cover image

4年で上場した起業家から後輩起業家へ、上場に向けたアドバイス

日付
2021/09/23
ライター
マンガアプリ事業などを手がける and factory を創業から4年で上場させた小原 崇幹氏に、上場を目指してやるべきこと・学ぶべきことをうかがいました。Twitterの140字では伝えきれない細部までお聞きしました。
 
本インタビューのきっかけとなった小原氏のツイート
 
 

①仲間集め

 
Twitterという140字の制限があるからこの5つなんでしょうか?それとも実際にこの5つが大事なんでしょうか?
 
実際に大事だと思ってます。ただ字数制限があったので、もっと深く書けることはありましたね。
 
基本的には仲間集めというか、どういう人と事業をやるかがすべてだと僕は思ってるので。重要度という点では、言葉こそ少ないですけど思っていることをそのまま書きましたね。
 
小原さんはもともとCAモバイル(現:CAM)にいらっしゃいましたよね。and factoryの役員陣も元CAモバイルの方が多くを占めていますが、小原さんの仲間集めでは元同僚を中心に声をかけていったのでしょうか?
 
僕は20歳から会社をやってるんですけど、その頃に出会った仲間だったりとか、一緒に住んでいたルームシェアの友達だったりとか、そういう人間を初期メンバーとして採用していましたね。
 
能力面だけを見て、仕事上で繋がっている人を選びに行ったということはまったくなく、どちらかと言えば「コミュニケーションコストの低い人」を集めてましたね。
 
考えていることが同じ人、ということですか?
 
同じというより、僕がどういう風に考えて、どういう風な手法で作っていきたいと言った時に1個1個説明せずとも伝わるみたいな。ビジネス上の繋がりだけではなく、友人関係も含めて繋がっている人間からそういう人を選んでチームを構築しました。そのおかげで、初期の急成長の角度を作れたというのはあったと思います。
 
スキルの高さよりもコミュニケーションの低さが大事でしたね。ベンチャーにはスキルが足りていない状態がずっと続きますし、そもそもスキルが充足するタイミングなんてものはないと思っていました。なので適応能力だったりとか、コミュニケーションコストもお互いに低い状態であれば、より成功に近くなるだろうなと思って選びました。
 
それと、僕が声をかけたメンバー以外はまったく集めなかったですね。採用の募集とかも特に出していなかったので、すべて僕自身のリファラルでしたね。
 
小原さんにはエンジニアのバックグラウンドがないですが、エンジニア採用には苦労しませんでしたか?
 
僕はand factoryを創業する前にもツクルバとかで役員をやっていたりもしたので、結構幅広く事業サイドの繋がりがあったので、そこに声をかけていって集めましたね。
 
ベンチャーとして成長していくとCxOクラスの人材を採用するわけですが、これはオペレーション人材の採用とは違った難しさがあるように思います。どうやって接触していくのか、工夫したことはありましたか?
 
我々に関しては最初から上場というストーリーを組んで、1期目から証券会社や監査法人の選定をしていたので、1期目から上場準備室みたいなものを作ってたんですよ。なのでオペレーションの人材だけでなく、バックオフィスの人材も最初の10名くらいのなかに数名入ってます。
 
最短で上場することを最初から目指していたと。ビジネス次第だとは思うのですが、必ずしも最短で上場を目指す必要はないと感じます。それを敢えて目指し、見事に達成までしたのには何か目的があったのでしょうか?
 
やっぱり企業として、ベンチャーとして、従業員を雇用するに当たって大事なのは会社の経済基盤がしっかり安定していることだと僕は思っているんですよ。
 
会社を始める前にも上場企業と非上場企業の倒産確率を計算したりしてて。中小企業では年間に10%くらい入れ替わりがありました。ただ上場企業に関しては、コロナ禍を除いた通常時において年間で1%も入れ替わりや倒産が起こってなかった。僕が調べた頃は年間1〜2件だったんですよ。
 
僕が声をかけたメンバーには子供がいたり、結婚していたり家庭がある人間が多かったので、そういう人間が心安らかに仕事でき、しっかり成長させていける場所は何だろうかと考えたんですよ。そこで、上場という選択肢は金融というオプションをとれることにすごく優位性があるなと感じたので選びました。
 

②読書習慣をつける

 
習慣をつけようとのことですが、小原さんは毎日読書の時間をとってらっしゃるのでしょうか?
 
波はありますけど、結構本は読んでますね。忙しい時期とかもありますけど、それでも週に1冊以上は読んでます。
 
最近読んだ本で良かったものはありますか?
 
信長の原理っていう伝記ですね。どんな本かと言うと、経済的な部分とか組織論だったりを歴史小説の中で紐解いていくという本なんですよ。パレートの法則とかを歴史小説の中に織り交ぜている伝記で、こういう本好きなんですよね。
 
 
啓蒙本が僕は苦手で。人は一人一人違うと思ってますし。僕は、個人の能力ってあんまり変わらないと思ってるんですよ。24時間与えられて、役割の差はあれど、能力にめちゃくちゃ差があってこの人1人だけでOKってことは本当に稀だと思うんです。
 
そういう考えがあるので、組織本や歴史本の方が好んで読むことが多いですね。
 

③広告知識をつける

 
and factoryは広告収入を得るビジネスですが、それとはまったく関係なく?
 
