時間的な制約がある中でのスタートアップの戦い方

公開日
2021/02/13
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こんにちは。ゼロトピックです。
 
今回のテーマは、家族を持ちながらスタートアップを経営することの難しさとか、そのときに意識すること、すごい個人的なことを話そうと思います。
 
まず大前提として、何回か前の放送で話したんですけど、昔地震を経験してから自分の命に対する不確実性を感じて、大事なものに対して明確に時間を割くっていう生き方に変わったんですね。そんな自分の中で常に優先度が1番高いのが今いる家族だと思ってます。それは妻であり、子供であり、親であり。
 
で、そういうなかで、結局自分の時間をどれだけ家族に割くかってことによって残りの時間が、僕にとったら仕事の時間とか寝る時間とか自分の時間みたいな形になるので、どうやっても独身の人とか、あとはそういうふうに他の優先度が高いものがないような起業家と比べると相対的に時間だったり使えるリソースが少ないっていうのが自分に課したハンデというか、枷になるかなというのは起業する前からずっと思っていました。
 
ただそういう環境のなかでも成果を出せるか出せないかっていうのは全く別物だろって考えています。今日はそういう話をしたいなと思っています。
 
経営者として、あるいは起業家として、やるべきことってとにかくたくさんあるし、やった方がいいこともたくさんあるんですけど、明確に最もインパクトが大きいものはなにか、そのためにどの程度のリソースを割くべきかっていうことの優先順位付けができてるケースってそんなにないんじゃないかなって思っています。
 
僕はこれに対して、創業前から割と明確なビジョンを持っていて、自分がやることはほとんど3つに集約する、で4つ目以降は時間に余裕があるというか、暇な時しかやらないっていう、そういう形でやっています。
 
【03:05】
その3つが何かっていうと、1つ目は探索ですね。それも戦略的な探索。大きい流れの探索。
自分がどの位置にポジションすべきなのかを探るための探索。
 
2つ目が、兵站。兵站を集めること。
1と2ってすごく密接で、戦略っていう概念は実は世界中で明確な定義はないんですよ。なんだけど、戦略って言われる概念と、兵站ってセットなんですよね。
 
兵站がなければどれだけ良い戦略があっても実行できないし、逆に戦略を実行するためにはそれに必要な兵站を集めなきゃいけないっていうので、兵站を集めるのはすごい重要な仕事だと思っています。
 
特にソフトウェアを中心とするようなスタートアップにおける兵站ってたった2つで、お金と人。それらをミックスさせたコーポレートガバナンスとか、企業文化を作ることも含めて良いんじゃないかなとは思うんですが。そうやって兵站を集めて使えるような状態を作るっていうのが2つ目。
 
3つ目が、もっとも現場に近い一次情報を吸い上げたり、そこで実験を行うこと。
 
これが1とか2にすごく良いフィードバックを与えてくれるので、これは3つ目に当たると思います。
わかりやすい例で言うと、データを抽出するための、まあダッシュボード作るためのSQLを自分で書くとか仕様書を自分で書くとか。いわゆる実装はしない、みたいな。
実装は誰かと背中合わせで進めてもらったり、実装上のすごい重要なアーキテクチャとか、リファクタリングをどのタイミングでするか、そういうものを現場に完全に預ける。そういう形で僕は現場の一次情報を吸い上げるための実験に集中する。
 
そういうところで、この3つに優先度を完全においてやってます。
 
【05:25】
1つ目の探索が1番何ぞやっていう話かと思うんですけど、結構昔から石油掘削の話とか、資源、地面に埋まってる資源を掘削するときの事業にものすごい似てる話だと思って例えとして使ってます。
 
どういう話かというと、地中とか海中とかに埋まってる資源が、どこにどれだけの量があるかって、実はいまだに完璧な精度で測る方法ってないんですよね。まあ超音波とかを地面に向けてバーって流して、跳ね返ってきた波長の強度とか長さで推定するとか、そういう方法が基本的にメインなんです。
あるいはこう、原子を飛ばして、そこから跳ね返ってきたときの状態を見て、ここにはカーボン、石油のかたまりが埋まってるっていうのを探るとか。
なんでそんなに詳しいかって言うと、昔そういう事業をやってたからなんですけど。
とにかく精度が出ないっていうのが石油探索の問題、資源探索の問題なんですよね。なんだけど、やるとやらないでは大きく違って、探索でわかるのってこの辺にありそうみたいな精度です。だから無いことはわかるんです。そっから次、探索ってそれだけで終わりじゃなくて、この辺にありそうみたいな場所に、試験用のリグってやつをたくさんぶっ刺すんですよ。バーーって。円で示されたエリアに100本くらい棒が刺さってるイメージをしてもらえればと思うんですが。
でその、試験用のリグを使って実際に下から吸い上げるっていう行為をやってみるんですね。そうするとその100本のうち、生産性、時間あたりにとれる資源の量みたいなのが明確に差がつくと。100kgとれるリグとか80kgとれるリグがある場所もあれば、10kgぐらいしかとれないリグがある場所もある。
なので、ありそうからもうちょっと絞り込んだ、この辺にあるっていうのが明確にわかるようになる。っていうところから、そのエリアに絞り込んで、あとはどういう角度で刺すとかどういう流量でとるとか、あとは間に地層があるからその地層をどうやってクリアしてさらに高い流量でとるみたいなことを、より現場の実験として行っていくんですが、ここで生産をしようって決める前に、だいたいこれだけの工程をかけて資源を掘削するっていうことを始めるんですよね。
 
