうえで、ある製品の将来性を買ってもらうというか。そういう営業をいかなきゃいけない時もあるし、逆にあえて見せないことによって今決めた方がこっちとしても自信を持ってお得ですよと言えるし、先方はそんな基準持ってないんで、むしろあえて見せないことで今決めてもらうみたいな。

でもそれは別に邪悪なことをしてるというよりは、絶対今決めた方が得なんですよ。ただそれってロジックで説明しづらいんで、こっちの論理であえてロードマップを出さないみたいな。言うと野暮になることは言わないみたいなこういうのは営業の小手先のテクですけど、やっていて意識した方が良いなと思ったことですね。いろんな営業のプロの方がいるんで、そういうのを話しまくって、「いやそんなの間違ってる!」みたいな話が出てくるかもしれないんですけど、少なくとも僕がいま実地でやってる肌感覚では、機能のロードマップを全部出すことが必ずしも善ではないなっていう。顧客のためになるかっていう視点で出すか出さないかを判断すべきだなっていう感じで考えてますね。

前田:期待値コントロールがすごい重要ですもんね。未来こうなるからっていう期待で入れられると、そうならなかったときにだいぶね。

福島:チャーンしますからね。

前田:そうですね。なのでできる限り、いま現状あるもので導入決めてもらうというスタンスで今やってるという感じですね。

福島:そうですね。

前田:福島さんの役割はこのプロセスの中で、アイデア検証から課題発見からプロダクト開発まで、このプロセスのなかで福島さんの役割って?

福島:かなり営業に寄せてますね。これは多分チームによると思うんですけど。うちの場合はやっぱり、とはいえブロックチェーンコンサルとか、そっち側のtoBとかエンタープライズのある種プロジェクトをマネージメントした経験のあるメンバーとか、そこでマネージメントも、コンサル自体マネージメントできるメンバーが揃ってるんで。逆にプロダクト開発のところとかは、あんまり僕触ってないんですよ。触ってないって言い方はちょっと語弊があるんですけど。むしろ自分の役割ってある種、プロダクトができるできない以前の瞬間って鶏卵問題で、どうやって顧客候補にリーチして、ちゃんとニーズを引き出してくるかとか、最初に実績がないなかでもどうやって興味を持ってもらって、実績作って、そこである種営業の勝ちパターンを作って、よりインバウンドに寄せていってプロダクトをスケールさせていくかみたいなところの、最初はどうしてもパワープレイとか、サイエンスじゃないフェーズってあるじゃないですか。そこが1番価値があるって思ってるんで、そこをやってるってところですね。

前田:やっぱり特に、お客さんの声に1番近い立ち位置にいた方が良いですもんね。最初の頃は。

福島:そうですね。僕も結構、ポッドキャストだから聴きまくってるんですけど(笑)チームも多分全員聞いてるくらいの感じで。

前田:嬉しいです(笑)

福島:やっぱり共通点として出てくるのが、SaaSっていかに顧客の声を拾うか、それを正しく優先度を組み替えていわゆる絶対負けない、この顧客の層では絶対、どんな強い競合がこようが負けちゃいけないという顧客ターゲットを決めてそこに必要な機能を、特にMust to haveな機能をどんどん入れ込んでいくっていう。いろんな方がいろんな言い方をするんですけど、みんな同じことを言うじゃないですか。だから、一旦そこに真理があるだろうということで、それがちゃんと実践できるような、LayerXっぽくなんですけど実践できるような組織になっていることが大事かなっていう。そのなかで今いるメンバーの特性とか能力とかを考えたときに、自分はフィールドセールスっぽいことをやった方が1番チームにレバレッジがかかるって考えているから、それをやってるって感じです。

シード期のSaaSスタートアップのチーム構成

前田:実際そのSaaS事業を作ってみて、チーム編成とかチーム構成、どういうふうにチャレンジしてきたんですか?どういうふうにやった方がいいとかあります?

福島:SaaS事業を作れてるっていうほど、正直形になってるものではないので、超シードフェーズですっていう段階ではやっぱりSaaSてよく言われるTHE MODELとか含めて、明らかに序盤と中盤で経営の軸足が違うというか、中盤以降はどう考えても組織作りとか営業組織をスケールさせるとか、開発組織をどうスケールさせるかとか、組織の話とかそこの生産性をいかに保つかみたいな話にフォーカスが当たるんですけど。

