【前編】オーガニックで500万DLへの試行錯誤 | mikan 髙岡 和正
公開日
2021/06/29
著者
East Venturesの村上です。
いま最前線で戦うスタートアップの創業者をゲストに迎え、創業のインサイドストーリーやスタートアップを立ち上げ・経営する上での考え方を語っていただくPodcast番組「The Founders」の書き起こしです。
本編では、今や500万ダウンロードを超えるアプリに成長したmikanのストーリーであったり、ユーザーファーストなプロダクト作りなど、髙岡さんの考えをお聞きしました。
目次
スタートアップの入口は起業家に沢山会った「バナ活」
ストーリーについてお聞きしたいのですが、髙岡さんは創業前には何をされていたんですか?どういう風にスタートアップや起業というところに入っていったのでしょうか。
僕自身は大学2年まで全然そういうのに興味がないというか、知らなかったんですね。大学3年の時に宇佐美っていう一緒に創業するやつと学部がたまたま同じで仲良くなって、ほぼノリみたいな感じで学生団体を一緒に作りました。その中で、学生なので大量にインプットしたいということで本を読んだりとか、英語の勉強したりとか、そういうのを朝バナナ活動、通称バナ活と呼んでやっていました。バナ活の一環で、IT界隈の経営者の方々にお話を聞いて行くっていうのをやりまして。ほぼノーアジェンダで「何か面白いこと教えてください」みたいなものだったんですが、それがスタートアップやIT界隈との初めての接点でしたね。
ミラティブの赤川さんがDeNAにいらっしゃったころにお話聞かせてもらったりとか、クラウドワークスの吉田さんにお話聞かせてもらったりという感じで回らせていただいてました。
今思うと本当に申し訳ないのですが、ほとんど下調べもせずにお邪魔して「人生どうですか」みたいな生意気な感じで(笑)ちょっと今思うと恥ずかしいんですけど。
でもそこで、自分で物事を考えてこういう風に社会に価値を作っていきたいという姿がめっちゃかっこいいなと当時思いましたね。
その学生団体ののち、すぐにmikan創業に向かったのですか?
そうですね。1年ぐらいその学生団体をやってて。僕は一旦就活をするんですが、宇佐美が英語の勉強会を休学して開いていて、それがmikanのアプリになっていくんですけど。僕の就活が終わって、宇佐美がその勉強会をやっているうちに起業すると言うので最初に誘ってもらったというのが創業に関わる入り口でした。
誘われてすぐに2つ返事でOKしたんですか?
最初は嫌だって言いました(笑)
内定をもらっていたっていうのもありましたし、大学の研究室が始まったばかりで時間がないから嫌だって断ってたんですが、「まあとりあえずさ」みたいな感じで、(仕方なく)ちょっとだけ手伝っていました。最終的にはクラウドワークス吉田さんに相談行くから一緒に行こうよって言われまして、そこで結構焚き付けていただいて(笑)
最初はインターンっぽく、ジョインするかは決めてないけど夏休みだったしフルタイムで関わってたというのが始まりです。
最終的に入社の意思決定をしたのには何かきっかけがあったんですか?
ずっと仕事していてこれは面白いな、楽しいなというのがありつつも決め切れなかったんですけど、リリースしてから1ヶ月ぐらい離れさせてもらって、自分はどうしたかったんだっけというのを考えていて。
当時内定もらってたのが海運会社の大手だったんですけど、僕がそこに行きたい理由はそんなに強くなかったんですよね。みん就で偏差値高いから行ってたので(笑)
そうじゃなくて自分はどうしたいんだっけっていうのを考え出して。宇佐美とやるのは結構面白いなと思いましたし、当時21歳、22歳とかでIT業界で自分で考えて力をつけるのは自己の生存戦略としても優れているのではという仮説はあったのでそれを信じた。そして、自分で考えたことを実行してやっていくというのを今後も選んでいきたいなと思いまして。そのタイミングで選ばないと、その海運会社は良くも悪くもすごく良い環境だったので、一度そっちに行くともう(起業の道は)選べないだろうなと思って選んだという感じですね。
リリース即10万DL超えのプロセス
mikanはどういうプロセスを経てローンチされたんですか?
プロトタイプを2017年の夏ぐらいに作りだして、2ヶ月ぐらい全国巡ってユーザビリティテストとかで改善して、10月に宇佐美の実家にみんなでお邪魔してリリースボタンを押すっていうことでローンチしました。
全国を巡るって結構珍しいと思うんですけど、それはどういう経緯だったんですか?