これは結構スタートアップでも同じだと思っていて、金脈というか、どこに埋まっているかわからないんですよね、基本的に。多くのスタートアップの経営者はYコンビネーターのポールグレアムとかの話を見てユーザーの大きい課題を解決することから始めようと。それはものすごく良いフックだと思っていて、僕自身もすごく重要視している考え方なんですけど、その先、どこにお金があるかってのはやっぱりその時点ではほとんどわかんないんですよね。
 
BtoBの事業だと、やっぱ財布がどこにあるかを探るという探索的な行為は必要だし、BtoCの事業だと、お客さんがなぜお金を払うのかっていうことの理由って誰も明言化してくれないので、そこに対する実験的な探索が必要。プロダクトの良さと、お金を払ってもらえる価値観をつくることの間を埋めるためにやっぱり探索が必要。
そのためにデスクトップリサーチはもちろんなんですけど、やっぱり戦略を決める上で、どのあたりにお金が埋まっているのかっていうのを探すという実験がものすごい重要。企業が生きていくためにも、あとは指数関数的に成長して、10Xなものを作って、お金を得られるようになるためにもものすごい重要かなと思っていて。
 
これが自分にとっての役割①だと思ってます。会社の中でも明言をしているわけでもないんですけども、僕が探索的なリサーチとかに充ててる時間が多いってのはやっぱりみんなわかってるかなと思います。
 
【10:37】
2つ目の兵站集めは要は資金調達と人の採用。今だと採用っていうよりはこの船がどれだけ魅力的だと思ってもらえるかとか、10Xっていう会社がどれだけ貴重な機会で、どれだけ面白い人が集まってて、この船に乗ることが自分の人生にとってものすごい大きな価値を持ちそうだと思ってもらう、期待を集めるっていうことが、パートナーシップを組むという、従業員というよりはその船をさらに早く前にすすめるためのパートナーを探すという行為と同じだと捉えて取り組んでいます。
 
まさにこのポッドキャストとか、あとは僕はブログもすごいよく書くんですけど、その2つも基本的にはうちがどういう状態にあるとか、自分がどういう考えをしてるのかとか、まず発信することを大きな目的として知ってもらうことですね、それを目的としてやってる部分がすごい大きいです。
 
で3つ目の現場の話は、先ほどの探索の話の延長にあるかなと思ってて、このへんに石油埋まってそうだぞーってなったときに、次はドリルを掘り進めないといけないんですけど、ドリルってガガガガガガって掘っていくと、方向を間違ってたり、あるいは適切な速度じゃなかったりすることはたくさんあるんですよね。なんで、現場で実験して、方向ちょっと間違ってそうとか、そういうのを見て、方向を修正したり。あるいはガツンとドリルが硬い硬盤に当たった時に、この方向じゃダメだっていうので、実験して指針を作り直したりってことが非常に重要になるので、やっぱり現場の情報ってめちゃめちゃ大事だなと思っているかつ、特に当時はユーザーのディマンドというか人が本当に欲しがるものを作れてるのかとか、ものすごい強烈なペインにアプローチできてるのかとか、その辺りが、良いものを作るあるいはその延長にある大きなビジネスを作る上での大前提になってくると考えているので、間違いなくペインを捉えられているかっていうチェックをする意味でもやっぱり3番をすごい重要視しています。
 
はい、ということで、時間がない中で家族を大事にしながらスタートアップするという上で、自分が大事にしていること3つみたいなものをお話しました。
1つ目が探索。リサーチとか戦略の検証。
2つ目が人とお金を集めてくること。で、それがうまく使われる環境、土壌。なのでイコールコーポレートガバナンスと企業文化を作ること。
3つ目がもっともフロンティアな情報を集めてくることだったり、それが上手くとれるような実験を設定すること。
 
この3つに自分のパワーを割くことで何とかやってますという、そういうお話でした。
 
今回の放送はこんなところなので、ぜひTwitterとかで感想とかいただけるとものすごい喜んで反応します。あとは聞いていただいた方はSpotifyでフォローいただけると嬉しいなと思います。おそらく1週間から2週間くらいするとApple PodcastとかGoogle Podcastの方にもこのゼロトピックが出ると思うので、また出たらその時は告知させていただきます。それでは。
 
※この記事は配信者の許可を得て公開するものです。