最初は小さいチームでやった方がいいなって。小さいチームでやって、ARRとか追いたくなるんですけど、追いたくなるのをグッとこらえて、とにかく腰を据えて、いかに顧客の声を熱量高く聞けるチームを小さく保ってやるかみたいな。だから正直、実は今僕らの段階で言うと、プロダクトマーケットフィットって言うのは憚られるくらいの状況なんですけど、とはいえある程度見えたから踏もうよみたいな段階にはきてるんですけど。それまでって全然チームの人数とか増やしてないんですよ。

で、結構社内異動とかで増やせるみたいな話も、そうした方がいいんじゃないみたいな話もあったんですけどあえて増やさなかったというのも含めて、本当にプロダクトの種ができて実際にユーザーに使われて、カスタマーサクセスっていうとベタな言い方になっちゃうんですけど、たしかに顧客に実際に喜んでもらえて楽になってるねとか、明確にこれ使ってよかったねみたいな反応が出ているのが見えるまではとにかく小さく、素早く動けて、最悪その仮説は間違ってゼロから作り直すぐらい全然あるよくらいのメンタルを持てるようなチームで多くても10人だし、4,5人くらいのチームで動くのが良いんじゃないのかなって、まあ事業できてるわけじゃないんで偉そうなことを言う立場でもないんですけど、なんとなくその方が良いんじゃないかなという感覚があります。

前田:なるほどですね。実際何人で挑んで、どういう構成だったんですか?エンジニア何人とか。

福島:うちの場合はリソースが豊富にあったんで、いろんな仮説を試そうという前提で10人くらいのチームでエンジニア7人とかでやってました。

前田:超エンジニアヘビーでやりましたね。

福島:開発がめちゃくちゃ速いです。

前田:速そう。残り3名は?福島さん含めて。

福島:営業プラス、PMでうちのチーム構成でいうと、うちの場合顧客って経理になるんですよ。経理の実務がわかってる人間が今PMをやってるんですよ。で、PMと実際プロダクトオーナー的なとこですね、が1名いると。

会社がコアにすべき事とノンコアにすべき事

前田:なるほど。福島さんのnoteでコアとノンコアについて書いてたと思うんですけど、ちょっとこれについてもう少し聞かせてください。その辺の考えとか、どの辺をコアにするべきかコアにしないべきかっていう決め方を教えていただけると。

福島:コアにすべきものっていうのは実はかなり少なくて、市場よりも自分たちが上手くできることですよね。逆にノンコアにすべきものは市場の方が上手くできているもの。たとえばゼロからSaaS組織作りますと。で、CRMツールを内製化しますっていうチームがもしいたらヒロさんならどうしますか?

前田:やめた方が良いと思います(笑)

福島:絶対言いますよ(笑)絶対SalesforceかHubspotを使った方が、とかSansanを使った方が、市場に自分たちより上手くできる人がいるからそれを活用してむしろ彼らができない付加価値を提供すべき。やっぱシンプルにそれで分けてるんですよね。SaaSの場合だとある程度最初からそれなりのミドルバックとかも必要なんで、やっぱ顧客管理とか課金管理とか契約管理とか。それも内製化しようとしたら絶対止めるじゃないですか。普通にマネフォとクラウドサインで良いじゃんとか、freeeとDocuSignで良いじゃんみたいな。そういうところですかね。

事業におけるコアっていうのは市場より自分たちが上手くできることであって、それ以外の部分は今でいうとThe SaaSみたいな話なんですけど、たとえばプロダクト作るなかでも今ってクラウドって言ってもインフラを提供するだけじゃなくていろんなソフトウェアモジュールを提供してくれてるじゃないですか。テナント管理基盤とかID管理基盤とかSaaSにかぎらずいろんなプロダクトを作りやすくするためのソフトウェアモジュールっていっぱいあるんで、そこはもう完全に乗っかってますね。

前田:そこはスクラッチで作らず、突き合わせでやってるってことですね。

福島:そうですね。その代わりプロダクトのコアっていうのは本当に、その顧客がたとえばそういったものをガシャッとたとえばAWSのこれ使ってこれ使ってとか言って渡されて解決できない課題ってあるじゃないですか。そこを作るっていうのが、具体的にこれを組み合わせてどういう機能になってると経理のこの作業が、たとえば10分の1になりますかとか、そこの部分が僕らはコアだと思ってるんですよね。逆にそれ以外は、究極ノンコア。

前田:今、ノンコアで実際使ってるものってなんですか?SaaSプロダクトだったりとか、モジュールだったりとか、どういったもの使ってるんですか?

福島:さすがに細かいところまではあれなんですけど、いわゆる今出たようなHubspotは使ってますとか、Salesforce使ってますとか、Sansanも使ってるし、まあマネフォ、クラウドサインも使ってるしとか、そういうバック周りとかミドル周りのはほぼほぼSaaSですよね。あと、LPを誇るつもりはないんですけど、1日で作ったんですね(笑)

前田:ヘ〜すごい。

福島:本当はもっと色々とやってく上でLPって大事なんで。Unstackってわかります?

