スタートアップにおけるミトコンドリア型人材の重要性
公開日
2021/05/23
著者
ミトコンドリア ... 細胞の発電所として機能する。 - Nature.com
スタートアップで働く人は皆、2つの極値の間にいると私は考えています。
一方では、会社を仕事のように考えている社員がいます。
会社に来て、一生懸命働いて、自分の仕事をします。中には仕事をこなすのが上手な人もいます。
しかし、最終的にはそれは仕事なのです。彼らは、自分の仕事に対して正当な報酬が支払われているかどうか、面白いプロジェクトがあるかどうかを確認したいと思っています。それらのバランスが取れていて、他の会社に行くことで得られるアービトラージが一定の範囲内にあると信じている限り、彼らは安定して留まることができます。要約すると、彼らは合理的な行動者であり、彼らが会社に加える価値はもちろんあるとはいえ、直線的にスケールします。
もう一方は異なるDNAを持っています。
彼らは社員というよりも創業者のように行動します。彼らが会社に情熱を注ぐのは、会社のミッションを信じているからであり、それが自分の性格に合っているからなのです。自分に課された業務内容だけでなく、会社にとって何がベストかを考え、実行します。彼らにとって、会社は仕事ではなく、自分のアイデンティティの一部だから、懸命に夜遅くまで働きます。そして何よりも、会社のバリューを最もよく体現している人たちであり、そうであるがゆえに、その価値は直線的なものではなく、良い時も悪い時もスタートアップチームに活力を与え、パワーを与えてくれます。私はこのクラスの人々を、超成長期のスタートアップにおけるミトコンドリアと考えています。
創業者の仕事は、会社の成長のあらゆる段階でミトコンドリアを集め、維持することです。スタートアップの初期段階では、この希少なグループが会社の中核となります。スタートアップの規模が大きくなるにつれ、彼らはリーダーとなります。彼らを大切にし、採用し、そのマインドセットを他の社員にも奨励する必要があります。これは3つのことから始まります。
気付き
気付きはいつも最初の一歩です。あなたの会社のミトコンドリアは誰ですか?そのリストを作りましょう。その人たちとの関係性に、そしてその人たち自身に投資しましょう。誰がこのグループに入るのか、そして彼らが何を考えているのか、常に情報を得るようにしておきましょう。
バリューの面接
企業のバリューは、その企業で成功するための青写真であり、チームがどのように行動し、意思決定するかの規範となるべきものです。先に述べたように、ミトコンドリアは単に優秀なだけではなく、企業のバリューを最もよく体現しています。つまり、ミトコンドリアを採用するチャンスを最大化するためには、単に能力を問うだけの面接ではダメだということです。バリューのための面接をする必要があるのです。
バリューの面接は、候補者が会社のコアバリューにマッチするかどうかを判断するのに役立ちます。こうした面接は創業チームが行うべきです。あるいは、会社の規模に応じて、すでに会社で働いているミトコンドリアが行うこともできます(ミトコンドリアを以って、ミトコンドリアを知る)。
はっきり言って、バリューの面接をしたからといって、ミトコンドリアを雇えるとは限りません。しかし、バリューを重視した面接をせず、面接時にバリューの重要性を伝えないのであれば、その採用プロセスは最適とは言えません。実際のミトコンドリアのように、ミトコンドリアの従業員を複製する努力をしなければ、全体の従業員数の増加に応じて増えたりはしません。
「給与バンド」や「給与レベル」を廃止する準備をする
ある時点になると、企業は報酬体系を定型化します。つまり、仕事や経験レベルに応じて新入社員や既存社員に提供するものです。
私が見てきたなかでスタートアップ企業の最大のミスは、この2つのクラスの従業員に同じ報酬体系を使ってしまうことです。報酬水準とは、非合理的なコミットメントとインパクトに重ねるための合理的な構造です。給与バンドを変更しない企業は、ミトコンドリア型の社員が持つエネルギーを与えるインパクトを過小評価することになり、結果的に彼らのモチベーションを高め、社内に維持する能力を疑われることになります。
この提案は、チーム全体に不公平感を与えるのではないかという懸念を抱かせるかもしれません。はっきり言って、私が言っているのは従業員の中のごく一部の人たちのことであり、従業員たちにとっては、彼らが持つ大きな影響力は自明のことでしょう。
とはいえ、これはすべての社員に奨励したい考え方です。そのためには、パフォーマンスレビューの一環として、業務内容以外の価値やインパクトを強調するのも1つです。
例えば、Pinterestでは2x2マトリクスを導入しており、1つの軸が「インパクト」、もう1つの軸が「バリュー」となっていました。私のパートナーのJohn Lillyによると、Mozillaでは、プロジェクトや会社を超えたインパクトについて話していたそうです。どちらの方法でも良いと思いますが、重要なのは個人よりも大きなものを強調することであり、特に会社が数十人から数百人にスケールアップするような最もクリティカルな段階では重要になります。スタートアップがカンパニーになると、このことを文化として定着させるのは難しくなります。
私は投資家として、このチームフレームワークを出会った起業家たちと共有するようになりました。みなさんのフィードバックをお待ちしています。私は、ミトコンドリアをどのように惹きつけ、維持するかを理解している企業は、長期的に成功する可能性がはるかに高いと信じています。もしあなたがやらなくても、他の誰かがやるでしょう。
※この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:The Mitochondria in Startups by Sarah Tavel