クラウドワークス吉田さんに言われたのが最初のきっかけですね。「アプリをそのまま出しても、別にそんな人たちはいっぱいいるから特別でも何でもない。出す前に1,000人に使ってもらって、フィードバックを得た上で出せ」という指令を頂戴しまして。
1,000人って大変なのでどうやってやろうかなと考えまして、全国47都道府県あるので、とすると1都道府県あたり20人。20人なら行けるやろっていう、まあ変な楽観視ですけど(笑)
これをやろうと思い、じゃあ実際に人集めるにはどうしたらいいんだっけというのを1個1個やっていったというのが1番最初のスタートですね。
20人ってパッと聞くと少ないなと思うんですけど、たとえば鹿児島のような縁もゆかりもないところでどうやって集めたんですか?
1番基本の戦略としては、僕は三重県の伊勢高校ってところ出身なんですけど、三重県だと(大学生になれば)結構地方に散っていくパターンがあって、高校の友人にそこでリーダーになってもらって、有料の勉強会に無料で参加できるので一緒にやってくれませんかっていうのを募っていきました。
実際の集客は僕らもFacebookとかやりましたが、各地にリーダー / アンバサダーを建てて、声をかけて、ミーティングして、みたいなのをやっていた感じです。
でも実際は上手くいくところと全然うまくいかないところがあって。北海道とかはやっぱり集めるのが難しいので、僕が単身行ったんですけど、3人集まってくれたので3人に対して僕1人が教えてるみたいな。蓋を開けてみると交通費などでイベント自体の収支は全然赤字でした(笑)
でも東京だけでやっているよりもメディアさんに結構面白がってもらえて取り上げてもらったりとかしたので、トータルで見るとペイしたのではって感じですね。
初期にTechcrunchで取り上げられてましたもんね。
現在Coral Capitalの西村さんが書いてくれた記事がすごく良かったです。2014年の中では1番読まれた記事だったとおっしゃっていただきました。
じゃあ割と初期からダウンロード数はあったんですか?
そうですね。10月末にリリースして、3日か5日くらいで10万とか15万ダウンロードみたいな。それも別にpaidのことは何もしていなくてすべてオーガニックという状態で入ってきてくれました。
当時はそのすごさをしっかり分かってた訳ではなかったですね。プロダクトも穴だらけだったので、実際には2割ぐらいのユーザーが学習スタートできないみたいな状態でリリースというか、実際バグが入ってたりとかしたので、今になって思うとすごいことですね。
何か良さそうみたいなところに飛びついても全然上手くいかない
プロダクトには穴があったかもしれないですけど、ユーザー獲得の面ではかなり順調な滑り出しだったわけですね。 その後新規事業もいろいろやった歴史があるというのを見たのですが、10万人ユーザーがいる中で別の事業をやろうというはどんな意味があったんですか?
いわゆる「死の谷」と呼ばれるような、ダウンロードのスパイクが最初にあって、その後落ち着き、下げ止まりはするもののかなり低い水準で動いている中で、アプリを改善してそこからの計画を作らないといけないというのを半年くらいやってたんですね。でも誰もこういう経験がなくて、どうしたものかと半年ぐらい。
ビジネスモデルもなかったですし、英単語アプリという市場もよくわからないみたいな感じで。このままこれをやってても難しそうなので新規事業をテストして行きましょうってリリース半年後に決めてやりだしましたね。
最初はデスクトップリサーチを頑張ってたんですけどあんまり良いアイデアが出てこないので、自分たちの身近にある課題を拾って行くという基本の方針を立てました。
たとえば、近くの弁当屋さんに並んでいるのめっちゃ不便やんと。それをテイクアウト予約できて、お昼休みを延ばせたらいいんじゃないかということで弁当の予約アプリを作ってみたりとか。合コンのセッティングアプリとか。何でそんなこと思ったのかわからないですけど、「こんなに良い人がいっぱいいるのに何でみんな独りでいるんだろう」と思って(笑)
実際にリリースもしてたんですか?
アプリでリリースするものもありましたし、合コンサービスはアプリも作ってましたけど、実際にはLINEとGoogleフォームでテストして、実際に1回合コンしてもらって2次会でオフィスに来てもらってフィードバックもらうみたいな感じでした(笑)
それぞれどれぐらいの期間やってたんですか?