前田:初めて聞きました。

福島:USの、LPだけじゃなくて本当に超簡単なホームページビルダー、これでさっとLPを構築したりとか、ID管理周りとかもSaaS使ってますね。テナント管理とか。結構SaaSはそこらへんが肝というわけじゃないけど、誰もが実装するけど別にそこが気に入られてるから「このID管理めっちゃいいっすね」みたいな感じで選ばれるSaaSってほぼ無いと思うんで(笑)ID管理以外のSaaSでいくと(笑)そういうものはSaaSに頼ってますよね。

前田:今後、事業拡大していくなかで取り入れたいSaaSプロダクトとかあります?

福島:あ〜、そうですね。これからの課題でいくとインバウンドのマーケのところと、営業組織をいかにスケールさせていくかみたいなところなんで新しいSaaSを取り入れるっていうよりは、世に言われるようにHubspot、Salesforceをいかに使いこなすかってところと。マーケ側でSaaSっていうほどではないと思うんですけど、効率よくリードを作っていけるようなマーケ手段を提供するようなサービスがあれば使っていきたいなって。だからウェビナー系とかウェブ展示会みたいなところは試してみたいなと思ってます。SaaSじゃないですけど。

前田:本当にマーケ周りとかセールス周りとかにたくさんSaaSプロダクト出てきてるので、これ以上出てくるのかと思った時にどんどん出てきたりとかするので。この辺はだいぶ多分、ノンコアで良いんじゃないかとは思ってますね僕は。

福島:それを本業にやるのであればコアと位置付けるんですけど。

前田:そうですね。逆にLayerXのコアってどういうふうに定義されてるんですか?ここは僕らのコアだみたいな。

福島:1番わかりやすいのはOCRの部分とかですかね。OCRってこういう機械学習の領域とかって、ノンコアの部分が広がっていってるんで、どんどんそもそもコアの部分が変わってきますよっていう前提の上で、ジェネラルにやれる部分。たとえば文字取ってきますとか数字とってきますとかそういう部分はどんどんコモディティ化されていく一方で、文字を使ってどうやって経理の業務を楽にするのみたいな部分って別にコモディティ化されない領域だと思ってるんですよ。なんでそこはかなりコアだと思って作り込んでるって感じです。

前田:じゃあ、読み取るデータというよりも読み取ったデータをどう扱うかということですね。

福島:そうですそうです。

前田:なるほどなるほど。じゃあ今後もそこをコアにして、強めていくという感じですね。

福島:そうですね。ただ、ある程度読み取るにもかなりデータ数必要なんで、そういう観点でいくと正直、この領域にたくさんSaaSが乱立するか、会計ソフトとか請求書送る側のツールみたいに乱立するかっていうと乱立し得ないようなマーケットだなっていう。一定参入する水準がそれなりにあるなっていう。データが集まってきたプレイヤーがどんどん強くなっていくんで。

たとえばAI OCRのプレイヤーとかでいくと、いま上場マーケットだとAI InsideとかLINE OCRとかRICOH OCRとかぐらいしか正直、選択肢に上がらない。そのなかでもAI Insideがとんでもない伸び方してると思うんですけど、技術者から見るとあんなのはすぐに真似できんじゃんって直感的には思っちゃうかもしれないですけど、データが集まるサイクルができちゃってるものは意外と参入障壁が高いなっていう意味において、まず僕らもその障壁を最初に作りにいこうと。といっても、最初に1,000社集める会社がどこですかみたいなそういう勝負にはなると思うんですけど、普通のSaaSと変わんないですけど。後から競争の変化でひっくり返されることがきわめて少ない領域だなとはやってて感じます。

前田:なるほど。

福島:だから、ある意味そこの部分もコアっちゃコアなんですけど、コアでもあるしコモディティでもある。ただ、そのコモディティになるための最初のハードルがすごい高いですよみたいな。

SaaSのモート(競合優位性)をどう作るべきか?

前田:さっき参入障壁っていう言葉が出てきたんですけど、福島さんのなかで、現時点でSaaSのモートって言うんですかね。みんなモートモートって言ってるんですけど。参入障壁の作り方とか、モートの作り方って何だと思います?