はい、関係なくですね。どんなビジネスでも広告領域と金融領域の2つは抑えておかないといけない。原理原則を理解して、今の自社に足りていないところはここだと的確に考えられる人間じゃないと、そもそも採用が上手くいかないんじゃないかなと思っていて。
 
採用広報みたいなところが会社の未来を結構決めると思っているので。それで言うと、広告というよりデジタルマーケティングですかね。
 
広告を出さない会社もあるとは思うんですけど、じゃあどうやって集客するのか。自社にとって、オンラインとオフラインでどちらの方が優位性があるのかというところが分かっていないと、未来の姿がぼやけてしまうと思うんです。
 
それは人任せにせずしっかり自分で考えなきゃいけない。間違った方向に舵を切ってしまう可能性があることなので、代表や経営陣は欠かしてはいけないことかなと思っています。
 

④金融知識をつける(BSの把握必須)

 
金融知識のなかでもBSを強調している理由は何ですか?
 
まあBSを強調したらわかりやすいかなというのもあったんですけど(笑)、BSの部分を把握していない起業家は実は多いんですよ。
 
BSに限らず、ここで入金があってここで出金があるみたいなキャッシュフローマネジメントもですね。
 
PLを単月黒字化しようなんてことは当たり前でみんなやるんですけど、原価の仕入れだったりとか、D2C企業であれば資材の一括発注だったりとかの部分が漏れがちなんですよね。それって基本的なBSの知識があれば避けられる自体なんですけど、それを避けられずに事故につっこんじゃう起業家というのは、僕が周りを見てて結構多いなと思っていて。
 
みんな目先の数字、当月とか来月のPLをどうしようっていうところに注力しがちなんですけど、そういうのじゃない。銀行の繰上げ返済や均等返済みたいなとこも含めて、いろんな知識が本当に必要になってくる。それがないと大事故に陥るんじゃないかなと思っていて、それをひとことで言えばBSに集約すると思ったのでそう書きました。
 
財務三表は全部理解できるようにしておこうということですか?
 
そうですそうです。やっぱりみんなPLに集中しがちなんですよね。来月打つ広告の支払いは60日サイトなのか90日サイトなのか、みたいなのはあんまり意識していない人が多いなと思っています。
 
たとえば、90日サイトで3ヶ月後に支払いがくるのに、そのタイミングでクリスマスシーズンに合わせた資材の一括発注があるみたいなことが起きてしまいがちです。
 
でもそれって、三表をしっかり把握できていれば戦略が変わるはずなので。そういうところで未来にどこまで点を打てるかというのは起業家の本質かなと思います。
 
「上場前の起業家からよく受ける質問」という趣旨のツイートでしたが、上場前はコストを抑えてPLを良く見せようというのは結構あることかと思います。こういうPLへの意識は健全なんでしょうか?
 
それが最低ラインかと思っていて。先ほどお話ししたように、「クリスマスにイベントやりたい。ただ広告にお金を使いすぎたらこのタイミングで支払いがくるから、あんまり資材の発注はできないな。」みたいな少し先の戦略はダイレクトにビジネスに効いてくるので、目先しか見ないのはもったいないなと。
 
基本的に上場までは、みんな単月だったりとか数ヶ月でラインを引くじゃないですか。僕らもそうだったんですけど、上場してからいきなり3ヵ年計画とか作らないといけないんですよ。「できるわけないじゃん」みたいな空気に一旦はなりがちなんですけど(笑)やらなきゃいけないことですし、そうしないと伸びないというのは本当にある。
 
練習のためにも、未上場のうちから複数ヶ年計画を立てた方がいいと思うんですよね。それをやらないから苦しむというのはあると思います。
 
基本的に上場する・しないでは、個人の能力だったり会社の体制って変わらないじゃないですか。社会の公器になるなどの違いはありますけど、基本的なスペックや考え方はDay1から変わらない。
 
でも上場した瞬間に1年後の売上を読んでくれと市場から非常に求められるので、それは早めに練習しておいた方が良いなと思いますね。
 
BSを理解して、その上で戦略を持って、複数ヶ年の計画を立てるのが大事です。
 

⑤そして最後に、仲間集め

 
起業家1人ではとうてい無理なことで、やはり仲間集めに繋がってくるわけですね。
 
無理ですね。そもそも未上場の起業家は目先の事業を伸ばすのに必死なのにそんなことまでやれないよって場合が多いとは思うんですけど、だからこそチームが必要なんですよね。
 
結局1人1人の能力はめちゃくちゃ小さいというか、範囲が狭いので、1人で全部やるなんてのは絶対に無理。
 
僕の周りの上手くいっている上場起業家たちと話をしても、「自分が〇〇した」っていうよりは「組織をこうしたら良くなった」みたいな会話ばっかりなんですよ。基本的にみんな、個人主体で話す人はいないんじゃないかなと思いますね。「僕が考え方を変えたから会社が変わった」みたいなのはあんまり聞かないです。まあ言ってたらそれはそれでヤバいんですけどね(笑)
 

小原さんからスタートアップへ一言

 
来年・再来年を意識せずに、2ヶ月後・3ヶ月後に注力しちゃうのって別に悪いことじゃないと思うんですけど、それだけだとビジネスが前に進んでいかないのでもったいなさを僕は感じているんですよね。
 
シードスタートアップだと特にですけど、前に進まないのは苦しさにも繋がってしまうと思うんですよ。なので投資家サイドからも「来月・再来月のPLどう?」じゃなくて、「来年ってどういう状態になってたら良い?」とか「来年あたりにどれくらいの社員がいて、どんな組織体制になってると思う?」みたいなロングタームでの質問をいっぱいしてあげた方が気持ちも楽になりますし、明るい未来になるんじゃないかなと思って僕は最近触れ合ってますね。