弁当の予約サービスが1番長くて、3,4ヶ月やっていました。これはすごい使われて、お昼の売り上げが2,3割そのアプリ経由になったみたいで、他の並んでる弁当屋さんも探してテレアポしたりとか、お昼の休憩時間に営業しに行ったりとかを含めて3,4ヶ月やってた感じです。
それでmikanに戻るんですよね。なぜ戻ろうと思ったのですか?
どうしていくかディスカッションしているタイミングで、ふとmikanを見てみるとダウンロードは最後下げ止まった状態のままで入ってきてたし、レビューがすごい高い状態で、DAUも下げ止まってたんですね。減ってなかった。
弁当サービスに言えることなんですけど、ペインに対して解像度が低いと全然良いものが作れない。プロダクトを作るのが好きとか得意とか、そういうのを活かせるところじゃないと難しいっていう感覚があった。それがmikanの場合、半年間何もしていなかったのにレビューも高いし、実際に使ってくださっている方もいて。そして自分たちが欲しかったアプリなので解像度も高くて、自分たちが得意なところでやれてるのでもう1回やっていこうっていう話をした感じですね。
教訓としては何かありますか?
当たり前と言えば当たり前なんですけど、ペインの解像度が低いところとか、何か良さそうみたいなところに飛びついても全然上手くいかないですね。
ユーザーを深く知っているのでも市場を深く知っているのでもいいと思うんですけど、おそらく自分たちはこれをしっかり知っている / わかっているというところを作っていかないと続けるのも難しいし、実際に解決して行くのも難しいなと思いますね。
どうグロースしてきたか
mikanに立ち戻った後は、どのようにグロースしていったのですか?
1番最初に何やったかというと、KPIを定めてダッシュボードを作りました。それをやってから、最初のKPIはDAUで、それに対して最初の入り口のファネルを改善していました。
長期の方になってくると、ファネル改善というよりはサービスの価値自体を考えるみたいになってくるので、そのフェーズに入ったときは、ユーザーさんの声を聞きながら作っていくみたいな感じでしたね。その時に試したのは、長期のリテンションに向けてランキングや選手権を作ってみたりしました。
DAUはそれで一定の水準まで上がったんですが、当時まだほぼ売上立ってないみたいな感じで。実は10ヶ月後ぐらいには死ぬのに全然気づいてない状態で。DAUが一定の水準にきて、そろそろマネタイズしないと難しいんじゃないかと思って、KPIを売上に変えていくタイミングだったのが2年ちょっと経ったころですね。
最初にmikanを作った時に使いたいと思ってたTOEFL3800っていう旺文社さんの本があるんですけど、それはライセンス提携頂いて、中で販売するモデルを組んでいたんですけど、それは月に20万円とか30万円ぐらいの売上しかないみたいな感じでした。
選手権みたいな施策は、ユーザーからのフィードバックで浮かび上がってきたものなんですか?
ランキングとかはユーザーインタビューしている中で、他にどんなアプリを使っているか聞いてみるとランキングの話をしていたっていうのと、また別のユーザーさんにインタビューしてた時に、(mikanを)めっちゃ使ってくれたので「このアプリを他の友達に教えてたりしますか?」って聞いたら絶対教えないと言ってて。なぜだろうと思って聞いてみると、他の人に教えちゃうと他の人が成績上げちゃうから嫌だと言っていて「なるほど」と。
それを組み合わせて、口コミが起こるように学校対抗にしてランキングの仕組みを入れたらいいんじゃないかということでこの施策を作りました。
ランキングだけじゃ誰もやる気でないから1位になったら100万円の賞金を用意しましたね。そのときも全国巡ってビラ配りしたりとか、勉強会したりとか、Twitterをグルグル回したりとか、いろんなことやってました。
mikanは特に広告も打たずに伸びている印象なのですが、なぜそんなにオーガニックで伸びるのでしょうか?
秘密があるっていうよりは、僕らも「これとこれとこれが要因です」って明確に言えるわけではないんですね。
分かっている範囲では口コミで、無料で使える範囲がすごい広くて、実際全体の90%以上は無料で使ってくださってる方みたいな感じなので口コミの量が担保できているというところ。
あとはプロダクト出してから長いので、自然にブログとかで紹介記事を書いてくださっている方が多くて、そういうのを見て入ってくるというのがユーザーインタビューでも結構いることが分かっていて、ありがたい限りですね。
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