福島:業務における人手がかかる工数をかなり下げてる会社は、モートというよりはスイッチングコストがめちゃくちゃ高いですよね。要は、人手で結構工夫して頑張ってますとか、ペインがありますみたいな状態で入っちゃってるサービスっていうのは、全然違うルールでまったく人手がかからないようなサービスが出てきた時にかなり置き換えられる可能性が高いと思うんですけど、そこは別に機械学習的なロジックがなかったとしても、いろいろな工夫で人手が減るようなとか、やってる側のストレスが減るようなっていうところが、ストレス度合いが基準値100あるとしたらそれが1とか2とかになってるようなサービスは、実はかなり長く技術の変化とか環境の変化にも負けずに耐えうるサービスなんじゃないのかなと。

前田:たとえばってあります?特にこのサービス最近見たものでそれに当てはまるなと。

福島:ベタですけどSmartHRとかクラウドサインは、こういう言い方をすると失礼になるかもしれないですけど、めちゃくちゃ複雑な技術を使ってるわけじゃないじゃないですか。けどすごく、使う人側の工数とか労力を下げていて、逆にそこに高度な技術を入れたところでそれ以上下がるかみたいなところまで下げれてる。だからSmartHRとかクラウドサインがアドオン的にエンジニアを採用して、さらにそこの工数を下げるような、より高度な仕掛けをしてくってのはイメージがわくんですけど、新規サービスがそこに入ってきて、そこをたとえば今これくらい払っていてこれくらいの工数のものを100倍良くなりますみたいなもので払わせられるお金がすごい減らされてる状態になってる気がするんで、簡単にはひっくり返らなそうだなっていう。今後とっていく新規顧客は別ですよ多分。また全然違うルールで戦う人がいるかもしれない。

今入ってるお客さんに関してのスイッチのしやすさしづらさでいくとそういうところで、あとはその業務効率性がSaaSサービスに入ってるデータに紐づいている場合はよりスイッチしづらいですよ。

たとえばSansanとかをスイッチするかっていうと、もしかしたらSansanよりも読み取り性能の良い、あんま考えづらいですけどあそこってBPO組み合わせてるんで、より低労力で読み取り性能の良い、スキャナーみたいな話じゃなくてもう写真撮っただけで読み取れますみたいな。今もうすでにSansanが提供してるんで、ちょっとシャビーなアイデアになっちゃうんですけど。めっちゃ早く精度高く名刺化してくれますって言っても多分Sansanを乗り換えることにはならないと思うんですよ。そこにすでにデータアセットがあるんで。

前田:そうですよね。名刺データとか顧客データとかいろいろあるので移行するのが大変ですもんね。

福島:そうですね。だから、データとそのサービスが提供している付加価値が密接にリンクしているものはちょっとやそっとじゃ置き換えられないなっていう。

SaaSはいきなりエンタープライズにいくべきか?

前田:いま福島さんのホットトピックってあります?

福島:結構これいろんなSaaS企業経営者が悩んでることだと思うんですけど、「いきなりエンプラ理論」ってあるじゃないですか。SaaSはいきなりエンプラに行ったほうがいい。これヒロさん、現実的にどう思いますか?

前田:これは、勇気がある経営者はやってるんですよね。

福島:なるほどなるほど。

前田:たとえば何ですけど、アメリカのアントレプレナーで大体初めて起業する人たちってSMBとかミッドマーケットとか入っていくんですね。セールスサイクル短いし入りやすいし導入のハードル低いし。だけど実は2回目起業してるSaaS経営者っていきなりエンプラいくんですよ。

福島:はいはいはいはい。

前田:なんで、Workdayも確か元ServiceNowだったかな?の経営者だったし、Veevaも元Salesforceの経営者だったから2社ともいきなりエンプラ、いきなり億単位の契約をとりに行ってるので、別になんか必ず最初からいきなりエンプラいきましょうって話ではないんですけど、シリアルアントレプレナーは結構最初からエンプラいく傾向あるなっていうのはあります。

福島:まあ、SaaSのシリアルって感じですよね。

前田:SaaSのシリアルですね。

福島:極めて納得感のある整理です。いや勇気いりますよね。

前田:福島さんはあります?

福島:僕はその勇気ないですね、正直。というのも、ネットワーク正直ないですし、toCの経営者として僕は結構有名だと思うんですけど、別にエンプラからすると「は?誰君」みたいな。しかもエンプラプロダクト作った実績があるわけでもないんで。クレジットがない人がいきなりエンプラをやるのはかなり勇気がいるなっていう。換金化するまでに、もしかしたら最初の売上つくまでに2年とかかかっちゃう可能性すらあるじゃないですか。そもそも2年分のキャッシュを誰の説得を得ずとも集めてくれるクレジットがあってかつ、少なくとも営業できるタッチポイントをある程度持ってる人じゃないと「いきなりエンプラ理論」はなかなか成立しづらいなっていう。

前田:まさにそうですね。やっぱり売上の立ち上がりがすごい遅いんですよねエンプラだと。もう下手すると2年やったけど2社しかお客さん入らないみたいなそういう状況になってしまうんですけど、でも本当に長期間エンプラセールやったことあるとかエンプラのSaaSやったことある経営者は普通なんですよねそれが。2年後は2社かもしれないけど、じゃあ3年後4年後になってくるとそれが20社になるから。

福島:それでARR数十億だろと。

前田:そうそうそうそう。そういう考え方でやってるんですよね。さっきクレジットの話もあったんですけど、やっぱりSaaSのシリアルアントレプレナーはすでに前の会社で持ってたお客さんリストじゃないですけど、この信用みたいなものをそのまま連れ出すじゃないですか、嫌でも。なのでそれを上手く活用して最初のお客さんを作っていったりとかしますね。

SaaSスタートアップの真の競合

福島:それで言うと、SaaS企業の真の今後の競合は、今はSaaSでも上場してかなりの規模になってきてる会社増えてるじゃないですか。ARR100億超えの会社もSansanとかサイボウズとか出てきて、freeeとかマネフォとかもそろそろいきそうですみたいな。

彼らが「いきなりエンプラ理論」で立ち上げてくるSaaS、ラクスもそうですし、と新興企業のSaaSがぶつかり合うみたいな。登り方は違うけどみたいなケースがすごい増えそうだなっていう。

前田:そうですね。それは今後出てくると思いますし、もうアメリカですでにそういう動き出てますよね。だからSalesforceもそうだし、いろんなSaaS企業も最初からどんどんエンプラファーストの新しい機能とかプロダクト出してくるので。

福島:やれるならでも絶対そっちの方が良いですよね。そりゃあもう理論ではわかってるんですけど。まさに勇気と言う言葉が(笑)

前田:でもやっぱり、エンタープライズレディも、結構MVPの定義が変わるじゃないですか。

福島:はい。求められる水準だいぶ上がりますよね。

前田:だいぶ上がりますし、検証が難しいと思うんですよ、正直。今は多分、福島さんがやられてるスタイルってできる限り引き算で本当に最低限の機能で説得しようっていう感じですけど、引き算の仕方がすごい難しかったりするじゃないですか。たくさん引いたのに、でもノックアウトファクターを残してしまったとかそういうのがあるから、この最初のMVPの定義すごい難しい。

福島:あれですかね、ちょっと考え方によるんですけど。SaaSの定義じゃなくて、もし僕がAIベンダーの経営者だったらいきなりエンプラを狙いますね。

前田:ほう、それはなぜ?

福島:やっぱりノックアウトファクターになりえないというか、今までとまったく違うロジックで、かつ説得コストが低い、AIをやりたくないって言ってるエンプラの経営者ってもう多分1人もいないと思うんですよ。っていう説得とか予算を取るみたいなコストが、説得コストの部分がほぼゼロに今潰されてる状態で、かつやれば絶対成果出るんですよ。もう絶対分かりきってるんですよ。データがあるとこに人手でやるんじゃなくて、そんなかっこいいロジックを持たずとも、機械学習的な、ないしは機械学習まで行かないレベルのロジックでも当てはめれれば絶対成果出るんで。予算も取りやすいし継続もしやすい、かつ、ある程度データがないとそもそも成果も出づらい。要は、何%改善しましたみたいな話が多いんですけど、それを100人の規模の会社に当てはめてみるよりも、1万、下手したら10万とかの規模の会社に当てはめた方が得る売上が大きいって意味で。

なんで、僕も結構上場してるSaaS企業とそういうSI系の企業バーって調べるんですけど、AIベンダー系だけはエンプラファーストで行ってて、それ以外のSaaSはすべてSMBとかミッドファーストで行ってるっていう。

前田:なるほど、面白い。

福島:ただ、最終的な売上のシェアのとこでいくと、それはミッドとかエンプラがメインになるんですよ。ただその仮説検証の段階でまさに素早く検証しながらプロダクトを磨くことを優先してるか、機械学習系だとそもそも磨くのに大量のデータが必要だからそこも含めてエンプラファーストでとりにいける会社じゃないと逆に成功してないっていう。

前田:だからPKSHAとかAI Insideとかは結構エンプラ多いんですね。メイクセンスですねそこは。

SaaSの良さとかSaaSの限界って、福島さん実際プロダクト作ってみて感じてますか?

福島:SaaSの良さは個人的に、ビジネス倫理上良いなって思うのが、SI型のビジネスって最初にリスクをとった人が損する構造になってるんですよ。なぜならAIベンダーとかも含めて知見貯まっていくじゃないですか。知見貯まっていくけど人月下がっていかないじゃないですか。人月固定なんで、同じ人月で払えるならノウハウある会社に任せられる方が、つまり、同じプロダクトとか同じ業務を依頼したところで最初の方がやっぱり学習コストを払ってるんですよ。けどどんどん洗練されていくんで、後に払う人の方が得をするモデルになってるというのが、僕のビジネス倫理上嫌なところで。

SaaSの場合って、最初まず一般論、値段はちゃんと設計しろっていうのはあるんですけど、やっぱり最小限の機能から入るんでそれ相応の価格になるじゃないですか。それがどんどん改善を積み重ねていくことによって良いものになっていくし、値段も上がっていく。だから、最初リスクをとった人は得をしてるし、後になった人はちゃんと価格相応のものを買えてるっていう。だから逆になってるっていうのが、とてもSaaSが良いところというかなんというか、すごく気持ちよく経営できるなと。

前田:僕がSaaS好きな理由はまさにそうですね。矛盾のなさが良いですよね。

SaaSの限界

福島:で限界が、とはいえSaaSの思想ってどうしてもやっぱりジェネラルなものとかカスタマイズをしないものを作ろうって、僕もやっぱそう思考するんで、なるんですけど。エンプラにいけばいくほど、エンプラとかの相談を聞けば聞くほど、個別要件が多いなっていう。

だからSaaSとSIの中間みたいな会社ってやっぱ必要になってくるんだろうなっていう。だから僕らは事業持ったSaaSプレイヤーというか、コンサルを持ったSaaSプレイヤーみたいなのを中長期的には思考してるんですけど。そこの限界、SIerとか嫌いなITコンサルとか、嫌いな人多いんですけど、多分極めていけば極めていくとその境目ってほぼ無くなる。SaaSのプレイヤーであろうが、ITコンサルのプレイヤーであろうが、境目はなくなると思ってるんですよ。比重はあれど、プロダクトドリブンなのかコンサルドリブンなのかとか、BPOドリブンなのかプロダクトドリブンなのかとかみたいな差はあれども、やってるスタイルとか仕事の仕方はあんまり変わらなくなるなと思って。そこはSaaSの限界っていうよりは、頭を切り替えなきゃいけない瞬間が来るんだろうなっていう。

前田:面白い。まさに僕もその辺を考えていて、どんどんどんどん細分化されたプロダクトとかソリューションが出てくる中で、多分なかなか応用性の高いユースケースってどんどん少なくなっていくと思うんですよね。そうすると、だいぶその会社なのか、複数の会社にしか使えない何かしらのカスタマイズなのか利用シーンなのか、ニーズみたいなのがやっぱSaaSだと行き届かなくなっちゃって、そのカスタマイズかコンサルかみたいな感じが必要になってくると思うんですよね。

そう考えたときに多分ハイブリッドみたいな、SaaSとSIのハイブリッドみたいな形の会社が、いつだろうね、多分5年後とか10年後とかかもしれないですけど。まだまだSaaS普及からアップサイドまだまだあるんで、そこに行き着くまでもう少し時間かかるかもしれないですけど。でも5年10年単位で考えたら、こういうハイブリッド戦略ってのは必要になってくるかなとは思いますね。

隠れた有望SaaS企業

福島:あと、そこのハイブリッドにもう1つプレイヤーが参入してくるなって思ってるのが、実際に業務やってる会社がバーティカルSaaSで入ってくる。これは結構もういくつか例は出てきてて、それこそ世界最大の資産運用会社ブラックロックって子会社にブラックロックソリューションズっていうのを持ってるんですけど、ここのARRって200億なんですよ。まあブラックロックからするともしかしたら小さいかもしれないですけど、そこで何やってるかっていうと、ブラックロックの中でやっているリスク管理とかポートフォリオ管理のツールをSaaS化して売ってるって会社なんですよ。インフロントとかアラディンっていうサービスがあるんですけど。平安保険とかもそういうことやってて、子会社で切り出してOneConnectって言って、もう上場させてるんですよね。そこもARRは開示してないんですけど、売上で400億くらいある。一応彼らはトランザクションモデルでやってる、受託型でやってないという言い方をしてるんで基本はほぼストック売上でそれくらいのARRっぽいものが(笑)

これってじゃあ、保険業務を最先端でデジタルでやってる平安保険だから作れると思うんですよ。僕が作っても、さっき言ったみたいにジェネラルなところでいくとすごい浅いものになっちゃうと思うんですよ。証憑読み取れますよみたいな。けど彼らは多分、僕の知っていないもっと深い業務の、ここの業務が本当にネックになってるからここをツール化しちゃって社内で使ってるものを外に売っちゃおうみたいな。日本だとソニー不動産。ソニー不動産ってみんな不動産屋だと思ってるんですけど、売上見るとSaaSなんですよ。

前田:え〜。隠れたSaaSだったんだ。

福島:めちゃくちゃ隠れた優良SaaS企業です(笑)今度ちょっと見てみてください。

前田:見てみよう。確かにね、もうすでにその業界にどっぷりハマっていて、エクセキューションしてる会社がノウハウとか持ってるので、そのノウハウを生かしてSaaSプロダクト作っちゃうっていうのは確かにありますね。

福島:そことの戦いも今後、特にバーティカルな会社で増えてく。

前田:そこはウォッチしてなかったですね。面白い。

福島:そもそもあれですよ、ラクスルがやってるノバセルとかも、ラクスルがセルフCM打ちまくってそのソリューションをSaaS化してるわけじゃないですか。結構ああいう事例、もしかしたら増えるかもなっていう。

前田:自社がたくさんやってる業務をこれSaaS化すれば良いじゃんみたいな。Slackもね、もともと社内ツールだったんですよね。元々ゲーム会社で、これSaaS化すれば良いじゃんみたいな感じでSlackが生まれたんで。

福島:大正解でしたねそれは。

前田:大正解でしたねほんとに。

ちょっと最後の質問で、ビッグピクチャー、LayerXが作ろうとしている世界観というか、特にLayerX INVOICEがそのビッグピクチャーのなかでどこに当てはまっていて、その後どういう世界を作ろうとしているかってすごい気になります。

福島:基本的にはいろんな拡張性があるなと思ってるんですよ。たとえば、今パッと思いつくだけの方向性でも、SaaSとしてもすでに全然別種の機能でこういうのほしいとか言われるんですよ。たとえば経費精算機能ほしいですとか、クレカでのこういう管理のあれがほしいですとか、プロツールでこういうのほしいですとか。その業務があることによって侵食する先っていうのがいくつか見えるんで、そこをどう侵食していくかっていう話があるかなっていうのと。

なんかやっぱ僕が中長期のトレンドとして注目してるんですけど、今USだとEmbedded FinanceとかEmbedded Fintechみたいな感じで言われる領域で、たとえば請求書とかのデータが集まってくるとその上にやっぱ金融サービスがアドオンで載せれたりとか、やっぱりなんかそういうところ、お金の価値がデジタルになることによってプログラマブルに融資ができますよとか、プログラマブルな与信管理ができることによって企業の安全性が高まりますよとか、お金のとりっぱぐれがなくなりますよとか、契約もプログラムにしてもっと細かい単位での素早い契約執行ができますよとか。そういったとこにすごい興味があるんで、そういうところに繋げていく第一歩目にしていきたいというところですかね。

前田:なるほど。Squareもね、決済の上に融資プログラムみたいなのを出してるじゃないですか。取引データを蓄積するとやっぱりそういうこともできるようになりますよね。

福島:OCRのところの、こういうのを読み取ってほしいみたいなところとか、読み取ってほしいというのは言葉を言い換えると、ここの業務を楽にしてくれっていうことなんで。OCRで読み取ることと業務を楽にすることは一致しないんですけど、さっきの僕らのコアの部分ですよね、読み取ったデータを解釈して業務を楽にするアプリケーションにするみたいなところもすごいチャンスがありそうだなっていう。

結構いろんなオプションが持てる、もしかしたら一見サービスを外から見るとすごい地味なこと始めたなみたいな感じに見えるかもしれないですけど、僕らの中では結構いろんなオプション持って、ただそのなかでもあんまり先を見据えすぎずに、SaaSとしてやっぱり勝ち切ることがすごい大事かなと思ってるんで。とにかく今、楽にするのは経理の手作業をなくすことだと。それにフォーカスして1万社とかいくようなSaaSにしたいなっていう。

SaaS事業からブロックチェーンにどう繋げるのか

前田:そのなかでブロックチェーンってどの辺に入り込むんですかね?

福島:将来的には、ブロックチェーンの応用は2段階あると思ってて、データによる監査っていう概念が生まれると思うんですよね。もう1個が、データに真正性があることによるその先のプログラムの自動執行。

データによる監査ってたとえば何ですかみたいなところで、なんでも良いんですけど。たとえば結構面白いのが、暗号資産の取引所をデューデリするときに、その会社が暗号資産をいくら持ってるかっていうのは監査しなくていいんですよね、監査の会社って。

つまりブロックチェーン上に絶対この資産の所有者は〇〇ですって書き換えられない形で載ってるんで、でも普通って何か隠してないかとか、口座って本当にこれだけですかとか、ここに載ってないような簿外の債務とかないですかとか、そこらへんめちゃくちゃデューデリされるんですけど。少なくとも暗号資産の範囲内においては、もうそこはデューデリの必要がない。監査の必要がない。ということが結構いろんなところで起こってくると思っていて。

たとえば請求書周りでいくと今年法改正があって、請求書っていろんな使われ方をするんですけど、監査対応とか税務対応とかに使われるケースが後々あるんでそのために7年間とか10年間とか何かしらの規制によって保持しておかなきゃいけない。けどこれって紙で保存しなきゃいけないですよっていうのが、別にデジタルデータで良いですよって変わり始めてるんですけど。これがもう一歩進むと、デジタルデータをある共有台帳においておけば、監査レディですとか税務の調査レディですみたいな状態になると、結構企業が監査にかけてるコストとかコンプラにかけてるコストって大きいんで、そこを見るだけでOKみたいな。財務諸表とか全部そこの共有台帳に載ってますみたいな。

結構その、監査用データベースとして最初はすごい使えるんじゃないかとか。契約書とかも今元本持ち合うじゃないですか。でもブロックチェーンには載せておけば良いんですよ。何かあったらそこは確認しに行こうよみたいな。裁判行くときもそこを見て、参照しあって闘おうよみたいな。ある種その、監査のデジタル化みたいな。証拠をデジタルに残しておいて、そこがあることによって実は間接的にかかってた業務コスト、元本保持し合いましょうとか、保持した上で都度チェックしてるよねとか、監査法人にこうやって出さなきゃいけないものとか。究極、freeeのデータとクラウドサインのデータがブロックチェーンにあるから改竄できない。KARTEのデータに載ってても、それ出したら監査法人OKですよみたいな。プログラムでそこもチェックしていって、監査法人側も今残業が問題になってるんで、そこもプログラムでほとんどチェックできて、ちょっと複雑なところだけ人がチェックするみたいな感じの世界観がまず第一で、それが1番キラーアプリケーションかなって僕は思ってるんですけど。そのうえでたとえば、もっと価値観の変化が進んで、契約書の元本とか証券の元本とかお金の元本とかが、ブロックチェーン上に載ってますよって言ったらこれ繋げられるんですね。

これを繋げたアプリケーションっていっぱいあって、保険って要は、何かのイベントが起こりますと。そのイベントに対して保証するかしないかを決めます。保証すると決めたらお金がその人の口座に移ります、じゃないですか。ファクタリングって、ある取引先AからBに将来〇〇円受け取れますと。これを間に入ったC社が買い取って、じゃあここをこっちに切り替えて、プログラマブルに切り替えたら回収のリスクとかないわけじゃないですか。ファクタリングってこれやってるだけなんで、この切り替えをやるのに15%手数料とるんで。そんなのプログラムでやったら0.1%で良いですよみたいな。配当とかもそうですよね。契約内容と株式のシェアの比率によってある期間に生まれた配当原資から、配当していいお金から何%かシェアにしたがって配当されてるだけなんですよ。こんなのプログラムでやっちゃえば良いじゃんと。

価値が全部デジタルに載ると、今やってる配当とか物権のクレームとかファクタリングとか融資とかそういう仕事が全部デジタルにできるようになるっていうところが、そこで買われるインフラがブロックチェーンなんじゃないかなっていう意味で、僕らは繋がると思ってやってるんですよ。ただすごい先の話なんで、いったんブロックチェーンとか関係なしにSaaSとして勝つと。

前田:なるほどですね。LayerXの第一フェーズとしてはSaaSとして勝っていって、そこからどんどんブロックチェーンなのか何かしら、最終的にデジタルの勝者になっていくという。

福島:そうですね。

前田:何年先のイメージですか?このブロックチェーンの話とか。

福島:まあ10年20年...でも、ブロックチェーンの応用自体は正直5年後くらいには、かなりの具体的な形を持って出てくるんじゃないですかね。ただその時はもうブロックチェーンって言われない気がします。貿易のトラッキングを良くしてくれるサービスですとか。物権のクレームをちゃんと裁判的な法的な安全性を持って元本残してくれるものですとか。契約書の元本が安全に保持されるサービスですとか。そういう言われ方をするでしょう。

前田:今回も、学びも多いし気づきも多かったですね。ありがとうございます本当に。

福島:ありがとうございました。

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